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第22話 クリスマス配信(後編)

クリスマスまで、後2日

 えりなさんは何故か不機嫌そうになった。

 

 無理もないか。

 

 咲希さん、あまり高級品は好まないからな。

 

『咲希さん、今年のクリスマスの為にパパにお願いして買ってもらったのに』

 

『えりなちゃん、私は高級品は好きじゃないの。あんまり値段が高いと吐き気が出ちゃうの。何度も言うけど』

 

 僕は苦笑いするしかなかった。

 

『それに、高いものは良いとは限らないよ。世の中には安くて美味しいものが落ち着く人もいるから』

 

 たしかに、それは言えてるな。

 

 事実を言うと、咲希さんは高級フレンチレストランのディナーコースで、胃腸炎を起こした逸話がある。

 

 いわゆる贅沢反対が生まれたきっかけで、高いものは口に合わないと豪語する理由。

 

「だからこそ君は安くて美味しいお店が好きなんだね」

 

 僕はコメントを書いて送信する。

 

『その通り! 高いお店は基本お断り! 安くて美味しいいつもの味に慣れているからね』

 

 咲希さん、しっかりしてるな。

 

『咲希さん、今度私の家で忘年会しません?』

 

 えりなさんは金持ちだから、豪邸で忘年会も良いかも。

 

 でも、僕はもうすぐ死ぬから意味はないか。

 

『あ、お金持ちのお家は落ち着かないからビスキュイでやりたい!』

 

『私も以下同文』

 

 ほっぷさんも咲希さんの言葉に同意した。

 

 それだけに、今回の配信は大いに盛り上がりそうだ。

 

「それじゃ、今夜は咲希さんの庶民派主義はクリスマス仕様かな?」

 

『悠斗さん、今度の晩御飯私が良いフレンチに……』

 

 えりなさんは、僕をからかう。

 

『えりなちゃん、悠斗さんは咲希さんのパートナーだから、寝取ってどうするの?』

 

 ほっぷさんのするどいツッコミに、

 

『悠斗くんは私のものだからダメ!』

 

 咲希さんは顔を真っ赤にして慌てふためく。

 

 姦しいことだ。

 

「まぁ、僕をパートナーにしてくれてありがとう、咲希さん」

 

 コメントを書いて送信する。

 

 すると、

 

『うぅ……、こっちこそありがとうね』

 

 咲希さんが照れ隠しに微笑んだ。

 

 こっちまで嬉しい気持ちになるよ。

 

 なんだか、心が温まる。

 

 そんな気分だよ。

 

「最近、咲希さんの肌が綺麗になっていくのが、嬉しいね」

 

『ありがとうね〜』

 

 咲希さん、なんだか嬉しそう。

 

 そう言えば、咲希さんは僕が死ぬことをわかっているから安心したけど、他のみんなはどうなるんだろう?

 

 僕はそんな気持ちになる。

 

「真彩さんは元気にやっていますか?」

 

『真彩ちゃんは元気だよ! 主宰としていつも頑張っているけどね』

 

 真彩さんも頑張っていることに、僕は一安心した。

 

 僕も心残りはない。

 

 後はプレゼント開封をまつだけだ。

 

 少しづつ体温が下がっていく。

 

 死ぬときが近い。

 

 でも不思議と不安はない。

 

『さぁ、みんなお待ちかね! プレゼント開封の時間ですよ!!』

 

 咲希さんたちのテンションが上がる。

 

「僕のプレゼントは特別だから、楽しみにしてて!」

 

 僕はコメントを書き込む。

 

『悠斗くん、ありがとう! まずは800系マニアさんから!』

 

 カメラマン仲間が送ったプレゼントを開封する咲希さん。

 

『うぉ! これは<新月のパンドラん>の主人公・広瀬まなちゃんのバトルコスチューム! Amazonの欲しいものリストに入れておいたやつを送ってくれたんだ!』

 

 流石800系さん。

 

