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RAIN  作者: 恵奈
10/21

七夕

年の差。

 



 雨が降ればいい。


 世間は七夕で。

 オリヒメとヒコボシのためにも。


「晴れるといいですね」


 と、よく言うけれど。


 雨が降ればいい。






「ひさしぶりに会えると思ったのに」


 電話口で、思わず唇を尖らせた。


『ごめん。ほんとにごめん』


 急な出張が入ったとかで。

 また約束がひとつ先延ばしになっていく。

 電話の向こうでは彼が、困ったように笑ってるのだろう、とだいたい想像がつく。


 はあっ。


 ため息ひとつ。

 仕事だから。

 仕方ないのはわかってるけど。


「わかった。じゃあ、また今度ね」


 プチ。

 あ。思わず切っちゃった。

 まあ、いっか。話してても、どうせぐちぐち言っちゃうだけだし。


 ベッドの上に放り投げた携帯。

 そのとたんに、着信音が鳴り出す。

 そのメロディで誰からかわかる。

 彼。

 突然切れた電話に慌てて掛けなおしてきたんだわ。


 どうしよう。

 少し冷めた目で、それを見つめた。




 9歳年上の彼。

 超多忙な上に、不規則な社会人で。

 私はと言えば。

 短大へ進むのにもエスカレーター式だからのんびりしたもので。

 生活時間の速度が、かなり違う。


 だから、すごい楽しみにしてたのに。


 7日は、絶対に休みをもぎ取るから、一緒に過ごそうって。

 約束してたのにな。


 たぶん、残念に思う気持ちはふたりとも一緒だと思う。

 だけど、私の長く感じた時間の分だけ、落胆も大きいの。

 仕事だから、しょうがないし。

 忙しいってこと、十分に分かっているけど。

 少しだけ、拗ねさせて。


 私はまだ、子供なの。

 物分りのいいふりなんて出来ないの。



 何度も鳴り続けるその音が。

 彼の気持ち。


 もう少し。もう少し。




『やっと出てくれた』


 嬉しそうな彼の声に、私もほっとした。


「ごめんね」


『こっちこそ、ごめん。そうだ、てるてる坊主つくれる?』


「つくれるけどなに?」


『たくさんつくって、全部さかさまにつるしておいてよ』


「?」


『雨が降れば、出張に行かなくてすむんだ』


「ほんと!? じゃあたくさんつくるわ、私」



 七夕だけれど。

 私は一人雨乞いをしよう。


 雨が降りますように。


 彼に会えますように。



 天の恋人たちには悪いけど。

 やっぱり自分の恋のほうが大事。





雲で下界から監視(!)されない方が落ち着いて会えそうな織姫たち。

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