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第8話 思うからこそ

クリスマスまであと17日

 翌日、僕は咲希さんとデートすることになった。

 

 お互いの本当の気持ちに気づいて、気が楽になったかも知れない。

 

 それでも、僕の命は確実に終わりに近づいている。

 

「悠斗くんが死ぬときまで、一緒だからね?」

 

 咲希さんは、本当に心配性だな。

 

 そこが咲希さんの可愛いところだな。

 

 イルミネーションが煌めく秋葉原で、推し活も兼ねている。

 

「やっぱり、YSB49の奏手ちゃんの卒業コンサートのライブビューイングのチケット、取れてよかった」

 

「そりゃ、僕の知り合いが行けなくなったってキャンセル分が出たから」

 

 僕はそう言いながらライブ会場へと足を運ぶ。

 

 会場内は、多くのファンで埋め尽くされていた。

 

 僕と咲希さんは会場のスタンドエリアで待機した。

 

 会場内のチャイムが鳴り響く。

 

 観客たちは興奮の渦に包まれる。

 

「いよいよだね!」

 

「本当だ!」

 

 僕達は今か今かと待ちわびる。

 

「みなさーん! こんばんは!!」

 

 スクリーン越しのアイドルたちが僕達を出迎えた。

 

 ライブが始まった。

 

 これが、はじめて二人だけで過ごす時間。

 

 それを永遠にできるか、わからない。

 

 だけど、それでもこの命で精一杯生きてみようと思えば、楽しいものだ。

 

 アイドルグループの歌声が聞こえてくる。

 

 推し活に来ていたファンがペンライトやサイリウムを振って応援する。

 

「みなりん!!」

 

「あきまる!!」

 

 掛け声が響く。

 

 僕も声な限り応援し、咲希さんはハイテンションになる。

 

 僕はどこか嬉しかった。

 

 咲希さんが笑顔になることは、何よりの宝物だった。

 

「それじゃ、クリスマスシーズン恒例のキャンドルサービス、行ってみようかな?」

 

 え?

 

 彼女たちはいま東京ドームでコンサートを開いているよね?

 

 ここでキャンドルサービスなんて、

 

「実は、オンラインでもできちゃいます!」

 

 その途端、スタッフたちがキャンドルを持ってきた。

 

 まさか、ライブビューイングでキャンドルサービスができるとは思いもしなかったな。

 

 僕と咲希さんにもキャンドルが渡った。

 

「さぁ、全国のみんなにキャンドルが渡ったかな?」

 

 スタッフさんがキャンドルに火を灯す。

 

 なんとも幻想的な雰囲気になった。

 

「では、聞いてください。私、奏手最後のセンター曲<思い出のRequiem>」

 

 静寂の中、アイドルグループが新曲を歌い出す。

 

 その歌声の中、僕は咲希さんと出会った時を思い出す。

 

 千葉総合大学に無事合格し、入学式を終えたばかりの頃だった。

 

 入るサークルが決まらず、路頭で迷いそうになった時、僕は咲希さんを見た。

 

 流れるような美しい黒髪と、透き通る大きな瞳。

 

「あれ? 君もここに入ったばかり?」

 

 咲希さんが僕に気づいた。

 

「あぁ。僕はカメラマン系の職業につきたいから」

 

「そっか。私はコスプレモデルをやっているんだ。私は三島咲希。あなたは?」

 

「坂田勇斗です」

 

「よろしくね」

 

 こうして僕と咲希さんは出会った。

 

 そして、キャンドルサービスがクライマックスを迎える中、僕は咲希さんを見る。

 

 鮮やかなルージュを引いた唇がかすかに震える。

 

 もうすぐ僕がいなくなってしまうことをわかっているのに、僕を失いたくないのだと。

 

 僕もそれを覚悟している。

 

 だからこそ、大切に生きようと決めた。

 

「あぁー、今夜は楽しかった!」

 

