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愛の劇場

『真実の愛』とは何ですの?

作者: towa

「『真実の愛』とは尊いものなのか」の続編ですわ。

前作の感想ありがとうございます。


「なあ、オリヴィア」

「なぁにパパ」


 とある屋敷の応接間。


「そろそろ次のだな……」

「あぁ、お見合いね」


 ゆっくり茶を楽しむのは一人娘のオリヴィア。先日、とある舞台の主役となった女性だ。


「やはりまだ……」

「ん?あの王子の事は忘れてたわ」

「そうか……それならば……あの男の事は?」

「あぁ。あの男……誰だったかしら……あぁ、王子の浮気相手の父親ね」

「お前。あの男の事を……」

「パパ……よく考えてみてよ。確かに顔はイケメンだったわ。よく商会に顔を出していたからね。なぜ私は婚約者を奪った女の父と恋人になり、結婚をするの?あの男にすれば、私との結婚は超逆玉婚よね」


 あれから半年音沙汰はない。

 多分、奥様と寄りを戻したのだろう。あの男はそう言う男のような気がする。


「そうだ……まさかお前は……」

「せっかくだから、『真実の愛』劇場に付き合ってみたのよ。あの男には商才がないからダメ。自分の家族にすら足蹴にされてそう。顔だけの男よ。仮に結婚してもあの母子と王家まで付いてくるわ。不良物件以外の何物でもないわ」


 にこやかに父に話す娘オリヴィア。可愛くて賢い娘オリヴィア。大好きな娘のオリヴィアだ。


「はは……そうだよな。お前が何も考えていない訳がないか」


 カチリ、カップを置くオリヴィア。


「お見合い……しなきゃダメ?」

「したくないなら、この家にいてもいいが、後継ぎがな……まあ、また探すか」

「後継ぎね……少し自分で探してみるわ。きっと商品の様に隠れたところに掘り出し物があるはず」


「まあ、好きにしたらいさ」

「私達はお前が大好きだ。素敵な男が隠れているに違いない。好きなだけ探すといい」


「パパありがと」



「ん〜さて、何処を探せばいいのかな」






「人探しと言えば……あそこね」


「すみません……」

「ん?落とし物かな?」

「いや、人探しです」

「あぁ、迷子ね」

「いえ、私の婿になってくれる人を探してます」

「え?婿を?恋人……いや夫がいなくなったのかな」


「まあ、なる予定の人はいなくなりましたわ。今、探してるのは、これから婿になってくれる人です」


「綺麗なお嬢さん、ここは結婚相談所ではなくて、警官隊なんだよね。ほら丁度向かいの建物だよ」


「そう、婿を探すには結婚相談所があるのね。わかったわ。ありがとう」


 入り口に向かい歩き出すオリヴィア、すれ違ったのは大きな荷を抱える男。


「おっと、すまない」

「こちらこそ、邪魔をしてしまいましたわ」




「今の子、綺麗な人だったな」

「帽子で、はっきりとは顔は見れなかったが美人そうな顔だったぞ。あぁ、なんだか婿を探していると言ってたぞ。だから結婚相談所を紹介しといた。だから、後は任せた」



「ふ〜ん。成る程」

「今日の窓口が俺であった事を感謝しろ、他の奴らなら自ら立候補してたぞ」

「わかったよ。これ荷物だ」



「先輩は、あの方とお知り合い?」

「あぁ、妻との出会いを作ってくれた人だ」

「あの相談所の?カッコイイ人ですね。」

「あぁ、でもアイツは相談所を利用して自分の結婚相手も探してるんだよ。上手く考えたよな。紹介してもらう為にはある程度の情報をアイツに渡すだろ。女性も同じだ」


「成る程ね〜」

「でも、真面目に気の合う相手を探してくれるからな」


「で、先輩はさっきの子を?」

「あぁ、長年の勘だな」

「綺麗な子でしたね。実は向こうで皆気にしてたんですよ」

「そうか、部下達に悪い事をしたな」



 


