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お年頃

もともとディアナは婚約者とデートの約束をしていたそうだ。

しかし、用事が出来たからと断られ、だったら気分転換に買い物でもしようと南地区を訪れた。


そして、目的の店の前で馬車を停め、降りた瞬間にディアナは逆転ハーレム集団を目撃してしまう。

現場を押さえて婚約者を問い詰めようと、彼女は護衛と侍女を振り切って追いかけて……途中で僕の護衛とぶつかったというのが事の顛末だった。


「じゃあ、あの五人の中にディアナ様の婚約者が……?」


なんと、逆転ハーレムメンバー五人全員に婚約者がいるそうだ。

さすがにそれはちょっと引いてしまう。


ディアナによると、数ヶ月前、元平民であったミア・ハーボトル男爵令嬢が王立学園に編入してきた。

ミアは貴族の子息・息女だらけの学園で平民らしい(・・・・・)振る舞いを続け、そのせいでトラブルが頻発しているのだという。


特に酷いのが男子生徒との距離感。

相手に婚約者がいようがお構いなしにべったりと(まと)わりつき、どれだけ注意をされようともミアが態度を改めることはなかった。

いや、改める必要がなかったのだ。


なぜなら、そんなミアを庇ったのが男子生徒たち自身だったから。


「わたくしにはハーボトル男爵令嬢の振る舞いは非常識なものに見えました。ですが、一部の男子生徒たちには天真爛漫に映るようなのです」

「なるほど……」


その一部の男子生徒たちというのが、ミアを中心にした逆転ハーレムのメンバー五人なのだろう。


(わからなくもないけどね)


今世では僕も貴族令息という立場だ。

そんな僕がこれまで関わってきた平民は全て教育を受けた者たち……つまり、貴族に対してどのように振る舞うべきかしっかりと学んだ者のみ。


まだ社会に出ていない王立学園に通うディアナやその婚約者も似たようなものだろう。


そこに過度なスキンシップをするミアが現れた。


ディアナの言うとおり、淑女教育を受けた貴族の令嬢たちにはミアの振る舞いが非常識に見えただろう。

はしたない、下品だと……。


だが、令息たちにとってはどうだろうか?


なんせ、淑女教育を受けた貴族令嬢との触れ合いしか経験のないお年頃の男たちだ。

ミアの振る舞いを刺激的で新鮮だと感じてしまうのも無理はない。


(まあ、お年頃だもんね)


そう。煩悩まみれのお年頃。

「あわよくば……」「もしかしたら……」なんて想像したら止まれないお年頃。

下半身でものを考えちゃうお年頃。


そこで、ふと一つの疑問が頭に浮かぶ。


「ハーボトル男爵令嬢がは淑女教育を受けていなかったのですか?」


いくら元平民だといっても、男爵令嬢になることが決まれば淑女教育を受けるはずだ。

そこで合格点を貰わなければ、貴族だらけの王立学園に通うことはできない。


「完了しているはずなのですが……」

「じゃあ、彼女はわざと天真爛漫なフリをしているんですね」

「わざと?」 

「ええ」

「どうしてそのような真似を……」

「男にチヤホヤされたいからだと思いますよ」

「…………」


僕の答えを聞いたディアナは、全くもって理解できないとでもいうように言葉を失う。


「考え方の違いです。ハーボトル男爵令嬢は貴族の品格よりも男にモテるほうを選んだのです」


おそらくディアナは、貴族令嬢である自分自身に誇りと矜持を持っている。

だからこそ、わざと自身の価値を貶めるような振る舞いをするミアのことが理解できないのだ。


ディアナは小さく溜息を吐く。


「つまり、わたくしには女としての魅力が足りなかったというわけですね」

「そういうわけでは……」

「いえ。薄々気づいてはいたのです。彼にも「可愛げがない」と言われてしまいましたし……」


咲き誇っていた鮮やかな花がゆっくりと縮れていくように、彼女の表情が翳っていく。

 

「そんなっ!」


僕は思わず座っていた椅子から立ち上がる。

そして、ディアナの側に駆け寄り、彼女の右手を僕の両手でぎゅっと掴んだ。


「ディアナ様はとても愛らしいですよ! あなたの魅力に気づかない男が馬鹿なのです!」


読んでいただきありがとうございます。

次回は明日の8時に投稿……できたらいいなぁ。

(ストックゼロの自転車操業なので)


よろしくお願いいたします。

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