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魔法の講義





「魔法に得手不得手があることは知っとるじゃろ?」

「そ、それくらい知ってるわよ」



 なぜか不機嫌なメリー。



「その得手不得手には【魔力の性質】が関わっとってな、例えば炎の魔法が得意な者は最初から炎系統の性質により近い魔力を有するが故に得意なのじゃ。ここまでは良いかの?」

「………………」



 無言でしかめっ面をするメリー。



「【魔術師の魔力】と【使用する魔力の性質】が近ければ近い程その効果を大きく出来るし消耗する魔力も少なく出来る、更に詠唱も省略出来る……というわけじゃ」

「……ちょっと待って、そんな話……魔導院アカデミーで聞いたことないわよ、【魔力の性質】なんて」

「そりゃあそうじゃろ、ほとんどの者は魔力の違いなど感じ取れんのじゃから……魔導院アカデミーではそれを〈才能〉という言葉で濁しておる」

「じゃあ、ゲートを使う魔力の性質とより近い魔力をアンタが持ってるから消耗する魔力が少なくて済んだってこと?」

「いんや」



 あっさり否定する。



「じゃあなんなのよ!」



 すぐキレるメリー。



「ゲートを使う瞬間だけ【ゲートの魔力性質】と【自分の魔力性質】を〈ほとんど同じ〉にしたんじゃよ」

「自分の……魔力の性質を同じに……って……そんなこと……」

「出来るようにしたんじゃ、昔……魔導院アカデミーで魔力量の少ないワシに先輩……お前さんの師匠が世話を焼いてくれてな。その方法を2人で開発して訓練したんじゃ」

「……それじゃどんな魔法も最少の魔力で使えるってことじゃ……」

「どんな魔法も、は無理じゃ」

「なんでよ!」



 またもや否定されキレるメリー。



「ワシもお前さんの師匠も魔力の性質を正しく認識することが出来ないからじゃ」

「……?」



 理解出来ない、と眉間にシワを寄せるメリー。



「魔導卿と呼ばれた天才魔術師ザビティ・グレンでさえ魔力の性質を正確に読み取ることは出来ん。良くて5割、いや3割程しか性質を感じる素養がなかったんじゃワシも先輩も」

「じゃあどうやったのよ!正しい性質を知らないと同じにしようがないじゃない!」

「その通りじゃ。じゃから後は【勘】じゃ」

「……勘?」

「ワシらは性質を特定する魔法を【ゲート】だけに絞った。幸いワシと先輩の【性質を感じる素養】は互いに違っておってな、故にゲートの性質が6割から7割ほど確定した状態で解析を始めることが出来た、後はーー」

「ちょっ!ちょっと待って!【性質を感じる素養】って何?違ってて良かったってどうゆうこと?」



 メリーは話を遮って疑問をぶつける。急に色々言うたから無理もない。



「うーーん例えば……魔力の性質を【味】とするじゃろ?その味を知るためにワシは【塩味】、先輩は【甘味】と【辛味】が分かる素養を持っていて、2人の味覚を合わせて解析したから効率がグッと上がったというわけじゃ……この説明、分かるかのぅ?」

「………………」



 沈黙してくうを見つめるメリー。思考をまとめておるのか真剣な顔をする。



「………………いいわ、続けて」

「うむ、後は性質を微調整しながらゲートをひたすら使いまくって魔力消費量やその残滓を見極めながら……【運】良く正解に辿りついたのじゃ」

「そんな途方もないやり方……」

「言うたじゃろ?【運】が良かったんじゃ」



 何千通りもある開かずの金庫を開けるような種明かしにメリーは驚きを隠せないようだった。というより信じられないという顔だった。



「その後も研鑚し訓練した結果、ワシは【ゲート】という魔法において無詠唱で、尚且つ極めて少ない魔力で発動出来るというわけじゃ……長距離は魔力量が多くなるから短距離に絞られるがの」

「…………師匠の強さがちょっとだけ分かった気がしたわ。ホント……とんでもないわ、もちろんアンタもね」

「………………」(お前さんがそれを言うかのう)



 無言で皮肉の言葉が脳裏に浮かぶ。

 おそらく、この子の素養はワシや先輩以上……。



 荷が重いのう。





「メリーや!魔法の講義は一旦終いじゃ!ではこれからのことを考えねばな!」



 場を仕切り直すためにわざと大きめの声でハキハキと話した。




 

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