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第十話 地下

カンカンカンと靴音が暗い空間に響く。

どこまでおりたのだろう、階段の終着点には扉が1つあった。


「百月。後ろにいろ」


千桜は腕で百月を止めると鴉飛に視線を向けた。


「俺が先に行きます」


鴉飛は千桜に頷き、傍にさしている刀に手を置いた。


「なら僕は百月さんと甘美瑛さんの後ろにいます」

「了解」


三人は顔を見合わせると頷く。

それを合図に千桜がギギギギと扉を開けた。

部屋の中は、白く家具が一つもないただただ広い部屋だった。

その部屋の真ん中に神社にいたあの白いロープの男が立っていた。

ロープの男は、ドアが開く音に気がついたのか、ゆっくりとこちらを振り返り片頬を上げた。


 「まさかここまで来るとはね」


ニンマリと満足そうに笑う男に千桜は眉を顰めた。


「あなたは⋯何者なんですの?」 

「目的はなんだ」


百月の言葉に千桜は続けた。


「我は水蛭神ひるこ。「日の御子」で尊い「太陽の子」。そして今の人間界に新しい日を差す神の子だ」


水蛭子は嬉しそうに笑う。


「何をするつもりですか?」

  

鴉飛が尋ねると水蛭子はニヤリと笑い両手を空にかざした。


「人を虐げる者に裁きの鉄槌を下すのです!どうです?貴女がたも?私のように何の罪もないのに怒鳴られバカにされ笑われ不当な扱いをする奴らが蔓延る人間あの世界を待っ更にし新しい世界を創るのです。ただ、普通に生きてい不当な思いをしない世界を一緒に作りましょう」


水蛭子は四人に近づくと手を差し伸べ満面の笑みを浮かべた。すると、百月はスタスタと水蛭子に近づくとピシャリとその手を叩いた。


「あなたみたいに人の命を何とも思わないバカに協力するわけないですわ。あなたの頭の中はお花畑なんですの?」


キッと百月は水蛭子を睨みつけた。


「命?命だぁ?この九泉きゅうせんにいる奴らすでに命なんぞ終わっている。ここは黄泉の国!死んだ者が閻魔に判決をしてもらうまでの仮の場所だ!そんな奴らを神の私がどう使おうと勝手だろう。私は命を再利用してやったんだ。むしろ感謝されるべきだ!それをお前たちが⋯お前たちが邪魔をしやがって!」


水蛭子の言葉に戸惑っている千桜と百月の目の前で水蛭子の声はみるみる低くなり、その体や両腕両足はブクブクと膨れ筋肉質になりその頭からは角が生えた。水蛭子は百月にその腕を振り上げた。


「百月!」


千桜は庇うように百月を抱きしめた。その千桜の前に剣を抜いた鴉飛が割って入りその剣で爪を受け止めた。


「これは天罰なのだよ!私に不当な扱いをした奴らも!お前たちも!」

「天罰だぁ?お前のものさしで測るんじゃねぇよ!」


千桜は身をかがめると水蛭子の足を払った。バランスを崩したに鴉飛は刀を突き立てるが水蛭子は千桜の腕を掴み鴉飛に向かってぶん投げた。千桜は鴉飛と重なるようにして地面を転がり壁に当たり止まった。


「っー!!⋯鴉飛さん大丈夫ですか?」

「はい。望月さん怪我は?」


鴉飛に聞かれ千桜が首を横に振った時、爪を突き立てた水蛭子が宙から降ってきた。しかし、その刃が届く前に千桜は目を見開き右に転がり刃から逃れた。


「望月さん!」

「無事です!んにゃろぉ!」


千桜は水蛭子の左側から回し蹴りをした。しかし、水蛭子はニタリと笑い千桜の足を掴んだ。


 (しまった!)


そう思った時、ふわりと赤い物が降りてきた。それは左の頭部から角を生やし百月だった。百月は落下の勢いで千桜を掴んでいる水蛭子の手に薙刀を突き刺した。


「ぐわぁぁぁぁ!」


水蛭子は千桜を離すと一歩下がった。


「ナイス百月!助かった」


百月は何も言わずにニコリと笑みを浮かべた。


 (てか、角があるっうことはまだ完全に呪いは解けてないのか?⋯いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない)

「鴉飛さん、水蛭子こいつを倒す方法ってありますか?」


千桜が問いかけた時、千桜は百月の腕を掴み引っ張った。そこに水蛭子の拳が叩きこまれ壁に巨大な穴をあけた。


「あんなの喰らったタダじゃすまねぇぞ」

「そうで⋯しょうね」

「甘美瑛さん!」


鴉飛の叫び声に視線を向けると、水蛭神の腹が割れ中から白い手が現れると驚いた顔をする甘美瑛を掴みそのまま飲み込んだ。


「甘美瑛さんが!」

 (落ち着け。考えろ⋯そうだ!)


