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RAIN  作者: 恵奈
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大学生くらいかも。



 つい最近別れた彼氏とばったり街の中で会ったりしたら。

 あなたならどうする?


    A 無視する

    B 普通に挨拶する

    C よりを戻す




 まだずいぶんと距離はあったのに、私が気がついたときにはすでに彼は笑顔だった。


 雨の降る日のこと。


 ザァーと降るわけじゃなくて、霧のような小雨でしっとりと全部を濡らしていくような、優しい雨。

 私は傘を持っていなくて、しっとりと髪を濡らす雨の中を歩いていた。


「よお、ひさしぶりじゃん。つっても2週間もたってないけどなぁ」


 そんなふうに笑われても、私はなんて返していいかわからない。

 私たち別れたんだよ?


 彼は自分が差していた傘を、当たり前のように私の頭上に差してくれる。

 彼の広い肩に雨が舞い降りていく。


 彼は、私なんか無視していけばいいと思う。

 たとえばもっと激しい雨の中を私が傘も差さずに歩いていたとしても。

 声なんかかけずに、そこにいることすら気にもかけない様子で立ち去っていてもいいと思う。

 こんなふうに、傘を私になんて分けてくれなくてもいいの。

 だってそんな優しいあなたを、私はフったんだよ?


 歩道の真ん中。

 明らかに立ち止まってヒトの流れの邪魔になっている私たち。

 彼は私を促してそっと脇に寄った。


「元気してたか?」


 同じ傘の下、彼の視線に痛みを感じて顔を上げられない。

 外を向いた私の靴とは違って、彼の靴は私へと向いてる。


 いつもそう。

 彼の視線はいつも私に向いていた。

 今、こうして目を伏せていたって、ちゃんと分かるの。

 わたしに向けられる彼の顔はきっと優しく笑ってる。


 どうして?

 言葉に出来ない問いかけが心の中で響く。

 どうして今もこんなふうに優しいの?


「もう俺とはしゃべりたくもない?」


 悲しげな声に思わず顔を上げると、彼がつらそうに顔をしかめた。

 途端に私の心にも痛みが走る。


「ごめんな。お詫びに、この傘使ってよ」


 彼が差し出した傘。

 もちろん受取ることなんてできやしない。


「俺の傘なんていやかもしれないけどさ。濡れて風邪ひくよりはずっとマシだって」


 彼の手が私の手に触れて、彼の体温の残る傘をしっかりと握らせてくれた。

 そのぬくもりを、やっぱり恋しく思ってしまう。


 どうして別れることなんて出来たんだろう。

 いつも私に笑顔をやさしさをくれる、この人と。


「泣くなよ」


 私は気付かないうちに泣いていた。

 彼の袖に、雨よりも大粒の雫の跡がいくつもあった。


「そんなに俺のことキライか?」


 慌てて首を振る。

 そうじゃない。

 そうじゃない。


「オマエの泣き顔はもう見たくないんだよ」


 彼の腕が、遠慮がちに私を抱き寄せた。

 傘が道に落ちて、くるりと転がる。


 まだ雨は降っている。


 雑踏の中にいるのに、音は何にも聞こえない。

 彼の腕の中、自分の胸と彼の胸から聞こえる鼓動だけ。

 優しい雨は私たちを包んでくれてる。


「俺の前で泣いた、オマエが悪いんだからな」


 声が聴こえる。

 ぎゅっと力いっぱい抱きしめられて、私はもう動けない。


「俺はまだオマエのことが好きなんだから、ほっとけないに決まってるだろ」


 私も。


 そう答える代わりに、指で彼の服をぎゅっと掴んだ。




きっとホルモンバランスのせい(?)

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