表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/14

僕だってお年頃

「アイセル様……」

「それにとても優しいしいい匂いもするし時折見せる切なげな表情には興奮してしまいます!」

「アイセル様……?」

「つまり、初対面の僕が思わずナンパしてカフェに誘ってしまうくらいディアナ様は魅力的だということですよ!」


そこでようやくディアナは肩の力が抜けたように笑みを浮かべる。


(ああ、やっぱり)


愛情を与えられればディアナはこんなにも美しく花開くのに……。


彼女の婚約者はそんなことにも気づかないで、あざとい女の気を引くために尻尾を振り続けているのだろう。


(だったら、僕がディアナ様をもっと笑顔にしてあげなきゃね)


そう考えてしまうのも仕方がない。

僕だってお年頃の男の子なのだから。


僕はそっとディアナから手を離す。


「わたくしったら、つい喋り過ぎてしまいました。アイセル様と話しているとまるで大人と会話をしているような気分になってしまって……」

「ああ、それはおそらく僕が大人に囲まれて育ったからなのかもしれません」

「あ………」


途端に、ディアナはバツが悪そうな表情へと変化する。


どうやらダルサニア辺境伯家のあれやこれやの噂を耳にしたことがあるようだ。

あのレイチェルですら僕が冷遇されていたことを知っていたのだから、無理もないのかもしれない。


だが、せっかくなのでその噂を利用させてもらうことにする。


「ですので、僕はあまり同じ年頃の者たちと会話が噛み合わなくて……。そもそも屋敷にずっと籠もりきりだったので友人もいませんし……。だから、今日こうしてディアナ様とたくさんお話ができて本当に楽しかったんです」


別に嘘は何一つ言っていない。

ただ、ちょっぴり寂しげに微笑んでみせる。


「もしよければ、僕が王都に滞在している間にもう一度会っていただけませんか?」


そして、縋るような眼差しでディアナを見つめた。


「ええ。もちろんです」


優しいディアナは僕に同情してくれたのだろう。

おかげで、僕は彼女と次の約束を取り付けることに成功したのだった。



◇◇◇◇◇◇



ディアナと出会った日から一週間が経った。


その間にフェリシアは三度もお茶会に参加し、社交界での居場所作りに励んでいる。

アルバーン伯爵夫人のサポートのおかげもあり、今のところ成果は上々のようだ。


そして、本日もお茶会へ向かうフェリシアの乗った馬車を見送った僕は、ディアナとの待ち合わせ場所へと急ぐ。


そう。今日はディアナと二度目のデート。

デートだと思ったほうが僕の気分が上がるのでそういうことにしている。


僕たちが出会ったチョコレート店の前で待ち合わせをしていたのだが……。


「坊ちゃま。アレは……?」


今日も付き添いのファニーが困惑した声で僕に問いかけた。


チョコレート店の前にはすでにディアナの姿が見えている。

だが、淑女たる彼女が珍しく感情を(あら)わにし、男女二人に何かを訴えているのだ。


「わたくしは待ち伏せなどしておりません!」


近づくと、ディアナの声が耳に届いた。


読んでいただきありがとうございます。

なんとか書けました!

明日も朝8時頃に投稿できるように頑張ります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