「新曲に合わせたキャンドルサービスも良かったね」

 

「ほんとだね。あ、晩御飯私の奢りで!」

 

 今夜は咲希さんが奢ってくるれのか。

 

 どんなお店か楽しみだ。

 

「で、バーガークイーンか」

 

「ここのギガントパウンダーが絶品なの!」

 

 たまたま、バーガー店のクリスマスシーズンフェアでお得だったため、立ち寄ることになった。

 

 店内は西部開拓時代を思わせる雰囲気で、当時のダイナーを思わせる。

 

「悠斗くん、やっぱり生きてほしい」

 

 咲希さんが切に願いでた。

 

「どうして?」

 

「やっぱり大好きな人を、失いたくない……!」

 

 それは僕も同じだ。

 

 でも、それは僕にとって叶わない願いだから。

 

「僕も同じだよ。でも「わかってるよ」

 

 咲希さんが止めた。

 

「悠斗くんが、私に心配させたくなかったことを」

 

 そうなんだ。

 

 でも、

 

「僕はもう会えないかも知れない」

 

「だけど、それでも私は会いに行く」

 

 もう会えないかも知れないというのに、咲希さんの決意は揺るがなかった。

 

 それだけ、僕を愛してくれているんだ。

 

「わかった。一応入院先の病院の医師の名刺を渡しておく。底に書いてある住所が僕の入院先だ」

 

 僕は2枚もらった佐伯先生の名刺の1枚を咲希さんに渡す。

 

「東京大学附属病院って、国内最先端の医療を受けられる有名どころじゃない!!」

 

「僕の主治医は心臓外科医療のパイオニアなんだ」

 

 絶え間ない笑いが店内に響く。

 

 僕の僅かな命が、ほんの少しだけ輝いているように感じた。

 

 2日後、僕は咲希さんへの最後のクリスマスプレゼントを探しにタブレット端末でネット通販をしていた。

 

 今、僕は入院している。

 

 佐伯先生が、通販の荷物は私を通じて届けるようにしておくと言っているので安心だ。

 

「坂田さん、大丈夫ですか?」

 

 看護師さんが心配してくれた。

 

「心配ないです。僕はこれで良いんです」

 

 正式な入院が始まってから1日しか経っていない。

 

 それでも僕は、咲希さんへのプレゼントをじっくり選んでいる。

 

「悠斗くん!」

 

 咲希さんがお見舞いに来てくれた。

 

「身体は大丈夫?」

 

「平気だ。投薬を受けていれば当面は大丈夫だよ」

 

 言い忘れていたが、ここは東京大学附属病院の入院棟の病室。

 

 僕はその中でも個室でいさせてくれている。

 

 どうやら、佐伯先生が自分のポケットマネーで負担金の一部を出してくれている。

 

「でも、悠斗くんがもうすぐいなくなるなんて、考えてもなかったな」

 

 咲希さんは悲しげな声で呟く。

 

 僕を悲しませたくないと、心配してくれている。

 

「でも、来年のバースデープレゼントは用意できてるよ」

 

「なにそれ? 冗談?」

 

 咲希さんが僕の思いを冗談と言って受け流す。

 

 今はそれでいい。

 

 僕の身体がなくなっても、形を変えて君の側にいたいから。

 

「あ、今度のクリスマス配信で勇斗くんのプレゼントをラストで開封したいから、とびきりいいのをお願いね!」

 

「了解だ」

 

 一通り話し終えた咲希さんは僕のいる病室をあとにする。

 

 数分後に佐伯先生が来た。

 

「坂田くん、プレゼントで悩んでいるのかい?」

 

「はい。 バースデープレゼントではあれを送るように言いましたよね?」

 

「確かに。彼女の誕生日に送ると約束は守っている」

 

「ありがとうございます」

 

 僕はこれからを佐伯先生に語り始める。

真実の愛を貴方は知っていますか?

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