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第11話 最初で最後のデート(後編)

クリスマスまで、あと13日。

 見終わったあと、僕と咲希さんは近くのコーヒーショップで一息ついた。

 

 咲希さんはホットコーヒー、僕はレモネードで喉を潤す。

 

「そう言えば勇斗くん、私へのプレゼント決まった?」

 

 咲希さんがこんな事を言う。

 

 勿論と僕は首を縦に振る。

 

「もちろん。とびきりいいやつを選んだよ!」

 

 そう、僕は通販サイトでとびきりいいのを選んだ。

 

 バースデープレゼントは伏せておくけど、それなりに良いものをクリスマスプレゼントに選んだ。

 

「それでなに?」

 

「それはお楽しみということで」

 

 僕は笑って誤魔化した。

 

 そうだよ。

 

 誕生日プレゼントならまだしも、クリスマスプレゼントは伏せておかないと、サプライズじゃなくなるから。

 

 なんとか誤魔化しておかないと。

 

 僕はとりあえず、カメラの調子を確認する。

 

「あ、撮影ですか?」

 

「だめ?」

 

「いいよ。今回は特別サービス!」

 

 ようやく撮影ができる。

 

 すると、雪がちらつき始めた。

 

 店を出ると、夕闇に染まった町並みとイルミネーションが雪とのコラボロケーションを生み出している。

 

 これは最高の撮影タイミングだ。

 

「それじゃぁ、いきますよ!」

 

「OK!」

 

 僕は咲希さんにポーズをお願いする。

 

 咲希さんはギャルピースで可愛くポーズを取る。

 

 僕はそれを写真に収める。

 

「うまく撮れた?」

 

「バッチリ」

 

 僕は咲希さんと一緒に次のポイントへと向かった。

 

 イルミネーションアーチが、淡い光を放っている。

 

 そこに粉雪が降っているのも相まって、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 

「じゃぁ、顔アップで!」

 

「了解、咲希さん」

 

 僕はできるだけ近づいて、咲希さんの顔とイルミネーションが両方写るような構成にする。

 

 咲希さんも、大きく口を開けて、雪を食べるかのような雰囲気を作る。

 

 僕はそのタイミングでシャッターを切る。

 

 歯の治療痕が少しきになるけど、そこは加工アプリでなんとかしますか。

 

 雪が段々強まっていく。

 

 少し早めのホワイトクリスマス。

 

 僕と咲希さんは近くのホテルで一夜を明かす。

 

 夕食は、黒毛和牛のステーキを始めとしたディナーバイキング。

 

「こんな贅沢な晩御飯は、二度としないでくださいね?」

 

 咲希さんに釘を差された。

 

 仕方ないよ。

 

 僕の奢りなんだから。

 

 僕は黒毛和牛のローストビーフを皿に取る。

 

「あ、私の分もお願い!」

 

 咲希さんがせがんできた。

 

 仕方ないなぁ。

 

 僕はそう言いながら料理を皿に盛り付けた。

 

「持ってきたよ」

 

「ありがとう! でも私は庶民だから高そうなものはやめてよね?」

 

 咲希さんは長野県の一般な家庭から成り上がったキャリアウーマンだね。

 

 そう来ると思って、コストパフォーマンスが良さそうな料理をいくつか持ってきている。

 

「そうそう。ステーキは安いお肉で十分だし、ローストビーフとかはまっぴらごめんだわ」

 

 食にもこだわるなぁ。

 

「でも、高い料理を食べると後で胃もたれを起こしちゃうの。悠斗くん、後で胃薬お願い」

 

 なんだか、お使いを頼まれた気分だ。

 

 それでも、僕は咲希さんを全力で愛することを誓った。

 

 たとえこの命が燃え尽きたとしても。

 

 2周目に僕はクリスマス限定の地鶏を使ったローストチキンレッグを1本づつ取り分けて咲希さんのいるテーブルへ持ってきた。

 

