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第13話 命のリミット

クリスマスまで、後11日

 夜、僕は澪の言葉が気がかりになった。

 

「好きな人と喧嘩したらすぐに謝りなさい! 特に兄さんのように命が短い人ならなおさらだよ!」

 

 咲希さんに謝れ、か……。

 

 僕は携帯の電源を入れてメールを書いた。

 

「咲希さんへ。

 

 この前は本当にごめんね。

 

 君の気持ちを考えずに高いお金をかけてしまったことを悔やんでいる。

 

 余計なお世話だったかも知れないけど、これからは君を大切にするよ。

 

 それじゃ、おやすみ」

 

 僕はメールの送信を予約した途端、発作が襲った。

 

 苦しい感覚と激しい動機が、波状攻撃のように襲いかかってくる。

 

 僕はすぐにナースコールを押した。

 

 そして、僕は意識を手放した。

 

 気がつくと、僕はいつの間にか幽体離脱をしていた。

 

「やれやれ、こういうサービスは一度だけにして欲しいな」

 

 眼の前には死神の男がいた。

 

「僕はどうなるのですか?」

 

「一時的だが、意識を失った状態だ。看護師たちが集中治療している。まぁ、担当医の判断じゃ、6時間くらいで意識が戻る」

 

 死神は詳細に僕のことを書き留めていた。

 

「そこまでしてくれるんだ」

 

「まぁ、気にするな。君の愛する人とは和解も出来る」

 

 死神はそう言うと僕をある場所へと連れて行ってくれた。

 

 そこは、咲希さんの自宅マンション兼オフィス。

 

 咲希さんは自宅で事務作業をしていたんだ。

 

 すると、咲希さんの携帯に僕からのメールが届いた。

 

「悠斗くんから?」

 

 メールを読んでいる。

 

「バカね。私のことをそこまで気遣わなくて良いのに……」

 

 咲希さんは泣いていた。

 

 もうすぐ僕がいなくなることをわかっている。

 

 それでもずっと一緒にいたいという気持ちが溢れていた。

 

「そろそろ戻るぞ、懸命な処置が功を奏したようだ」

 

「そうだね」

 

 そう言うと僕は死神の案内で自分の体へと帰った。

 

「気づいたか!」

 

 父さんたちが僕の急変を受けて駆けつけたようだ。

 

「父さん、みんな……」

 

「急に何があったかと思って心配したんだ。でもよかった」

 

 父さん、心配してくれてありがとう。

 

 でも、僕の命は明日で終わるんだ。

 

 そう思うと、少しさみしい。

 

「鎮静剤投与と心臓マッサージが遅かったら、君の命はなかったよ」

 

 佐伯先生が僕を心配してくれた。

 

「ありがとうございます。それで、通販で頼んだ品は?」

 

「すでに、私が君の名義で指定住所まで届けておいた。これで君の思い残すことはない」

 

 流石は佐伯先生。

 

 頼もしい僕の主治医だ。

 

「それで、君にとっては朗報とも言えるかも知れないが、三島さんが君に会いたいと言ってきてね。まぁ外出許可もそこで出しておく。

 

 え、どういうことなんだ?

 

 咲希さんが僕に合いたがっている?

 

