表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

バレなければ怒られない

「というわけで、僕が王立学園の見学に行く許可を取っておいてください」

「待て待て待て待て」


僕がタウンハウスへ戻ると、すでにクライブとフェリシアもお茶会から帰ってきていた。

ちょうどいいとばかりにクライブを捕まえ、簡単にディアナの事情を説明する。


「お前は……厄介なことに首を突っ込むな!」

「僕は可哀想な……いえ、困っている女性を放っておけないだけです!」

「だからといって婚約破棄だなんて……。そんなものは当人たちに任せておけばいいだろう!」

「ああ、男女のあれこれに縁のない父上に理解しろというのが無理な話でしたね。すみません」

「憐れむな!!」


すると、言い合う僕とクライブを止めるべくフェリシアが口を挟む。


「でも……お話を聞いていますとアシュベリー伯爵令嬢の力になってあげたいアイセル様のお気持ちもわかります。やはり、婚約者から理不尽に冷たく当たられるのは辛いことでしょうし……」

「ぐはっ!」


そんなつもりはなかったようだが、どうやらフェリシアの言葉がクライブにクリーンヒットしたらしい。

自分がフェリシアとの初夜で何をやらかしたのかを思い出したのだろう。


「それに、私もアイセル様のおかげでクライブ様との誤解が解けました。だから、もう少しアイセル様のことを信用してあげてはどうでしょう?」

「あ、ああ……。たしかにそうだな。フェリシアの言う通りだ」


フェリシアの言葉を聞いた途端に、ころっと態度を変えてしまったクライブ。


父よ、イエスマン過ぎるだろ?

プライドはないのか?


すると、クライブの態度に呆れる僕に向かって、フェリシアが目配せをしてきた。

どうやら僕のために父に進言をしてくれたようだ。


さすが僕を恋に落とした女性。

いつの間にかクライブを掌の上で転がせるまでに成長していた。

末恐ろしいポテンシャルを秘めている

ぜひ僕のことも掌の上で転がしてほしいものだ。



◇◇◇◇◇◇



さて、あれから十日が経過し、僕は無事に見学者という立場で王立学園を訪れていた。


(思ったよりも広いな……)


いくつかの教室と学園内の施設を案内してくれた教師に礼と別れを告げ、そのまま学園の外へ出ていく……と見せかけて、僕は学園内の探索を開始する。


「坊ちゃま……こんなことがバレたら怒られちゃいますよ」


学園内に護衛を連れていくわけにはいかず、今日は侍女のファニーだけが付き添いだ。


「大丈夫。バレなければ怒られないんだし、怒られてしまってから謝ればいいんだから」

「はぁ……。相変わらず肝が据わってますね」


そう言いながらも、ファニーは僕の行動を本気で止める素振りはない。

よほどのことがない限り、僕の自由にさせてくれるのが彼女のいいところだ。


(たしか中庭はこっちだったはず……)


時刻は昼の十二時に近づき、そろそろ昼休憩のために生徒たちが教室の外へ出てくる頃。


ディアナの話によると、最近は学園内でも逆転ハーレムメンバーたちはミアと行動をともにしているらしい。

そして、昼休憩には中庭のガゼボで仲良く昼食を食べていると……。


(あ! やっと見つけた!)


初めて訪れた場所ということもあり、少し時間がかかってしまった。

だけど、中庭の奥まった場所に設置された白いガゼボには、街で見かけたあの時の逆転ハーレムが再現されていいる。


僕がガゼボに近づくにつれて、楽しそうに笑う男女の声が耳に届く。


「わあ、偶然ですね」


そこへ僕がわざとらしく声をかけると、彼らは一斉にこちらへ顔を向けた。


「あ! あの時の……」


僕の姿を見た途端にミアが驚き……そして忌々しそうな表情を浮かべ、ユージンは驚いた顔をしたあとに他の男たちにコソコソと何事かを囁いている。

おそらく、僕がどこの誰なのかを伝えているのだろう。


「楽しそうな声が聞こえてきたので何事かと覗いてみたら、ハーボトル男爵令嬢の顔が見えたのでご挨拶にきました」


ユージンたちのことはスルーして、まずはミアに声をかけてみる。


「そ、それはありがとう。えっと……アイセル君だったよね? どうして学園(ここ)に?」

「王立学園がどんなところなのか見学にきたんです」

「そうだったのね」

「ええ。あなたはこんなところで男を(はべ)らせて何をしていたんですか?」

「そんな……(はべ)らすだなんて誤解よ! みんなは私のお友達なの。貴族社会に慣れない私のために色々助けてくれていて」

「貴族社会に慣れない?」

「私、元は平民だから……。貴族のルールとかマナーとかそういったものに疎くて」

「ふぅん……。だったら淑女教育のやり直しが必要ですね」

「え!? それは……その、そこまでのことじゃなくって……つい忘れちゃう時があったりして、それを皆がフォローしてくれるから……」

「フォローが必要なら、男性ではなく同じ立場の令嬢たちを頼るべきじゃないですか?」

「…………」


徹底的に正論で返してやると、ミアは黙り込んでしまう。

そして、その大きな瞳にうるうると涙の膜が張っていく。


「きっと、アイセル君はディアナ様に色々吹き込まれてしまっているのね」


読んでいただきありがとうございます。

次回は明日朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