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どうして僕が?②(Side.ジョシュア)

読んでいただきありがとうございます。

※今回もジョシュア視点です。

ちょっと長くなっちゃった……。

帰国した父から執務室へ呼び出された僕は、なぜエレナを追放したのかと強い口調で責められてしまう。


「し、しかし、エレナは普段からヴィオラや他の聖女たちに役目を押し付けていて……」


事情を説明するも、ならばその証拠を見せてみろと父に返され……。


「まさか、自身で調べもせず、一方の言い分だけを真に受けたのか?」

「…………」


父の威圧的な視線と言葉に晒された僕は、おずおずと口を開くも、まるで言葉が喉に貼り付いてしまったかのように出てこない。


それからすぐに神殿内部に調査が入り、ヴィオラの言葉が全くのデタラメであったこと。

むしろ、防壁魔法の役目はエレナ一人に押し付けられている状況であったことが明るみとなる。


(ヴィオラが僕を騙していただなんて……)


この時はまだ、ヴィオラが僕に嘘をついていたことにショックを受けていた。


しかし、問題はそれだけでは終わらない。


追放されたエレナの穴を埋めるべく、残りの聖女たちが交代で防壁魔法の役目を担うことになった。

だが、あれだけ賢固であった防壁魔法が何度も綻びを見せ、その(たび)に魔物が侵入するようになってしまう。


エレナが聖魔法に目覚め、聖女の役目を担うようになってから十年。

追放の原因となった一度を除き、この十年は防壁魔法が魔物に突破されることも、綻びができることもなかったのに……。


当時は子供だった僕はあまり覚えていないが、エレナが聖女になるより以前は、防壁魔法に綻びができることなんてよくあることだったそうだ。

そして、魔物が侵入してもすぐに騎士や魔術師が対処していた。


けれど、ここ十年の間で国民も神殿も王家でさえも『完璧な防壁魔法』の存在が当たり前になってしまう。


「だから父上はエレナとジョシュアの婚約を提案されたのか……」


これは僕の父がぽつりと零した言葉。


僕とエレナの婚約を決めたのは今は亡き前国王陛下……つまり僕の祖父で、防壁魔法が不安定なものであると身を持って理解していた世代。

父もその時代を生きてきたはずなのに、戴冠してからの平和にすっかり慣れきってしまっていた。


しかし、それは国民だって同じこと。

この十年が平和であったからこそ、国民の不安の声は日に日に増していき、そのせいで父の苛立ちも募っていった。


そうしてエレナが追放されて半月が経った頃、なんとエレナがリシャグーノ王国のダルサニア辺境伯領内で保護されているとの情報がもたらされる。

それと同時に、エレナが聖魔法を使えなくなってしまったことも……。


「ジョシュア。お前が聖女エレナを迎えにいけ」

「え? どうして僕が……」

「お前のせいでこのような事態になっているんだぞ!?」


父に怒鳴りつけられ、思わず僕は身を(すく)める。


我が国とリシャグーノ王国はいい関係を築いているとは言い難く、正式に聖女エレナの返還を求めれば、僕の行為も(おおやけ)となり、いい笑いものになるだろう。

それに、聖女エレナの返還を条件に、リシャグーノ王国側から無理難題を吹っ掛けられるかもしれない。


しかも、そうまでして手に入れてもエレナの聖魔法が元に戻らなければ、我が国はただ恥を晒しただけになる。


こうして、僕はエレナを連れ戻すために、非公式(・・・)でリシャグーノ王国を訪れることになったのだ。



◇◇◇◇◇◇



ギャザの森を迂回し、他国を経由し、何日もかけてようやくリシャグーノ王国へ辿り着く。

非公式の訪問ゆえ僕が王族であることを隠さねばならず……揺れの激しい乗り合い馬車も、安宿の固いベッドも僕には苦痛でしかなかった。


(ようやく……ようやくだ……)


夕方に到着したこの街から、馬車で二日もあればダルサニア辺境伯領へ着くだろう。


今日泊まった宿の一階は食堂になっており、そこで食後のワインを一人で飲みながら、僕はぼんやりと手に持つグラスを眺める。


旅の同行者である他の四人は、別の店に夕食を食べにいってしまった。

ちなみに彼らは僕の護衛などではなく、僕が逃げ出さないよう見張り役として父の命令で旅に同行している。


(今さら、どこに逃げるっていうんだ……)


土地勘もなく、路銀は同行者が管理している状況で、僕にはダルサニア辺境伯領へ向かう道しか残されていない。

それがわかっているから、同行者の四人も僕を宿屋に放置しているのだ。


胸に巣食う不安や不満をワインで流し込み、心地いい酔いに身を委ねる。

その時だった。


「なあ、あんたも一人?」


低くくぐもるような声がかかる。

その声のほうへ顔を向けると、艶やかな黒髪に琥珀色の瞳を持つ美しい青年がにんまりと笑みを浮かべていた。


先に声を聞いていなければ女性だと勘違いしてしまいそうなくらい整った顔立ちに、思わずぽかんと見惚れてしまう。


「せっかくだし一緒に飲もうぜ」


そう言うと、青年は僕の返事を待たずに勝手に向かいの椅子に腰掛ける。

そして、店員を呼び、これまた勝手に酒やつまみを注文し始めた。


美しい容姿に似つかわしくない乱暴な口調と身勝手な行動に、僕はただ圧倒されてしまう。


「俺の名前はルイス。あんたの名前は?」


真正面から僕を見つめるルイス。

すると、彼の琥珀色の瞳が徐々に赤みを帯び、金色へと変化していく。


「僕の名前はジョシュア……ジョシュア・メルソーナだ」


気づけば、偽名ではなく本名を口にしていた。


「メルソーナ? まさか……王族か?」

「ああ。僕はメルソーナ王国の第二王子だ」


またもや僕は正直に自身の立場を明かしてしまう。

すると、金色に変化したルイスの瞳が愉快げに細められた。


「なんだか訳ありっぽいとは思ったが王子様とはな。それで、王子様がなんでこんな田舎町に?」

「僕は……」


そのままルイスに請われるがまま、僕は洗いざらい事情を話していく。


「ふーん……ダルサニア辺境伯領に聖女がいるのか」

「行ったことはあるか?」

「ああ。それにダルサニア辺境伯家の当主には借りがあるんだよなぁ」


そう言いながらルイスは自身の左脇腹を手で(さす)る。


「ちょうどいい。あんたの欲望に付き合ってやるよ」

「欲望……?」

「そう。やっぱ人間(・・)は素直になるのが一番だって」


なぜかルイスの声が頭に響く。


「あんたは何が欲しい? 何を望む? 我慢なんてする必要はねぇんだよ、王子様。全てがあんたの望み通りだ」


ルイスの言葉に後押しされるかのように、自身の内側から強い衝動が次から次へと湧き上がる。

そして、いつの間にか僕の思考は欲望に塗り潰されていくのだった。


※補足 フェリシアの異母妹とともにダルサニア辺境伯邸に乗り込んだ女装メイドのルイスです。

かなりお久しぶりの登場になっちゃいました。

次回は明日の8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
同じ奴2度出すのって正直興醒め展開 今回でしっかり終わらせてね
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