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第二十話 友達 

「康太!!」


 誰かが俺の名前を呼んでいるのを把握しつつ、

寝起きの虚な目では未だに視界がぼやけ焦点が合わない。


 それに、声が聞こえると言ってもその声の主は

夢の世界の住人かはたまた現実世界の人間か?

その境界線は曖昧だ。


 しかしーー


「起きてよぉ! 康太!」


 流石に二度目のモーニングコールともなれば

いくら鈍感な俺とてその呼びかけが夢でない事くらい安易に想像がつく。


 しかしーー


「起きて!!」


 怖い、、


 俺は今自分の名を声高々に叫ぶその主の

正体を知らない。


 最初は寝ぼけて聴覚がバグったのかと疑ってもみたが

こうも脳がスッキリしてきた現状、その線は薄そうだ。


 だから不思議で堪らない。


 母はもっと年長者特有の落ち着いた響きのある声

 七瀬に関しては、知性を帯びた冷静な語り


 ゆえに、今俺の耳元でガンガンと騒ぎ立てる

幼な子のような声の主を、俺は知らない。


 あまりにも気味が悪く、目も開けられない。

まさに八方塞がりなこの局面、どう打開すべきか?


「怖がんないでよ!! 私だよ!! aiだよ!!」

「いや、だから仮にaiがいたとして、そいつが俺の耳元で

ワーワー喚いている事自体が理解できないわけ」


「え..。私のこと忘れた..? 昨日オリーブオイルを丸々

一瓶飲み干した私だよ!! ねぇ忘れたの!!」

「そいつは忘れてないさ。でもな、そいつは常にカタコトで、

もっと機械味を帯びていたのにお前の喋り方はなんなんだ!

まるで人間そのものじゃないか!」


「だから昨日この部屋の漫画を呼んで勉強してたんだよ!

それなのに康太ったら、私の事置いて七瀬とかいうガキンチョと

外食に行くんだもん! 最低! この人でなし!!」


 散々捲し立てた挙句に、彼女の怒りの矛先は多方面へと

飛び火していったようだった。しかしこれでは埒が明かない。

いつまでも半目を開けて彼女の反対の方向を向いて寝そべっていちゃ、

例の声の主が本当にaiのそれなのか判断しようがないじゃないか。


 したがって、俺は腕をついて勢いよく鈍った上体を起こし、

一晩寝たせいで浮腫んだ顔を彼女の方に向けた。


「ね? 嘘じゃないでしょ」

「ま、まぁね..」


 そしてそこにいたのは、昨日俺の家に無断で上がり込んだ

七瀬に次ぐ第二の刺客、謎のaiーー


 金髪、ブルーの瞳、貧乳ロリ体型と、

これを制作した開発者の

性癖を詰め込むだけ詰め込んだかのような欲張りセット


 しかしやはり機械だからか、人間とは違い不自然な

輝きを放つ瞳のライト、油を常食とする等々ーー


 ここに来て以来数々の異常行動を見せてきたあいつだ。

母さんと七瀬とで家に入った時にはもう既にいなくなっていたから、

てっきり勝手に出て行ったものだと思っていた。


「昨日康太がお母さん連れて帰ってきたからびっくりしちゃって。

ずっと透明人間になって潜伏してたんだよ!」

「ちょっと待て。透明人間ってなんだ..?

すっごい空気の薄い人間がいても気付かれないみたいなアレか..?」


「なーに言ってんのさ違うに決まってんじゃん!

私は人間じゃないんだよ。人間には到底出来ない事も

私にかかればお茶の子さいさい!! 見ててね!!」


  <透明化>


「え..」


 一瞬、その一瞬


 さっきまでaiの彼女が立っていた場所はただの室内の

風景に置き換わり、朝日に照らされたバルコニーの欄干の

反射光が直に目を刺激してくる。


 しかし目は冴えど、この不可解な事象はどう足掻いても説明が

つかず試しにスゥッと息を吸ってみたら、エアコンの冷風が

ツンと温い肺を貫き体中に染み渡っていく。


 するとたちまち全身の血流が加速して来たーー


「落ち着け..」


 徐に立ち上がろうと思い至ったが、その思考は一時中断


 床下に目をやると、そこには熟睡中の七瀬がいた。

芋虫のように布団にくるまり頭だけが飛び出している状態だ。

寝ぼけているのか? ウニャウニャと寝言を呟いており、

幸せそうな笑みを浮かべながら口元から垂れたヨダレは枕をつたっている。


 そんな光景を微笑ましく見つめていたら

彼女の身体は布団の中で激しく揺り動き、かと思えば

急に目をカッと見開いてガバッと上体を起こす


「あれ..。康太くん..。おはようー」

「おはよう七瀬」


  「おはようございまーす七瀬さーん..」


「うわっ!」

「キャッ!」


 「はっはっは。そんな驚かなくても良いじゃない?

  何はともより康太、分かったでしょ? これが<透明化>

  最先端の技術を凝集させた私の身体は、透明になる!」


 と、どこか誇らしげに、七瀬の足元に仁王立ちの状態で

出現した彼女は語る。


「ハーン..」

「こ、康太くん..。昨日からずっと気になってたんだけど、

あの子って何者??」


 「フッフーン! よくぞ聞いてくれましたね七瀬さん。

  私は脳内に生成aiの学習機能ーー」


「ロボットの癖して記憶喪失になった事に加え、俺の家に

無断で上がり込んだポンコツaiだよ」


 「そうそーーっておい貴様!!

