エンカウント
『ーーシャァァアアアアアッッ!!ーー』
〈港町シシレン〉への道中〈ソルベス荒野〉を通る老体一行は
【モンスターに遭遇】。
日も暮れる中その対応に追われる羽目に。
「ソルリザードが4、5、6体か……ちょっとしんどいのう……」
「しょうがないでしょ!片づけるわよ!」
ソルリザードは成人大ほどの大きさの太い蛇に短い手足が生えたような見た目で野党や商人から奪ったであろう武器や盾、または鎧を身に着けている個体までいる。
群れはコチラを警戒して一定の距離を保って様子を伺っている。
「……炎々纏いて……我が敵を……焦がし尽くせっ!ーー」
魔導杖を構え、詠唱するメリー。
『ーーデア・フレイグッッ!!ーー』
メリーの放つ魔法、大きな火球はソルリザードの群れの真ん中目掛けて飛んで行く。だが、その火球は誰にも当たることなく地面にぶつかって熱を霧散させる。いとも簡単に避けられた火球を皮切りに群れは散り散りになって武器を構え襲いかかってくる。
「……下手っピかっ!」
「ーーうっ!う、うっさいわね!ーーってうわわ!危なっ!!」
老体はノーコン魔法使いをディスりながら、イズを抱えソルリザードの攻撃を飄々と避ける。メリーは危うく見えつつも魔法で作った障壁を張ったり身をよじりながら避けたりして攻撃を凌ぐ。
「イズ君は軽いのう!」(男の子にしてはやけに華奢な身体付きじゃのう……これまで酷い環境におったんじゃろう……)
「あ、あの!……すいません、ありがとう……ご……ござい……ます……」
照れるように謝意を伝えるイズ。
6体いるソルリザードの内2体は老体と美少年を、残りの4体はメリーを攻撃する構図が出来上がる。
「ホレホレ、ワシは手が離せんのじゃ。ここは〈上級魔導師様〉になんとかしてもらわんとのう」(先輩の弟子ならこれくらいわけないじゃろ)
「ーーちょっ!アンタ!明らかに余裕あるじゃないの!!ーーってかなんで!!こっちにっ!!4体も!!来てるのよっ!!」
いっぱいいっぱいで途切れながら喋るメリーは必死にソルリザードの猛攻を凌ぐ。
「魔術師が懐に入られた時に使う魔法があるじゃろーー!?」
「ーーえ!?……あ!」
ハッ!とするメリー。直後すぐ小声早口で詠唱する。
「あーーーー、えーーっと……(ゴニョゴニョ)
『カッシュ・バルドッッ!!』」
魔法を放つメリーの周りに衝撃波が起こる。
ーーーードンッッッ!!ーーーー
『ーーシャァアアアアアッッ!!ーー』
空気が轟くような音がして、ソルリザードが声を上げながら散り散りに結構な距離まで吹っ飛んでいくが、飛んでいっただけで実質ノーダメージ。そんな様子を見ながらのらりくらりと2体のソルリザードの攻撃をあしらう老体と抱えられたイズ。
「おお!やるのう!」(たかが衝撃波の魔法が凄い威力じゃ)
「ーーうるさいっ!!」
「なんでなんじゃ……」
老体の〈激励〉はメリーにとって〈煽っている〉と捉えられ、怒られてしまった。
ソルリザードと強制的に距離を取ったメリーはすかさず、次の魔法詠唱を始める。
「ーー炎々纏いて……ーー
「ーーアレじゃ!!効果的なのは〈寒いやつ〉じゃメリー!」
「ーーえ!?あ、分かってるわよっ!!ーー」
……絶対に分かってなかったメリー。
「……氷雪さざれ……刺し貫いて零を知れっ
『コダン・クール』ーーッッ!」
メリーの前方に4つ氷の塊が出現する。クリスタル状に尖ったそれは人の手から肘くらいまでの大きさで回転し出す。直後ソルリザード目掛けて飛んでいく。
「ーーシャァァアアアアア!!ーーシャァァアアアアア!!……」
飛んで来る氷塊を物ともせず、再度距離を詰めメリーに迫ってくるソルリザード。初手と同じくメリーの魔法をスルリと避けるソルリザード。
「ーークッッソ!!なんなの!コイツら……速いっ!ーー」
悪態をつき眉間にシワを寄せるメリー。
その時……
『ーーも、もう1回っ!!同じ魔法を!!……打ってみて……くださいっ!!ーー』
再度、魔法を要求したのは
【イズ】だった。