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被害者の会

ディアナからユージンとの婚約を解消したいと言質を取ったあと、僕はとある提案をする。

それが、ミアの逆転ハーレムメンバー五人の婚約者同士が交流を持つことだった。


つまり、ミアの逆転ハーレム『被害者の会』の発足。


ティーセットとお菓子が置かれた円卓を囲むのは、五人の美しい令嬢たち。

そして、その部屋の扉に張り付く美少年の僕。


ここは貸し切られたレストランの一室。


今回はディアナが主催という立場で残りの四人の令嬢に声をかけてくれた。

だが、全くの無関係な僕が同席すると彼女たちは口を閉ざしてしまうかもしれない。

そのため、僕はスキルを使って盗み聞きをしているというわけだった。


五人は派閥が違ったり学年やクラスが別だったりと、互いに顔と名前は知っているが、これまであまり接点がなかったらしい。

そんな彼女たちは始めこそ探り合うような会話を繰り広げていたが、ディアナの誘導もあり、いつしか共通の話題で盛り上がっていく。


そう。彼女たち五人の共通点は婚約者がミアに(たぶら)かされてしまっていること。

自分の婚約者の態度がいかに酷いものなのかを語り、中には泣き出してしまう令嬢もいた。


(うわぁ……これは酷いな)


ミアが編入してくるまでは婚約者と良好な関係を築いていたのに、今では婚約者に敵視されてしまっているというディアナと同じような状況。


ただ、話を聞いているうちにミアの()り口が見えてくる。


ミアが男に言い寄ると、婚約者である彼女たちが苦言を呈する。

それをミアは「いじめられた」と男に泣きつき、男は自身の行動を棚に上げて婚約者を叱る。

内容に多少の差はあれど、基本的にはこのパターンの繰り返し。


(まあ、単純だけど男の性質を見抜いてはいるよね)


(まなじり)を吊り上げて怒ってばかりの女の子より、自分を頼って甘えてくれるか弱い女の子に気持ちが傾いてしまう。

もちろん全ての男がそうだというわけではないが、逆転ハーレムメンバーたちには効果てきめんだったようだ。


五人の令嬢がそれぞれの胸の内を語り終えたタイミングで、ついにディアナが例の話を切り出す。


「実は……わたくし、ユージン様との婚約を解消しようと思っておりますの」

「………!?」


途端に部屋の中が静まり返った。


(さあ、どう出る……?)


このあとの展開によっては、ディアナをユージンから解放する道筋が見えてくるはず……。


すると、しばらくの沈黙のあと、一人の令嬢から「自分も婚約解消を考えていた」と声が上がる。

それにつられるように、別の令嬢も「婚約を解消しようか迷っている」と打ち明けてくれた。


(よしっ!!)


声には出さずに、僕は内心小さくガッツポーズをする。


一人だと二の足を踏んでしまう行動でも、『みんなと一緒』であれば動き出す者もいるはずだと考えていた。


僕がディアナに提案した『被害者の会』の発足だが、被害者同士で傷を舐め合うためでも、ミアへの対抗策を考えるためでもない。


僕が狙っているのは『集団婚約破棄』だ。


この国の歴史をちらっと調べてみたところ、これまでも婚約を解消をした貴族は存在していた。

その理由が、どちらかの家の事業が傾いたり、健康上の問題だったりと、あくまで婚姻による利益が見込めないというものがほとんど。


もちろん、婚約期間中の不貞によるものもあったが、それらは面白おかしくゴシップとして扱われていた。

おそらく、普通に(・・・)ユージンと婚約を解消しても、変に騒ぎ立てられてしまうのだろう。

もしかしたら、ディアナにも原因があると誤解されてしまうかもしれない。


(婚約を解消する理由を作ったのはユージンなのに……)


どうにも納得がいかない僕は、あることを思いつく。


(だったら、思いっきり派手にやってみればいいんじゃない?)


コソコソ婚約を解消したところで、どうせバレて周りに騒がれてしまうのだ。

むしろ、こちら側から婚約解消の原因があの『逆転ハーレム』であることを明かし、ディアナに非はなかったことを証明するのはどうだろう?


過去を遡っても複数人が同時に同じ理由で婚約を破棄した事例はなかった。

中途半端にやれば、それこそ無駄に騒がれて終わる。


目指すは前代未聞の婚約解消。

いや、解消じゃない。ユージンたちに非があるのだから婚約破棄だ。


一週間前、そうディアナに告げると、彼女は少しだけ迷う素振りを見せたが、最終的には僕の作戦に賛同してくれた。

それほどまでに彼女の心はユージンから離れてしまっているようだ。


(もし失敗したら僕が責任を取ればいいし)


責任を持って僕がディアナをダルサニア辺境伯領へ連れて帰ろう。

いや、成功しても連れて帰ろう。


そんなことを考えている間に、部屋の中でもディアナが『集団婚約破棄』の説明を始める。

彼女のプレゼンが上手いおかげか、皆が静かにディアナの話を聞いていた。


しかし、話が一段落したタイミングで一人の令嬢が質問を投げかける。


「集団婚約破棄の意図は理解いたしました。しかし、どうやって父を説得すればよいのでしょうか?」


読んでいただきありがとうございます。

投稿しながらちょこちょこ改稿もしております。

今日も出勤なので次回は明後日11/30(日)朝8時頃に投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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