  あぁ取り乱してしまった..。ごほっ、、とにかく七瀬さん。

  誤解しないで欲しいんだけどね..。彼の言う通り、

  私もあなた同様以前の記憶を思い出せないの....」


「ウイルスとかではないらしいんだよなー」

「......康太くん..。aiって、何..??」


 「プッ、情弱おーーつ!」


「おいai。初対面の七瀬に向かって情弱は失礼だろ。

記憶を失っている以上、欠落した知識があってもおかしくは無い。

えっととにかくだな七瀬、、彼女は、、そのえっと、人工知能なんだ..」

「じ、人工知能..」


 「はぁーーとんだおつむさんだなー仕方ない。

  じゃあ最大限噛み砕いて言うとだな、

  私は人間じゃない。人の手によって作られた機械なんだ!」


「へぇ..」


 「リアクションうっす!!」


「お前、七瀬にもっと大袈裟な反応期待してたのか?」

「えっへへ..。別に私もびっくりしてない訳じゃないよ..。

す、すごーい!! aiさんって人とは違うのーー!?」

「ぷっ..。同情されてやんの。乙」


 「み、みんな酷いやい..。私を邪険に扱って..」


「別に邪険には扱っていないだろ?」

「そ、そうそう! 私たち二人境遇は同じなんだから、

仲良くしようよ! ね..?」


 「うぅ..。七瀬さんは優しいんだね..。

  さっきはガキンチョとか言ってごめんなさい..」


「が、ガキンチョ..?」


 「え..。七瀬さん..怒ってます?」


「べ、別に怒ってないよ..」

「嘘だな。七瀬はこう見えて結構執念深くていじけやすいんだ。

こんなの建前だって事くらい分かるだろ?」

「こ、康太くん!!」


 「ひ、ヒェ..。な、七瀬さんすみませんでした!!

  粗相なんです。わざとじゃないんですー!!」


「あーあすっかり怯えちゃったよ..」

「ご、ごめんなさい!! 私そんなつもりがあって言ったんじゃ..。

って私は何も言ってないか、えっと、そんな意図があった訳じゃ..」


 「そ、そうなんですか..?

  なら私とお友達になってくれますか..?」


「そ、それは勿論よ!!」

「良かったな。友達第一号じゃん」


 「へっへっへ!! やりましたよ康太!

  このペースで最低でも百人は作りたいですね! 友達」


「やめろ、そんな事したら部屋がぎゅうぎゅうになるだろ。

こちとらもうお前ら二人の生活スペースを確保するだけで手一杯なんだ。

だから出来るなら二人だけで仲良くしててくれ」

「うん。私もそうするべきだと思うよ。

まずは失った記憶を戻すのが先決、友達ならその後に

いくらでも作れるじゃない?」


 「そ、そうですね..。そうします..。

  まぁ、友達は広く浅くより、狭く深くの方が良いと

  聞いた事もあるしーー」


「そうそうその通りだよai。広く浅い関係なんてどうせ、

そのカテゴリーから外れれば関係性もそれっきりさ。

本当に、一瞬で疎遠になるからな..。一瞬で..」

「康太くんの身に一体何が..」


 「いや、康太はそもそも友達とか出来なさそうなタイプでしょ。

  でも周囲にボッチだと思われたくないから、俺過去こんな

  経験したんだよーって匂わせるタイプでしょ?」


「あの..。急にマジ(ai)な回答するのやめて下さい..」

「ちょっと! 康太くんは一人じゃないよ!」

「へへ..、フォローしなくて良いよ七瀬ーー

俺高校に入ってから本当に人と接した事とかなくて、

中学の時も受験ガチって勉強しまくったせいで周囲からは

根暗なインキャだと思われてて、小学校なんて女子全員に..」


「康太くん! 私たちがいるじゃん!」


 「うん。そうだよ康太」


「あぁ..。そうだね..。そっか..。

なぁ、七瀬と、、ai、俺も、お前らの..」


 しかし、

後に続くそのたった一言を言おうとしたその瞬間、

俺の背中のちょうど手の届かない辺りがむず痒くなってきた。


 友達になって欲しいーー


 今日に至るまで希薄な人間関係しか構築しなかった弊害か、

誰かと対等な契約を結ぶ事すら俺にとっては難題だった。


「う..」

「..??」


 何かを言いあぐねている俺に、

眼前の七瀬は頭上にクエスチョンマーク

意図を察したaiは、胸の前で腕を組み冷笑を浮かべている。


 「分かったよ」


 そして案の定、切り出したのはaiから


 「康太は、私たちとお友達になりたいんでしょ?」


「ま、まぁね..」

「..??」


「七瀬? さっきから難しい顔して、どうしたんだ..?」

「いや..」


 「友達になりたくないんじゃない? 康太と」


「お前は余計な事言うな」

「....。えっと..。違うのそうじゃなくて。

ただ、、私てっきりもう康太くんとはもうお友達だと思ってたから..」


 











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