雑文ラノベ「転田ころんのスローライフに敗北中っ!」
転田ころんには恋人がいない。いや、昔はいたのだ。そう、333年前くらいには。
因みに333年は誤植ではない。もしかすると2、3年は計測をミスっているかも知れないが誤差範囲だろう。
そう、今の転田ころんには恋人がいないのである。←大事な事なのでくり返した。
さて、この導入部で大抵の人は『人は333年も生きられない』と突っ込んだことだろう。だが、もう一度読み直して欲しい。一体どこに転田ころんが『人間』だと説明されているのか?
そう、実は転田ころんはエルフだったのだっ!そしてエルフと言えば長寿で美人と相場が決まっているのであるっ!
つまり転田ころんは『可愛い』のであるっ!←大事な事なので強調しました。
しかし可愛い過ぎるのは時に罪となる。なので333年前、世界は転田ころんを巡って手作り石鹸で体を洗う『転田ころん争奪戦』が起きてしまったのだっ!世に言う戦国時代である。
そしてこの時、転田ころんは最愛の恋人を戦いによって失った。以来悲しみにくれた転田ころんは岩屋に閉じこもり世界は光を失ったのである。
ああっ、女神よっ!何故に我らをお見捨てになられるのかっ!
人々は悲観にくれたが後の祭りだ。故に人々は自身の精神を守る為に転田ころんの存在そのものを忘れようとした。
そう、女神は元々存在していなかったのだと自身に言い聞かせ心の安定を図ったのである。これが世に言う『神仏毀釈騒動』である。
これによりこの世界から転田ころんがいた事実は抹消された。転田ころんを崇める神殿は取り壊され、書物は焼かれた。
また、転田ころんからあやかって、『ころん』と名前を付けられた子供たちは改名を強制された。これによりこの世から『ころん』という名は消えてなくなったのである。
ただ何故かお菓子の名前に『コロン』と付けられたものはあったが、これは人の名前でないから見逃されたのだろう。
そして333年の時が過ぎ現在。当時の人間は誰一人としてこの世に存在していない。それどころかひ孫の代ですら全員が鬼籍に入っている。
それでも子供に『ころん』という名前は付けてはいけないという風習は残っており、この世に『ころん』という名前の子はいなかった。
で、さすがに長寿なエルフと言えども333年も岩屋に引きこもっていると飽きるらしい。なので333年ぶりに裏口から表に出てみた。
するとそこは長大なコンクリート製のビルが無数に立ち並び、これまた333年前には考えられない程の数の人々がせわしなさげに歩道を歩いていたのだった。
因みに転田ころんが引きこもっていた岩屋の前には『平将門首塚』という石碑が立っていた。そう、333年の間にどこかで別の話と混ざってしまったのだろう。
かくして転田ころんは333年ぶりの外の世界を探索すべく歩き出した。そしてまず目指したのが伊豆の温泉である。
そこで身を清めた転田ころんは次に腹が減っては戦は出来ぬ?と言う事で駅前で営業していたタイ料理を提供するキッチンカーにて『カオソーイ』というカレーラーメンみたいな料理を食した。
その333年前にはなかった味覚に転田ころんは満足げである。だが最初のひと口目は辛さに顔をしかめたのは内緒だ。
因みに料理の代金は葉っぱを変化させて払った。まっ、この行為は普通に紙幣偽造だが『ゴンきつね』と違い、現代の最新技術をもってしてもエルフの魔法は見破られないようである。
こうして腹を満たした転田ころんは次に原宿というところを訪れた。これは伊豆にて若い女の子たちが原宿のクレープの話をしていたのを聞いて興味を持ったからだ。
しかしいざ原宿に着いてみると転田ころんは辟易した。何故ならばやたらと男たちが名刺片手に声をかけて来たからだ。つまり『スカウト』である。
まぁ、転田ころんは可愛いのでモデルへの勧誘は致し方ない事ではあるが、あまりにもしつこいので転田ころんはそれらの男たちを魔法で女性用の『スカート』に替えて古着屋に売っぱらってしまった。
そしてその代金で転田ころんはクレープの代金を支払い原宿を堪能した。
そしてまたまた転田ころんは新たな情報を入手する。なんでも東北の地には『ドライブイン』というトラックドライバーをメインの顧客とした大衆食堂があり、そこの『モツ煮込み定食』が絶品であるという聞いたのだ。
なので当然転田ころんは福島県の二本松市にあるというそのドライブインに跳んだ。因みにこの移動には魔法が使われていたので移動は一瞬です。
でもよく場所が判ったな?えっ、グーグル先生に聞いたら一発だった?あらら、333年も引きこもっていたのにグーグル先生を知っているのか・・。
さて、今でこそドライブインは一般の顧客もいるがやはりメインの客層はトラックドライバーたちだ。そんなむさいおっちゃんたちに混ざって可愛い転田ころんがご飯を食べていたら男たちが群がってくるのは致し方あるまい。
だが、これらの運ちゃんたちは原宿のスカウトマンたちと違い嫌らしくはない。それどころか転田ころんの食べっぷりに感心して自身のオススメメニューを奢ってくれた程である。
そして転田ころんはそれらを全て平らげてしまった。おかげでお腹が少しぽっこりしてしまったくらいである。
さて、運ちゃんたちは仕事の途中でドライブインに立ち寄っているので時間と共に人は入れ変わる。そんな中、夜遅くにひとりの女性がドライブインに入ってきていきなりビールを注文した。そして一気に飲み干す。
まぁ、ドライブインとは言っても別に自動車を運転しなければ酒は提供できる。仮に飲んでしまっても酒が抜けるまで車中泊をすれば法的には問題ない。
そんな彼女に興味を覚えた転田ころんは席を移動し彼女の差し向かいに座り直した。そんな転田ころんに女性は警戒したようだが、転田ころんが『ジャックダニエル』を注文しそれを彼女にも勧めると忽ち警戒を解いた。
そんな彼女に転田ころんは駄目押しとばかりに福島では売っていないはずの『倉吉シェリーカスク』も差し出す。
こうなってはもう彼女は降参状態だ。なので酒の勢いもあったのだろうが自身の事をあれこれ喋りだした。
曰く、自分の名前は神輿 恋菜 (みこし こいな)で、マイハニーは白いフェレットであるとか、ウチの会社はブラック過ぎるっ!とか、パイソンカマムシって虫じゃなかったんだよね、とか話題には事欠かない。
勿論、転田ころんも負けじと喋りだす。と言うかこのふたり互いに一方的に喋るだけで相手の話を聞いていないんじゃないだろうか?
でもまぁ、酔っ払いとはそうゆうものであろう。まぁ、楽しければ全てよしだ。
かくしてその夜、転田ころんと神輿 恋菜は満天の星空の下、トラックの荷台の上でサントリーのウイスキー『山崎12年』をから揚げを肴に、ジェーン・スー著『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』について語り合った。
こうして333年のギャップを乗り越え、転田ころんは現在もスローライフに敗北中である。
そう、現代は楽しい事や美味しい物が多過ぎるのだっ!故に敗北もやむなしであるっ!と転田ころんはぽっこりお腹をさすりながら言い訳するのであった。
-お後がよろしいようで。-