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第二十八話 子供

「....七瀬、、」

 「あーあ、、嫌われちゃったね..」


 こちらの様子を全く意に返さない様子で、いつもより

大股でドシドシ前に進んでいく七瀬は、背中からもう既に、

激しい悪感情のオーラが噴き出ている。


 それに彼女の片手にぶら下がったビニール袋の中に入っている

うなぎ弁当も、さっきまでは極力中の具材が寄らないように配慮してか

右手はぶらんと伸ばしたままだったのに、今ではもう、必要以上に

腕をかくかく動かしながら歩いている。


 「蛙化現象って知ってる? 康太」

「あーはは..。あれでしょ、、好きだった異性のちょっとした言動が

きっかけで、急に冷めちゃうみたいな..」


 『好きだった異性』という言葉を仮に聞かれでもしたら不味いから、

敢えて目を伏せ、通常時よりロートーンで語ったが、栄田はそれを一言一句

余す事なく聞き取ったらしく、こう続けた。


 「そーそー、、この場合、好きってのとはまたちょっと違うかもだけど、

  似たような現象が生じているのは事実よ..」

「めんどくっ、、ま、まじかー!!」


 俺は栄田の口からミーハーな言葉が出てきたという

事実に驚きを隠せず、少し気が緩んでいたのもあると思う。

『面倒臭い』と、それを言い切る事なく直前で抑えた瞬間、

七瀬はこちらを振り向き睨みを効かせた。


「......」

 「康太! また失言だね!」


「はぁ..。でも今のは本心から言ったわけじゃないよ..」

 「それは私じゃなくて七瀬さんに言わないと!」


「そうだな..。許してくれたらの話だけど..。

あぁも意固地になられちゃ、どうしようもないよ..」

 「そーだね..。七瀬さん、さっきより歩くペース速くなってるし..。

  もう私は少し小走り程度に歩かないと追いつかないよ..」


「ははーーあいつ案外、競歩とか向いてそうだよな..。

試合前に不機嫌にさせときゃ、七瀬選手の右に出る者はいないよ..」

 「ふふっ。とんだ皮肉ね..。でも確かにそれっーー」


 次の瞬間、俺の右横から キャッ という短い悲鳴。

そして、その悲鳴の主が栄田だと分かったのは、彼女がアスファルト上の小石に

躓き下半身のバランスを崩した直後だった。


 その後、栄田は転倒した際のダメージを最小限に抑えるため、

地面と接地する間際、か細い2本の腕を伸ばす。しかしその腕は彼女の

上半身を支えるには至らずーー


 いや、タイミングが遅かったと、この際は言うべきなのだろう。


 とにかく、彼女は腕を伸ばそうとするも、片方の腕は伸び切らずに、

肘が地面に衝突、もう片方は当たりはしなかったものの、彼女の身に生じた

惨事に比べれば、それは微々たる救済要素に過ぎなかった。


 「う..。え..」


 栄田はまだ、転んだ事により片方の肘、そして片方の膝を擦りむき、

そこが赤と黒の生々しい傷跡を作っているという事実を、上手く消化

しきれていないようで、呆然と立ち上がった後、すぐに俺の顔を見つめた。


 「康太....。私......」


 自身の傷口に気づいた彼女、そしてそれ以上に、aiーーすなわち機械である

彼女が転倒し、あろう事か出血するという事態に驚きを隠せないでいるのは俺も同じ


 だから二人は数秒顔を見合わせた。


 「痛いよ..。 ヒッグーーグスッーー」


「だろうな..。でも俺の家までもう少しだから..、

どうだ? 自分で歩けそうか..?」


 とは言ってみたものの、ジーパンが破ける程盛大に転倒した

彼女の返答は明白だった。


 「グスッ、、む、無理..」


「分かった。じゃあまたおぶってやるから..」


 そう言って、栄田をおぶろうとした時だった。

七瀬が立ち止まってこちらを振り向き、言った。


「康太くん。どうしたの..?」

「別に、、ただ足の速い人に合わせて歩いてたら、

栄田が思わぬところで躓いたみたいなんだ」


「....。何それ....。私のせいだって言いたいのなら、

はっきり言いなさいよ!!」

 「七瀬さん..。大丈夫..。私が一人で勝手に転んだだけだから..」


「....」





帯状疱疹とやらが背中に出来てしまい、

激痛のあまりしばし更新が途絶えていましたが、

ロキソニンという鎮痛剤のおかげで、現在痛みの程度は大分緩和されたので、

一話の文量は以前よりも短くなるかもしれませんが今日から再開します。



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