従魔契約
※本日2話目の投稿です。
「アイセル様とも家族になれるだなんて嬉しいです!」
「ぐはっ……!」
トドメの言葉を放ち、幸せそうな表情でエレナは僕の部屋から立ち去った。
たしかに僕もエレナと家族になりたかった。
なりたかったが……違う。そうじゃないんだ。
あまりの出来事に呆然としていると、また扉がノックされ、部屋に残っていたファニーが扉を開ける。
ちなみに、レナードとダナは今も僕の側にべったりくっついており、部屋から出ていく気配はない。
「アイセル、目が覚めたか……」
部屋に足を踏み入れたクレイブは、僕の姿を見るなりホッと安堵の息を吐く。
「今の僕は筋肉と話をする気分じゃないので……」
おかえりくださいと手で扉を示す。
「待て待て待て! お前にとって大事な話だ!」
クレイブが合図を送ると、手足に拘束具を付けられ目隠しをされた黒髪の男が、騎士二人に挟まれた状態で姿を現す。
「よお! アイセル。また会えたな!」
「…………」
なんでこんな奴を連れてきたんだと、僕はクレイブを睨みつける。
「アイセル。意識を失う直前のことを覚えているか?」
「直前……?」
そういえば、ルイスの瞳の色が紫色に変わったとか何とか……。
「実は、お前が倒れたのはルイスの精神干渉魔法だけが原因じゃないんだ。どうやらお前の魔力がルイスに吸い取られていたらしくてな」
「は?」
すると、僕たちの会話にルイスが割り込んでくる。
「契約に必要な魔力を貰っただけだって。ただ、アイセルがガキだってのを忘れて貰いすぎたんだよなぁ」
人の魔力をパクっておいて全く悪びれる様子のないルイス。
説明を求めてクレイブに視線を向けると、言いづらそうに口を開く。
「奪われた魔力は命を脅かすほどの量じゃない。数日安静にしていればすぐに回復するだろう。ただ、その……どうやらお前とルイスは従魔契約が結ばれたみたいでな」
「従魔契約? そんな契約を結んだ記憶も契約書にサインをした覚えもありませんが?」
「いや、俺も詳しくはないんだが……」
従魔契約とは名前の通り魔物と契約を結ぶことで、その魔物を使役できるというもの。
ただし、誰にでもできるものではなく、特別なスキルが必要になるらしい。
「人間が魔物を使役するにはスキルが必要だが、魔族が自ら主を選ぶ場合はそうでもないらしくて……」
「え?」
つまり、僕がルイスの主に選ばれた?
「どうして僕がコイツと従魔契約なんて……!」
戸惑う僕を見て、ルイスが心底愉しそうに笑っている。
どうやら僕に対する一種の嫌がらせの意味もあるらしい。
しかも、従魔契約を破棄する方法は現時点ではわかっていない。
「従魔にするなら可愛い女の子がいいんだけど」
「俺は女に間違えられるくらい美人なんだから問題ねぇだろ?」
「性別に問題しかないよ」
すると、ダナとレナードも口を挟む。
「ダナもかわいい!」
「僕の容姿も整っていると自負しております」
なあ、黙っていてくれないか?
「一応、王家にも報告はするが……おそらく我々がこのままルイスの面倒をみることになるだろう」
ルイスはすでに指名手配されている身。
しかし、それはあくまでも人間であると仮定した場合の話だ。
王家に引き渡したところで、まともに裁かれずに無罪放免にされて放り出される可能性もある。
それくらい魔族は厄介な存在だった。
「ただし、罪人であることに変わりはない。しっかり罪は償ってもらうぞ」
クレイブがギロッとルイスを睨みつける。
なんせ、前回はフェリシアを傷つけようとしたのだから、クレイブとしても簡単に許すわけにはいかないのだろう。
(まあ、牢にぶち込んだところで何の利益にもならないし……)
それならば、ルイスの能力を我が領のために有効活用させたほうがよほど有意義なはずだ。
「そういうわけだからさ。とりあえず目隠し外してくんない?」
「お前……すぐに魔法を使うつもりだろ?」
「そこは「使わないで」ってアイセルが俺にお願いしなきゃな」
そうか。従魔契約はルイスが僕の命令に従うということ……。
さっそく僕はルイスに向かって精神干渉魔法の使用を禁じた。
他にも暴力や機密の漏洩など、いくつもの禁止事項を言い渡す。
細か過ぎると文句を言いつつ、ルイスが全てを了承すると、ようやく手足の拘束と目隠しを外してやった。
従魔契約の証である僕と同じ紫の瞳がゆっくりと細められる。
(ほんと、これが可愛い女の子ならよかったのに)
※補足
ルイス……彼の精神干渉魔法によって、ドアマットヒロインの異母妹、悪役令嬢もののヒロイン、追放聖女を連れ戻そうとする王子など、様々な物語の無茶苦茶な行動をする『悪役』が誕生している。
次回、いよいよ最終話(本日3話目)です。




