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覚醒イベント?

口を手で塞がれ、ひょいっと僕の身体が何者かに抱え上げられる。


「んんっ!」


その時点になってようやく僕は声を発しようとするが、有無を言わさず麻袋の中に放り込まれてしまった。

そのまま袋口が縛られ、僕は麻袋の中に閉じ込められた状態に……。


「何これ!? 出してって……うわっ!」


そして、麻袋に入れられた状態で僕は再び持ち上げられ、腕でがっちりとホールドされた。


(これは……)


麻袋越しに感じる誰かの腕の感触と振動に、自身が荷物のように(かつ)がれ、運ばれているのだと理解する。


頭に浮かんだのは『誘拐』の二文字。

僕は焦りながらも思いきり息を吸い込んで口を開いた。


「誰か! 誰か助けてぇぇぇ! 誘拐だ! 子供が誘拐されてるよぉぉぉぉぉ!!」


身体は自由に動かせなくとも口なら動く。


僕はクソデカハイトーンボイスで叫びまくるも、周りから反応らしきものが返ってこない。

そこでようやく僕は異変に気づいた。


(いや、違う。そもそも何も音が聞こえない……?)


そう。なぜか外の喧騒が全く聞こえてこない。

つまり、この麻袋に防音魔法が施されているか、この麻袋自体が魔導具なのかもしれないわけで……。


ケホッと軽く咳払いをしたあと、試しに僕のスキルを発動してみた。


(うん。聞こえる)


街の喧騒や見知らぬ誰かの声が次から次へと僕の耳に届く。

だけど、それだけ。

僕のスキルじゃ、僕の声を外へ届けることはできない。


(あーあ……)


残念ながら、現状を打破する手はなさそうだ。

それに、この麻袋が準備されていたということは、計画的な誘拐である可能性が高い。


(やっぱり身代金目的かなぁ?)


なんせ、僕はダルサニア辺境伯家の一人息子だ。

誘拐されるくらいの価値はある。


あと、可能性があるとすれば……。


(何かのイベントなのかもしれない)


僕が読んでいたハーレム漫画には女性との出会い以外にも、様々なイベントがあったからだ。

今回のように主人公がピンチに陥る場面ももちろんあった。


(だとしたら覚醒イベント……だったり?)


せっかく授かった僕のスキルだが、今のところ特に変化はみられず、ただ能力範囲内を盗み聞きするだけの微妙なもののまま。

だが、主人公がピンチに陥ることで、能力が覚醒する激アツ展開が()なんじゃないだろうか。


(まあ、主人公の僕はどうせ死ぬことはないんだし)


主人公が子供時代に死んでしまったら、物語は何も始まらない。

つまり、この誘拐で僕が命を落とすことはないってわけだ。


そんなことを考えていると、僕の身体を揺らしていた振動が緩やかになり、やがてピタリと止まった。


「うわっ!」


そして、乱暴に投げ捨てられたせいで僕は尻を強打する。


「あー……けっこう重かったなぁ」


麻袋の袋口が開かれると同時に、低い男の声が聞こえてきた。


「よぉ! 久しぶりだなクソガキ」


黒髪に琥珀色の瞳を持ち、やたら整った顔の男が麻袋の中を覗き込みながらにやりと笑う。

どうやらこの男が誘拐犯のようだ。


「初めまして。どちら様でしょう?」

「あ? なんだ、俺のこと覚えてねぇのかよ? 頭の悪りぃガキだなぁ」


僕は頭が悪いのではなく、なぜか男の顔と名前が覚えられないだけなのに。


「俺はお前のことをちゃーんと覚えてるぞ? 俺の腕に思いっきり噛みつきやがって……」


その言葉で、ようやく目の前の男が誰であるのかを思い出す。


「ああ! お前、あの時の女装メイドか!?」


フェリシアの異母妹レイチェルとともに我が家を訪れた招かれざる客。

たしか、捕まったあと王都の憲兵本部に移送される途中で逃走したと聞いていた。


「好きで女装してたんじゃねぇよ! あと、俺の名前はルイスだ!」


苛立った様子のルイスを見つめながら、僕はやはり誘拐(これ)が覚醒イベントだと確信する。


(一度倒したはずの敵が再登場って、よくあるパターンだもんね)

読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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