 僕は少しだけ戸惑いを隠せなかった。


 家族と佐伯先生が去った後、僕はNetflixである配信限定映画を見る。


「愛ゆえに星は歌う」


 七夕の夜、新潟県の山奥、燕三条の奥深い森で、陣平は一人で星を眺めていた。

 二十八歳の彼は、地元の農家を継ぎ、静かな日常を送っていたが、心のどこかで何か特別な出会いを求めていた。

 織姫と彦星の伝説が語られるこの日、空は満天の星で輝き、流れ星が一つ、二つと横切った。

 突然、森の奥から奇妙な光が閃いた。

 陣平は好奇心に駆られ、懐中電灯を手に進んだ。

 木々の間を抜けると、そこに倒れていたのは、美しい少女だった。

 銀色の髪が月光に輝き、肌は透き通るように白く、瞳は深い青。

 彼女の体は人間のようだが、耳が少し尖り、背中から微かな光の粒子が舞っていた。

「エイリアン……?」

 陣平は息を呑んだ。

 少女はゆっくりと目を開き、陣平を見て微笑んだ。

「セレナ……私の名前はセレナ」

 彼女の声は、頭の中に直接響くような不思議なものだった。

 陣平は驚きながらも、彼女を助け起こした。

 セレナは遠い星から来たエイリアンで、故郷の惑星から逃げてきたという。

 言葉は通じなかったが、セレナのテレパシー能力で、心が繋がった。

 彼女の文化では、愛は星の歌のように永遠に響くものだった。

 翌日から、二人は山小屋で暮らすようになった。

 陣平はセレナに日本語を教え、彼女は故郷の星の物語を語った。

 言葉の壁はあったが、ジェスチャーと心の交流で乗り越えた。

 セレナの文化では、触れ合うことで感情を共有する習慣があり、陣平は彼女の手を握るたび、温かな光が体を包むのを感じた。

 夏の夜、二人で川辺を歩き、蛍の光を追いかけた。

 セレナは地球の美しさに感動し、陣平の優しさに心を奪われた。

「陣平、あなたの目は私の故郷の星のように輝くわ」

 やがて、二人の愛は深まった。

 文化の違いが試練となった。

 セレナの種族は感情を抑制し、論理で生きるが、陣平の情熱的な愛情表現に彼女は戸惑いながらも魅了された。

 陣平はセレナのために、地元の祭りで織姫の衣装を作り、七夕の願い事を書いた短冊を一緒に飾った。

「永遠に一緒にいられますように」

 セレナの瞳に涙が浮かんだ。

 初めてのキスは、星空の下で。

 セレナの体から光の粒子が舞い上がり、二人は一体となった。

 しかし、幸せは長く続かなかった。

 セレナの故郷から追手がやってきた。

 彼女は王族の娘で、政略結婚を拒否して逃げてきたのだ。

 追手は三人のエイリアン戦士で、宇宙船から降り立ち、山奥を包囲した。

 彼らの武器は光のビームを発射する銃で、森を焼き払おうとした。

 セレナは陣平に逃げるよう言ったが、彼は拒否した。

「お前を守るよ。愛ゆえに。」

 スペクタクルな戦いが始まった。

 陣平は農家の知識を生かし、トラップを仕掛けた。

 山の地形を知り尽くした彼は、追手を誘導し、崖っぷちで一人を転落させた。

 セレナはテレパシーで敵の心を混乱させ、陣平の援護をした。

 二人は連携し、光のビームを避けながら反撃。

 陣平は斧を手に、敵の宇宙服を切り裂いた。

 激しい爆発音が山に響き、森が炎上した。

 セレナの力で雨を呼び、火を消した。

 最後の追手は強敵だったが、陣平の決死の突撃で倒した。

 セレナの頰に傷がつき、陣平の腕が血まみれになったが、二人は抱き合い、勝利を分かち合った。

 戦いの後、セレナの故郷から通信が来た。

 彼女の父王は、娘の選択を認めた。

 陣平とセレナは結婚した。

 新潟の山で小さな式を挙げ、星の歌をBGMに誓いを交わした。

 セレナの体は地球に適応し、二人は子宝に恵まれた。

 最初の子は男の子で、銀色の髪と陣平の目を持っていた。

 二番目は女の子、セレナのテレパシー能力を継いだ。

 数年後、二人は家族で七夕を祝った。

 子供たちが短冊に願いを書く。

「お父さんとお母さんがずっと幸せでありますように。」

 陣平とセレナは手を繋ぎ、星空を見上げた。

 愛ゆえに、星は永遠に歌う。


 

「これが、僕の叶わない願いなのかもな」


 そう言うと僕は泣いた。

 

 もう少しだけ生きていたい。

 

 ただ、それだけの理由だった。

永遠の愛は、時を超える。

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