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泣きっ面の鬼の形相







「……っごほ!っごほ!……ハァ………………ハァ……オ…………オレは…………死ん……でた……のか……?」



 微動だにせず、細めた目線だけを老体に向けて問いかける。



「……そうじゃ。……心臓が止まっておった……だが、イズのおかげで……ーー

「…………………そう……か……」

「……?」

「……………………」



 ダンキュリーは老体の言葉を最後まで聞かぬまま、相打ちを打ってから目を閉じて沈黙した。



 イズが駆け寄ってきた。



「ーーダンキュリーさん!」



 心配でダンキュリーの身体を揺らして呼びかける。



「イズ。大丈夫じゃ……気を失っておるだけのようじゃ……」

「……そ、……そうですか……はぁ、良かった……です…………はぁ……はぁ……」



 息を荒くするイズ……。

 額に汗が滲み……目が少し虚ろで……顔色が悪い……。



《ーードサッーー》



 イズがダンキュリーの胸に倒れ込んだ。



「ーーイズっ!!イズっ!!ーー」

「……ハァッ……ハァッ……ハァッ……」



 老体が声をかけながらイズの身体を楽な体勢に抱きかかえて、額に手を当てて様子を診る。



「拒絶反応か……以前よりも症状が酷いのか……苦しそうじゃ……」

「ーー……ハァッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……ーー」



「……イズ?あんた、どうしたのよっ!?」



 メリーがイズを心配する。



「……拒絶反応じゃ……、以前よりも【特稀魔法エドマジック】を使った影響が如実に出るようになっとるみた……い……、っっ!!ーー



ーー【っっメリー!!後ろっっ……ーー】」

「ーーえっっ!?ーー」



 後方に振り返ってメリーに説明しようとした瞬間……そのメリーの背後に



 【黒豹蛇ダハーク】が

 鉤爪を振り下ろさんと迫るのが見えて、老体は血相を変えて叫ぶ。



 不意を突かれ、メリーの反応が遅れる。老体はとっさにメリーの腕を掴み、強引に引き寄せ……黒豹蛇ダハークに背を向ける形でメリーを、その大きな身体で被さるように包んだ。



 メリーは……老体が衝撃に備えて、全身に力が入るのを肌で感じた。


 〈それと同時に身を挺した|老体(大切な人)を【失う】恐怖が全身を襲う。〉



「ーーい、嫌っ!!いやぁああああっ!!ーー」

「ーークッ!!ーー」









《ーーッッキィィィンッッ!!ーー》



 硬い物同士が摩擦する音が響く。



『ーーこの|蒼炎騎士ベルフリーデン(俺)がいること忘れてんじゃねーってーのっっ!!』



 老体を守るように黒豹蛇ダハークの鉤爪を灼砲剣イグニス)で受け止めたベルフリーデンは渾身の力で黒豹蛇ダハークの巨体を押し返して間合いを空ける。





「……フー……ギギギギ……フー……」



 荒い息と喉を鳴らして音を発する黒豹蛇ダハークは、押し返されて距離を取ったまま追撃せずに様子を見る。ベルフリーデンの不意の乱入に驚いて警戒を露わにする。



「おぬし……無事じゃったか……」



 老体は庇ったメリーを放して、ベルフリーデンの隣へ行き声をかける。



「当然!俺があの程度の攻撃で死ぬわけないってーの!さっきは不意打ちでビックリしただけで……ぶっちゃけ、何発喰らっても何の問題も……ない…………」

「………………」



 余裕のある憎たらしいニヤけ面を老体に向けて威勢を張るベルフリーデン。老体はそれを無言で見つめる。嘲笑する様子でもなく、ただ内心を見透かしたような老体の目にベルフリーデンは表情を素に戻す。



「…………嘘だよ。嘘。……意識が飛んでた。んで、割とすぐ意識は戻ってたんだけど……アンタらが闘ってるの間に大人しく腹の回復に注力してた……ってわけ…………。すぐ加勢しなくて悪かったな」

「いや、ここぞと言う時に助けてくれたじゃろう?ありがとう。さすが騎士じゃのう」



 老体の方を見ていた視線を逸らして前を向いたベルフリーデンは微妙に照れたような顔をする。



「……まあ……ね」







『ぐす……ぅぅ……ぅう…………ズズズ……』



 不意に後ろから啜り泣く音がする。



「ん?なんじゃ?」



 黒豹蛇ダハークを目の前にして不注意だが、後ろを確認すると……



 メリーが鬼の形相で老体を睨みつけながら鼻を啜って泣いていた。



「……ど、どうしたんじゃ?ケガか?メリー」

「…………ぅぅ……」



 返事をせず、そこから動かないメリー。



「俺がトカゲ野郎を見てるから行ってやんな?」

「すまんのぅ……」



 ベルフリーデンの申し出に老体は最低限の警戒しつつもメリーの元へ寄っていく。







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