千桜は走り出すと水蛭子のパンチをかわすと水蛭子の肩に手を置きそのまま飛び越えると地面に降り立ち水蛭子の背中に蹴りを入れた。水蛭子は振り返り千桜は見た。


「百月!鴉飛さん!背中を!やつの背中を蹴ってください!なるべく立った状態で!」

「承知しましたわ!」


そう言い百月が水蛭子の背中を蹴り飛ばすと水蛭子は吹き飛び壁にめり込んだ。


「やりすぎだ!」


千桜がキッと百月を見ると百月は何処吹く風というような表情を浮かべていた。


「あら、加減しろとは言われてませんことよ」

 (こいつは⋯実は性格悪いぞー)


スンとしている百月に千桜な苦笑いを浮かべた。その時、ヤケクソになったのか水蛭子が2人に向かって突進してきた。千桜は百月の前に立ち身構えた時、鴉飛が水蛭子の背後にバサりと漆黒の翼を羽ばたかせ降り立つとそのがら空きの背中を蹴り飛ばした。


「ぐわぁぁぁぁ!」


水蛭神は悶えると再び腹が真っ二つに割れ中から甘美瑛が転がり落ちた。再び、取り込もうとした水蛭子の腹を百月が蹴りがめり込みそのまま水蛭子は吹き飛んだ。


「同じことはさせませんわ」

「ナイス百月!甘美瑛さん!大丈夫ですか?」


千桜は咳き込む甘美瑛を覗き込んだ。


「うん⋯ゲボゲボっ⋯大丈夫だよ。ありがとう」


甘美瑛は数回、咳き込むと少し青白い顔で千桜を見上げた。


「お見事です望月さん」

「背部叩打法って、喉に物を詰まった時に吐かせる方法なんだが⋯まさか効くとはな⋯っ!なんだ!」


グラっと地面が揺れ4人の体を揺らした。片膝をつき顔を上げると、地面を殴った水蛭神の前に六体の泥人形がゆらゆらと体を揺らしていた。


「多勢に無勢てか?卑怯なことしやがって」

「あら、それを言うならこちらも多勢に無勢ですわよ?」


百月の言葉に千桜はスコッと倒れた。


「お前なぁ!どっちの味方なんだよ!」

「あら、私はいつでも私の心の味方ですわよ」

「あのなぁ」


困ったように笑みを浮かべる千桜をクスクスと笑いながら鴉飛と甘美瑛は見ていた。


「さて、どーします?」


スっと笑みを引っ込めると千桜はこちらの様子を動きを伺うように動かない敵たちに視線を向けた。


「私と鴉飛さんで水蛭子のお相手をしますので、武器なしの千桜さんはあの泥どものお相手をお願いしますわ」

「あのー百月さぁん。とこどころでお口が悪ぅございませんかぁ」

「あら気のせいですわよ」

「⋯さようで」


ガクッと頭を下げる千桜に鴉飛と甘美瑛は再びクスクスと笑いをこぼした。


「ならすぐ終わらせてやりますか」

 千桜はポキポキと指を鳴らすとニヤリと笑った。

 (先手必勝!)


千桜は泥人形に走りよりそのままぐるっと泥人形に足を回しその頭を吹き飛ばした。サラサラと二匹はそのままサラサラサラと砂に変わり崩れ落ちた。


「くわぁぁ」


口を大きく開き威嚇するとあけた口のまま千桜に襲いかかってきた。千桜は腰から短刀を抜くと1匹の胸に短刀を突き立て左からきたもう1匹に拳を胸に叩き込んだ。2匹も他のと同じようにサラサラと砂の山に変わっていった。それと同時に残りのうちの1匹が他のと同じように口をあけ背後から襲いかかってきた。千桜は短刀を咥えさせるとそのまま短刀を下に下げた。体が咥えている短刀と共に下がった体に千桜はかかと落としを食らわせた。


「うっし。残り1体·····あれ?」


当たりを見渡すとフラフラと泥人形は薙刀を構えてるいる百月に向かって歩いて行っていた。


「百月!」


名前を呼ばれた百月は振り返るがフラフラと近寄った泥人形を薙刀を振り下ろし真っ二つにした。


「逃さないでくださいまし」

「悪い悪い」


「ふん」と鼻を鳴らし言う百月に千春は頭に手を置きながら言った。


「でもこれで、一対三だ」


ニヤリと笑いながら千春が水蛭子を見るが、その顔には不気味な笑みが浮かんでいた。水蛭子はブツブツと何かを唱えた時、背中に激痛が走った。振り返った千春は目を疑った。そこには、鬼の姿に戻った百月が鋭い爪に血を滴らせながら立っていた。


