ナイトブルーの空
社会人カプ。
「雨宿りの意味ないな、あんまり」
少ししかない軒先。
一向に止むことのない雨は、私たちへとなおも迫る。
いったんは閉じた傘を、彼が手にとって広げる。
ナイトブルーの大きな傘。
もし今夜晴れてたなら、きっと空もこんな色だったのに。
軒先で傘を広げ、私と彼は顔を見合わせて苦笑した。
すぐ会える距離ではなくて。
仕事の休みも二人ばらばらで。
ようやく叶った1ヶ月ぶりのデート。
彼の誕生日だから、と一緒にプレゼントを選んで、食事して。
―――でも、楽しい時間はやけに短く感じて。
近づいてくる終電の時間。
急に降り出した雨。
一本しかない傘で二人走って、ずぶぬれになって。
こんなちっぽけな軒先で身体を寄せ合って。
でも―――また、離れちゃうんだね。
何もかもを放り出して、彼についていきたくなる。
明日の朝も早いのに。
うまく行けば、また来週会えるかもしれないけど。
そんな先のことなんて。
触れてもいい?
つないだ手だけじゃ、満足できない。
唇に、触れたい。
ぎゅっと、抱きしめて欲しい。
「雨、止みそうもないな」
彼の声。
電話越しじゃない、彼の声。
もっと、もっとそばで聞きたい。
そのとき――――――傘が、傾いた。
何?
斜め45度で見上げる彼の顔が。
すぐ近くにあった。
ナイトブルーの空に遮断された世界。
触れるだけの優しいキス。
ただ、それだけなのに。
ただ―――それだけなのに。
寂しいとうつむく気持ちが変わっていく。
幸せだと、心から思える。
ナイトブルーの空が頭上に戻って、少し照れた彼の横顔が車のライトで見えて。
―――彼が、好き。
この恋を、ずっとずっと大事にしようと思った。




