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豊穣祭①

読んでいただきありがとうございます。

長くなってしまったので2話に分けて投稿します。

※アイセル視点に戻ります

※本日1話目の投稿です。

「坊ちゃま、本日もお手紙とお花が届いております」

「あー……うん」


微妙にトゲを含んだ声で報告をしてくるファニー。

それを受ける僕も曖昧に返事をすることしかできない。


ちなみに贈り主が誰なのかは名前を聞かなくてもわかっている。

それくらい毎日のようにレナードから手紙と花が届いているからだ。


好みのタイプだと狙っていた男が、なぜか(あるじ)の僕に求愛まがいの行動を取っているのだからファニーも複雑な気持ちなのだろう。


『もぉ、最悪! ショタコンだったなんて!』

『ただでさえ出会いが少ない職場なのにさあ!』


先日、姉たちに愚痴るファニーの声を盗み聞きしたので間違いない。

そして、出会いが少ない職場なのも申し訳ない。


おそらくレナードはショタコンなのではなく、崇拝対象がどのような容姿や性別であっても気にならないだけ。

だが、そんな特殊性癖をファニーに理解してもらうのは無理な話。


ファニーを僕のハーレムに入れてあげられればいいのだけれど、彼女にはオムツを替えてもらったこともある仲で、どうしても家族のようにしか見れない。

本当に申し訳なく思う。


(せめて豊穣祭でいい男を捕まえてきてくれ)


無事にクレイブから許可が下りたので、今日は豊穣祭へ出掛ける予定だ。

クレイブは「楽しんでくるんだぞ」と、いい父親ぶった様子で僕を執務室から送り出す。

やたら機嫌がよくて気持ち悪い。


そして、ファニーには午後から明日の正午まで休暇を与えてある。

そのため、僕はダナと護衛二人を連れて、神殿にエレナを迎えにいく手筈となっていた。


「あいせる〜!」


玄関ホールへ向かうと、ダナが僕を見るなり嬉しそうに手を振る。


「ん? お前……また背が伸びたんじゃないか?」

「うん。ダナおおきくてつよいごえいになる」


出会った時は僕より背が低かったのに、いつの間にか同じくらいになり、そしてついに抜かされてしまった。


獣人だから……という理由もあるだろうが、環境の影響も大きいと思っている。

闇オークションの商品としてなら、狼獣人は幼いほうが好まれるはず。

そのため、なるべく成長しないよう食事を制限されていたのではないだろうか。


ダルサニア騎士団に所属し、食事をしっかりとるようになったことて獣人本来の成長スピードを取り戻したのだと僕は考えている。


つまり、何が言いたいのかというと……ダナがめちゃくちゃ羨ましい。


(まあ、僕もいずれ背が伸びるだろうし)


クレイブは平均よりも長身のため、不本意ながらあの男の遺伝子が僕の身長をぐんぐん伸ばすはず。


早く美少年から美青年になりたいと思いながら、僕はダナとともに馬車に乗り込んだ。



「アイセル様! お待ちしておりました!」


馬車が神殿に到着し、扉を開けると……出迎えたのは満面の笑みを浮かべるレナードだった。 


「…………」


僕が無言で馬車の扉を閉めようとするも、レナードによって阻止されてしまう。

意外と力が強い。


仕方なく馬車から降りると、笑顔のままのレナードが口を開いた。


「手紙は読んでいただけましたか? 花はアイセル様の好みがわからなくて僕の好みのものを贈らせていただきました」

「手紙も読んでいないし、花を贈るのもやめてくれ」

「花はあまりお好きじゃないんですね。でしたらアイセル様の好きなものを教えてください」

「いや、だから……そもそも贈り物をやめてほしいんだけど」

「どうしてです?」


僕の言葉に、きょとんとした表情(かお)になるレナード。


まあ、予想の範疇ではある。

この手のタイプは遠回しの拒否は通じない。

だからといって人の話も聞かない……いや、自分に都合のいい話以外は聞けないのだ。


「ダナ」


僕の一声でダナが馬車の中から飛び出し、僕とレナードの間に割り込む。


「あいせるにちかづかないで」


そして、ダナがレナードに殺気を向けた。


口で言っても伝わらないのならば、さっさと実力行使をしてしまえばいい。

今日は必ず僕を守るようにダナには言い聞かせてあったのだ。


「……っ!」


ダナの殺気を浴びて、思わず後退(あとずさ)るレナード。

さすがにこれ以上は僕に近づけないと判断したのか、渋々引き下がってくれた。


すると、ちょうどそこへエレナが姿を現し、僕たちは豊穣祭で賑わう街へと繰り出すのだった。


本日2話目は8時10分に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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