七夕
年の差。
雨が降ればいい。
世間は七夕で。
オリヒメとヒコボシのためにも。
「晴れるといいですね」
と、よく言うけれど。
雨が降ればいい。
「ひさしぶりに会えると思ったのに」
電話口で、思わず唇を尖らせた。
『ごめん。ほんとにごめん』
急な出張が入ったとかで。
また約束がひとつ先延ばしになっていく。
電話の向こうでは彼が、困ったように笑ってるのだろう、とだいたい想像がつく。
はあっ。
ため息ひとつ。
仕事だから。
仕方ないのはわかってるけど。
「わかった。じゃあ、また今度ね」
プチ。
あ。思わず切っちゃった。
まあ、いっか。話してても、どうせぐちぐち言っちゃうだけだし。
ベッドの上に放り投げた携帯。
そのとたんに、着信音が鳴り出す。
そのメロディで誰からかわかる。
彼。
突然切れた電話に慌てて掛けなおしてきたんだわ。
どうしよう。
少し冷めた目で、それを見つめた。
9歳年上の彼。
超多忙な上に、不規則な社会人で。
私はと言えば。
短大へ進むのにもエスカレーター式だからのんびりしたもので。
生活時間の速度が、かなり違う。
だから、すごい楽しみにしてたのに。
7日は、絶対に休みをもぎ取るから、一緒に過ごそうって。
約束してたのにな。
たぶん、残念に思う気持ちはふたりとも一緒だと思う。
だけど、私の長く感じた時間の分だけ、落胆も大きいの。
仕事だから、しょうがないし。
忙しいってこと、十分に分かっているけど。
少しだけ、拗ねさせて。
私はまだ、子供なの。
物分りのいいふりなんて出来ないの。
何度も鳴り続けるその音が。
彼の気持ち。
もう少し。もう少し。
『やっと出てくれた』
嬉しそうな彼の声に、私もほっとした。
「ごめんね」
『こっちこそ、ごめん。そうだ、てるてる坊主つくれる?』
「つくれるけどなに?」
『たくさんつくって、全部さかさまにつるしておいてよ』
「?」
『雨が降れば、出張に行かなくてすむんだ』
「ほんと!? じゃあたくさんつくるわ、私」
七夕だけれど。
私は一人雨乞いをしよう。
雨が降りますように。
彼に会えますように。
天の恋人たちには悪いけど。
やっぱり自分の恋のほうが大事。
雲で下界から監視(!)されない方が落ち着いて会えそうな織姫たち。