「なっ?!」

「「望月さん!」」


鴉飛と甘美瑛が叫ぶと甘美瑛はすぐに千春に近づき持っていた小瓶を口元に近づけた。


「望月さん!これを!」


甘美瑛に近づけられた小瓶から冷たい液体が口に含まれた。


「飲んでください。頑張って!」


意識朦朧とした中で千春はゴクリと液体を飲み込んだ。すると、痛みがスーッと引いていった。


「甘美瑛さん!」


その耳に切り裂くような鴉飛の叫び声が聞こえた。意識がハッキリした千桜は甘美瑛を横に押しのけ短刀で百月の爪を受け止めた。


「っ!おい!水蛭子!彼女に何をした!」

「なに、まだ解けていない呪いを再び発動させたまでです」

(呪いが解けてない?⋯そっかあの書類に書いてあったことやってなかったな)


苦笑い似た笑みを浮かべていると再び、その爪を切りつけたが、サッと身を捩り千桜は避けた。


「同じ手ばかりじゃ当たらないぜ」


ニヤリと笑う千桜は百月の腕を掴むとグイッと引っ張り抱きしめた。しばらく抵抗していた百月は 一瞬、大人しくなり次の瞬間、千桜を突き飛ばし飛び上がると壁を蹴りあっという間に千春の頭上を飛び越えて行った。


「おい、マジかよ」


思わず千春の伸ばした指先をかすり飛び越え鴉飛の背後に立ちその腕を振り上げた。


「鴉飛さん!」


千桜が叫んだ瞬間は振り返り後ろに身を反らせ一撃をかわし、再び振り上げられた腕を漆黒の翼を羽ばたせかわしたが、そこに水蛭子が拳で地面にたたき落とした。


「ぐはっ!」


鴉飛はそのまま動かなくなった。


「サァドウスル?アトハオ前ダケ⋯」 


余裕な表情を浮かべ水蛭子の顔が見る見る驚きの表情が浮かんだ。その胸には、1本の貫かれていた。


「残念ですわね。2人ですわ。千桜さん!」


水蛭子の背後から百月が冷たく水蛭子に言うと千桜の名前を叫んだ。千桜は百月が持っていた薙刀を手に動けない水蛭子に近づくとその刃を振り下ろした。ゴロゴロと体から離れた水蛭子の頭は地面を転がった。


「ははははは。お前ら!いつか後悔する!後悔するぞ!はははははははは」


切られた水蛭神高の首は高笑いをすると、体ごと灰色になり、やがてまるで砂の山のように脆く崩れ落ちていった。やがてそこには灰色の砂の山ができた。と同時に、ドドンと音と共に天井からパラパラと細かい破片が落ちてきた。見上げると天井が崩落しはじめていた。


「逃げましょう!」


千桜が振り返ると、鴉飛が体を起こしこちらに向かって叫んでいた。全員、部屋を飛び出し施設の割れた窓から飛び出した。振り返ると今までいた施設は瓦礫の山になった。


「危ねぇ」


息を切らしながら千桜は 呟いた。


「皆さん、怪我は?」


そう言いながら歩み寄る鴉飛に千桜と百月は首を横に振った。


「鴉飛さんこそ⋯。やりすぎだぞ百月」

「敵を騙すにはまずは味方からと言いますわ。それに私は鴉飛さんに傷つけるつけるつもりは毛頭ありませんでしたわよ」

「あのなぁ⋯」

 「まぁまぁ」


鴉翔は2人の間に苦笑いを浮かべながら入った。


「僕は甘美瑛さんのおかげでこのとおりですから」


と両手を広げて見せた。


「お2人もナイス連携でした」


鴉飛の言葉に答えようとしたその時、視界にジジジっとノイズが走り千桜は顔をおさえた。


「千桜さん⋯手が⋯」


百月に指さされ恐る恐る自分の手を見るとまるでガラスのように向こうの景色透けていた。


「百月は?!」


千桜がガバッと顔を上げると、透けていない自分の手をまじまじと見たあとに不安そうな表情で千桜を見ていた。


「よかった。お前は大丈夫みたいだな」

「でも⋯でも⋯」


涙をポロポロと零しながら百月は千春を見上げていた。


「なーくーな。もう会えないって決まったわけじゃないだろ。ほら、これ」


千桜はお守りをわたした。すると、百月は首を横に振った。


「これはあなたに差し上げた物です。千桜さんが持っていてください」

「そっか。なら」


そう言うとお守りの中から二つに割れた勾玉を左手でわたした。


「俺とお前を救ってくれた勾玉だ。きっと俺がいない間にお前を守ってくれる」


そうしている間にも千桜の体は全て透け夕日にキラキラと輝いていた。


「また⋯またきっと会いましょう」

「あぁ。必ず」


そう言い千桜の意識は闇に消えていった。

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