 咲希さんのコスプレの好みを把握している。

 

『これ、前から気になった漫画で、コスプレしてみたかったやつだったの!!』

 

『もともと、エロゲが原作のコミカライズだから、人気が高いのも無理はないよ!』

 

 流石はえりなさん。

 

 インテリオタクお嬢様は伊達じゃないか。

 

 そう言えばビスキュイで出会ったときも気兼ねなく話してくれたしな。

 

 もう、心残りはないよ。

 

 何度も言うけど。

 

『さて、続いてはよしまるさんから!』

 

 咲希さんが小さな箱を開ける。

 

『おお! 日本一高いカップ麺!? いらないなぁ……』

 

 咲希さんがバツの悪そうな顔をする。

 

 そのカップ麺、確か5000円もする名店コラボ品だったな。

 

『あんまり高いラーメンは食べるとお腹壊しちゃうから、ほっぷちゃんにあげます』

 

『いいの!?』

 

 ほっぷさん、嬉しそうだ。

 

『プレゼントは基本高級品お断り! 安くて良いものしか受け付けません!』

 

 咲希さん、かなりシビアなんだね。

 

「まさか高級品お断りとは……」

 

 僕は苦笑いするしかなかった。

 

『気を取り直して、お次は爆速ヌックから!』

 

 咲希さんが開封すると、

 

『おぉ! 前から欲しかったサムライメイドのコスチューム!』

 

 咲希さんが目を輝かせた。

 

「よかったね」

 

 コメントを書いて送信すると、

 

『悠斗さん、私の誕生日は是非松阪牛のレトルトカレーを』

 

 えりなさんがプレゼントを要求する。

 

 僕はもう死ぬと言うのに、無茶を言うなぁ……。

 

『だから、高級品はだめなの!』

 

 咲希さんが止めに入った。

 

 なんだかんだで、楽しそう。

 

「僕のプレゼントはまだかな?」

 

 コメントを書いて送信する。

 

『もうちょい待って! 悠斗くんのは最後に開封(あけ)るから』

 

 そうか。

 

 僕のプレゼントは大トリなのか。

 

 それなら納得だ。

 

『ではでは、続いては浜霧さんから!』

 

 大きな包みを開封する。

 

「ちょっと待って! ニンテンドースイッチ2じゃない! 前々からやりたかったゲームがあったから、嬉しいな!!」

 

 咲希さん嬉しそうだな。

 

 その間にも、僕が死ぬ時は近づいている。

 

「ほっぷさんは僕がいなくなるとさみしい?」

 

 そんなコメントを書き込んだ。

 

『さみしいですよ! 咲希さんを支えてくれる人がいなくなったら、私たちは解散になるかも知れないですから』

 

 ほっぷさん、悲しそうだ。

 

 それだけに僕の死は大きな意味を持っていた。

 

『えりなさん、このシャンパン美味しいですね』

 

『えぇ! このシャンパンはボルドーで人気の祝い酒の一種でして』

 

 えりなさん、かなり金持ちだと僕は感心する。

 

『でも、私は1320円のワインで十分だよ?』

 

 咲希さんが愚痴るように言う。

 

 ははは、これはかなり深い話になりそうだ。

 

『では、最後に悠斗くんから!』

 

 いよいよ、僕のプレゼントが開けられる。

 

 緊張してくる。

 

『おお! これは良いお酒だ! 今度ビスキュイで出しますね!』

 

 それはよかった。

 

 もう、思い残すことはない。

 

「咲希さんへ、今までありがとう。またね」

 

 コメントを送信してアプリを閉じた。

 

 静寂が包む。

 

 僕は、携帯をシャットダウンさせた。

 

 時刻はもうすぐ9時。

 

「父さん、母さん、澪、そして、咲希さん」

 

 体の力が抜けていく。

 

「僕の魂は、ずっと一緒だよ」

遺言を遺す時、貴方は何を伝えたいですか?

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