魔法耐性
「メリー、その残滓を辿れるか?魔法を使う特級の所在が分かるかも知れん……」
「……やってみるけど……」
メリーは黒豹蛇を凝視する。
「……ダメ、もう(魔力が)途切れてて分からないわ」
「……そうか」
2人のやり取りの直後、小刻みに震えて立ち尽くすだけだった黒豹蛇が一歩を踏み出す。
……かなり動きはゆっくりだ。
『ギァ……ギア……フー……フー……』
息が荒く、まだ身体がガタついている。
「メリー、このまま黒豹蛇を仕留めてしまおう……多段結界で威力を軽減したとはいえ思ったよりダメージは深刻なようじゃ……」
黒豹蛇は一歩進んだはいいが、そこから一歩も動けず……直ぐ様、倒れるように膝をついて頭を垂れる。
「そ……そうね!アタシの過剰詠唱した魔法を喰らったんだもの!そうでないと困るわっ!」
メリーは自信を取り戻したのか、声のトーンが明るくなり揚々と魔導杖を黒豹蛇に向ける。
「アタシの魔法は……【特級】に通用するって証明になりなさいっ!……
ーー……雷よ……塵芥も残さず我が敵を貫き穿て……閃光の果て……
「【ーーーーシュタイナーさんっ!!シュ……シュタイナーざぁんっっ!!ーー】」
メリーが詠唱する最中、それを掻き消すイズの大きな声が老体を呼ぶ。後方に振り向くと涙をボロボロと零しながら必死に叫ぶイズが目に映る。イズの傍らには仰向けに横たわるダンキュリーの姿が。
「ーーど、どうしたんじゃ?」
老体は患部を抑えながらも足早にイズの元へ駆け寄る。メリーは詠唱が止め、その場からイズの様子に目が釘付けになる。
「ーーダ……ダンキュリーさんが……
ダンキュリーさんが……
【息…………してない……】」
「ーーッッッッ!!!!ーー」
それは聞いた老体は直ぐ側まで行き、低い姿勢でダンキュリーの息を確認する動作をする。
「………………っ!」
沈黙したまま、次はダンキュリーの胸に耳を当てる。
「………………マズいのう」(音がない)
「……ダ……ダンキュリー……さん……」
ボロボロと涙の粒を零しながらイズは名前を呼ぶ。
「イズ、少し離れててくれるか……」
「…………?」
疑問に思いながらも少し距離を空けるイズ。老体はダンキュリーの上半身の装具、衣類を強引に剥いでいく。イズはただその様子を見つめる。
「……よし、やるぞ。1……2……3……」
老体はダンキュリーの胸に垂直に両手を当てて、秒刻みで圧を連続して与えていく。10カウントを3巡程繰り返す。
が、……反応がない。
「……ダメか」(なら、【コレ】はどうだ……〈雷魔法〉は得意ではないが、慎重に調整して……)
再び、ダンキュリーの胸に手を当てる。
「…………」(心臓に直接、【電気ショック】をかける)
《ーードッ!ーー》
小さいが衝撃音が鳴る。だが、ダンキュリーの身体には特になんの反応もない。
怪訝な顔をする老体。
「…………なんじゃ?……手応えが……無さすぎる……」
想定してなかった反応に焦る老体。
すると、側にメリーが来てダンキュリー身体に手を当てる。
「……電気ショックしたのよね?でも……効果は殆どないわ」
「メリー……何かの分かるのか?」
「そもそも、この身体は【魔法の耐性が高過ぎる】のよ……今まで至近距離で爆破魔法を使ってきて耐性がついたのもあるかもだけど……
【これじゃ心臓まで雷魔法が届かないわ】……」
「…………い、威力を上げれば、どうじゃ?」
「…………分からない……そんな高度で精密な調整なんて検討もつかないわ……魔力耐性を考慮した電気ショックの強さなんて……」
「…………むぅ……」(メリーの言う通りじゃ。到底無理じゃ……威力を上げ過ぎれば、それこそ命を奪いかねん……弱くても強くてもいかん……一体どうすれば……)
「…………」
「…………」
しばし、沈黙する。
諦めの空気が漂う中、老体がダンキュリーから手を離す。
すると、イズが涙を拭ってダンキュリーの側に戻って来る。
「……【僕が心臓に直接魔法が届くようにします】」
ダンキュリーの胸に手を当てるイズ。その顔は泣き顔ではなく【真っすぐ事に向き合う顔】だった。
「ーーーー待っ!!ーーーー」
「ーーちょっーー」
老体とメリーがとっさに声をあげるが……
「【必中座標】」
…………イズの特稀魔法は発動した。




