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RAIN  作者: 恵奈
20/21

秘密

なにくわぬかお。




 秘密、秘密。




「彼と、別れたの」


 彼女の流す涙を見たくなくて。

 窓ガラスを伝う雨のしずくを眺めてた。


「そう…」


 私の返す言葉は硬い。

 薄情だと彼女は思うだろうか。

 だけど、なんて言葉を書けたらいいのかなんて私にはわからない。


 同情されたい?

 かわいそうだと。


 優しくされたい?

 あなたには似合わない男だったと。


 慰めて欲しい?

 もっといい恋があなたを待ってるのと。


 少し肌寒くなった季節。

 頼んだアイスティーの氷は溶けることなく。

 ストローを動かすたびにカランと軽やかな音を立てた。


「彼のことが好きだったの、本当に好きだったの」


 彼女の声は心の慟哭。

 不安げに震えて、彼女の悲しみを表していた。


 ええ。知ってる。


「別れる理由を彼は言ってくれないの、どうしても」


 戸惑いはハンカチを握り締める指に表れていた。

 納得できない、と。

 だけどたぶん何も変わらない。


 ええ。知ってる。私は。


 彼女の愛してた彼は、けっして彼女に話したりはしない。

 だけど、私にはわからない。

 真実を告げないのは、エゴからなのか、優しさからなのかを。

 



 雨のしずくを見つめ飽きた私は、彼女の顔を見た。


 赤くなった目。零れ落ちていく大粒の涙は、彼女の頬を次々に伝い落ちていく。

 その涙を美しいと思う私は目をそらす。


 彼女が失くしたものは、私の中にあった。






 ―――きっと誰にも言えない。


 誰にも祝福してもらえない。


 私の恋。



 彼女の恋人を愛した罪は、報われたあとのむなしさを伴って成就した。


 彼女に真実を知らせるのは簡単。

 罵られるのも簡単。

 だけど、それでは罪を赦されたことにはならないから。


 たとえ二人手を繋いで歩くことが出来なくても。

 誰にも言えなくても。

 私は彼を愛し、彼は私を選んだから。


 彼女の流す涙は、私にはまぶしすぎる。


 私の言葉はすべて嘘でしかないから。

 ただ聞くことでしか、彼女に応えられなくても。

 ただ黙って見つめることも無く、ただそばにいることだけ。


 何もかもをこの胸の中に秘めて。


 たとえ彼女がこの次の恋で幸せになったとしても。



 私はこの恋が破滅を迎えたあとも、秘密を守り抜く。





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