「あ、これ千葉県のハーブ鶏を使った贅沢ロティサリーですね? 前々から気になっていたんですよ!!」

 

 そうだったのか。

 

 てっきり贅沢はしないと思っていたんだけど。

 

「でも、長野県にもブランド地鶏がありますので、地産地消を大事にするブランドが好きなんです!」

 

 そうか。

 

 だから食に拘るのは、ちゃんと地産地消というスローガンに沿っているかを見極めているのか。

 

 そう言えば、仕事の付き合いで咲希さんを食事に誘った時、

 

「池袋のガチ中華で、薬膳麻辣湯のお店があるんだけど?」

 

「あぁ、追加トッピングで女の子にも人気のあるお店? 悪いけど、そういうの好きじゃない」

 

 そこで僕は「横浜の家系とかは?」と言ってみたら、

 

「じゃぁ、このへんで美味しいお店を教えて」

 

 と、食いついてきた。

 

 やっぱり、いつもの味のほうが安心するんだなと、感心してしまう。

 

「あ、火鍋も良いかも? この辺に辛くて体に良い火鍋のお店があるから!」

 

 そうか、火鍋も悪くないなと僕は思った。

 

 そう、咲希さんは高級料亭での接待も断るくらい庶民的で親しみやすい人。

 

 過去に、東北新幹線のグランクラスのチケットを取ろうとすると、

 

「グランクラスはだめ! 普通の席かグリーン車で!」

 

 と止められてしまう。

 

 根本の理由は、

 

「ファーストクラスに座るとなぜか落ち着かないの。だって贅沢すぎて逆に乗れた気がしないから」

 

 とのこと。

 

 やっぱり贅沢が苦手なんだな、と思う場面もあった。

 

「やっぱり咲希さんは、」

 

「そう、贅沢こそが最大の敵! 高級料亭とかは基本厳禁! やっぱり経営者は親しみさすさと信頼が一番! 高級店やブランド小物は私の邪魔!」

 

 と断言する咲希さん。

 

「そう言えば、まえにブランドバッグをプレゼントされたあとどうなったの?」

 

 咲希さんにこんな質問をする。

 

「勿論、質屋へ売りました! ブランドバッグは必要ありません! ああいう高見せの小物は、売ってお金にしたほうが私にとってはよっぽどマシです!」

 

 そうだった。

 

 咲希さんは、高級品を質屋へ売ってお金にして撮影会の運営に回すんだった。

 

 事実、10万円もする高級カタログギフトを「重すぎるから」といって、モデル仲間の一人に渡したというエピソードをちさきさんから聞いたな。

 

 なにはともあれ、咲希さんはそういう庶民主義を貫く信念を持っているんだなと、僕は感心した。

 

「でも、大阪ワールドジャンボリーでの朝ごはんは豪華すぎて胃もたれを起こしちゃったなぁ」

 

 まぁ、贅沢なものを食べるとお腹を壊す人ってたまにいるよね。

 

「そういえばさ、<魔術海戦・暁の咆哮>映画版のTVエディションの第3話が思った以上に激戦だったの! TVシリーズ版でも屈指の名シーンだったけど、映画版のクオリティが半端ないの!!」

 

 咲希さんがグイグイと近寄った。

 

 僕は思わずドン引きしてしまった。

 

「さ、咲希さん、コミケに行くんですか?」

 

「当然! 推しのためならどこへでも! 贅沢は推し活の敵ですから!!」

 

 ははは……。

 

 贅沢は推し活の敵ですか。

 

 でも、僕は一安心した。

 

 推し活のために贅沢はしない。

 

 それは、オタクなら誰もが貫くであろう信念に似たもの。

 

 僕はその時この世にいなくても、魂はずっと一緒にいたいと、僕はそう思った。

 

 それに、僕の遺骨は形を変えて咲希さんのもとへ帰るのだから。

推し活のために、何をしますか?

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