 ――――


「すいません」

「………………」



「すいません、いませんか?」

「……………………」


「残念、不在ね。今日は縁がない日なのね」

 相談所を後にしようとするオリヴィアに前に息を切らし駆け寄る男


「あの……」

「はい?」


「はぁ、はぁ……すまない。私はここの……社長で……」

「大丈夫ですか?」


「あぁ、ここには?」

「はい。お婿さんを探してまして」


「……中で……話を……」

「ありがとうございます」



「そこに座って」

「…………あの、お茶いれますね」

「え?いや、私が……」

「いいのです。急いで来てくれたのでしょ。まずは座って息を整えてください。お茶といっても勝手にそこのお茶をカップに入れるだけですので」


「ふっ……ありがとう」



「はい、どうぞ」

「すまないね。客人にお茶まで淹れてもらって」


 ズズズ……

「今日は暑いですね」

「そうですね」

「このお茶はもしや……」

「王都の商会で偶然見つけた掘り出し物で気に入ってるんです。たまたま、今日飲みたい気分だったので出しました」


「あら、嬉しいわ。私もこのお茶気に入っているんですよ。定期的に買ってくれていたのは貴方でしたのね」

「それじゃあ……あの商会の?」

「はい。会長のオリヴィアですわ」

「私はここの社長のローレンスだ。しかし……ここは結婚相談所で……君は王族と……」


「はい、実は婚約が白紙になりまして……」

「詳しく教えてもらえるかな」





「成る程、そんな事があったのですか」

「はい、やはり後継者が必要でして、お婿さんを発掘しに来たのですわ」


「ちなみに、オリヴィア様の希望の男性は?」

「ん〜、ん〜」

「それなら私から質問しますね」

「はい、お願いします」



「それでね、パパったら」


「なかなか、楽しいパパではないか」


 ふと窓の外を見ると夕焼けが街を照らし始めていた。


「あら、もう夕方……帰らなくちゃ」

「送るね」

「ありがとうございます」

「あのね……調書なんだが半分以上終わってなくて……この通りだ」


 ほぼ空欄の調書をヒラヒラと見せてくれた。

「まあ、私ったらお話し過ぎて……貴方とのお話が楽しくてつい、すいません」

「いや、私も楽しかった。よければ、また続きを聞きたいのだが……」


「そうね……明日は図書館で仕事をするつもりだったので帰りに寄ろうかしら」

「図書館で仕事?」

「えぇ、人々の会話には商品のヒントが隠れてますので」

「ふふっ、確かに。それならば図書館の帰りに寄って……よければ夕食をご一緒したいのですが」


「ええ、勿論ですわ」

「さあ、帰りますか」


 オリヴィアは紹介する相手に失礼がないように、食事のマナーのチェックだと思っていた。

 




「おや、オーナーお連れ様がいるとは珍しいですね」

「………………」

「初めまして、オリヴィアです。本日は食事のマナーチェックをされる為にきました」

「ん?マナーチェック?君には必要ないだろ」

「あら?てっきり私」


「ふふっ、オーナー……頑張ってくださいね」

「あぁ……ありがと」

「ローレンス様?」

「いいんだ、君の食の好みのチェックだよ」

「はい。よろしくお願いしますね」


 ゆっくりと2人の時は流れる。


 そして、半年がたった。

「オリヴィアの調書は完成したよ。君は?」

「はい、ローレンス様の調書も完成しました」


「色んな事を一緒にしたね」

「えぇ。王都の私の商会にも行きましたね。あの日のダニエル様の顔……面白かったですね」

「あぁ、まだ離婚していないんだもんな」


 夕食を食べながら思い出話に花を咲かせる2人。


「旅もしたね」

「えぇ。ローレンス様との旅は楽しかったですわ」


「オリヴィアに最後の質問をするよ」

「はい」


「『真実の愛』とは何かな?」

「……そうね。私の考えだけど……最期の時じゃないとわからないものかと……命が終わる時浮かんだ人が私の『真実の愛』の相手よ。夫なのか子供なのか両親なのかはわからないけどね」

「たしかに、君の元婚約者の妻は『真実の愛』の相手なのに夫以外の子供を妊娠し出産し離縁したね……」


「まあ、色々な愛の形があるのよ……きっと。ローレンスはどう思う?」



「私もオリヴィアと同じだな。でも、本来なら一日で終わる調書を半年かけてしまった。ゆっくり時間をかけて君を知って僕の事も知ってもらった。まだまだ時間は足りないと思うけど、君の最後に思い浮かべる人が僕だったらいいなと思っているよ」


「…………」

「最後の項目はね、オススメの人の名前を描くんだが、私の最後の項目には『ローレンス』と僕の名を書くつもりなんだが君は?」


「ふふっ、私は結婚相談所に来て半年、会った男性はローレンス様しかいないわ、勿論ローレンス様のオススメは私『オリヴィア』以外ないわ。とても貴重な掘り出し物を見つけた気分よ」


「オリヴィア、初めて会った瞬間から君に恋をした。僕と結婚してくれないかな」

「勿論、答えは……私も大好きよ。私をローレンスのお嫁さんにして」




――――END――――


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 前作を見た時点ではダニエルへの言葉は単なるリップサービスだと感じましたが、今作を見ると主人公は父も含めて単なる阿呆だったのだな、というふうに見えてしまいました。 >不良物件以外の何物でもないわ  …
あのキモおやじとくっつかなかったとわかっただけでも見る価値あったわ。
前回は良かったけど今回は完全な蛇足かなぁ・・・ ないほうがよかったように思う。 あと、貴族令嬢が、「すいません」は言わない。商人としての側面があったとしても、「すみません」だろうし、実はそれすらも…
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