アクアリザード
メリーは老体が露店で買ったポーション(紫)を指さして問う。
「おお、これはのう……凄いんじゃぞう?……あ!そうじゃダンキュリーさんや」
「どうした?ジイさん」
「厄介事に巻き込んだ上、ボコボコにした詫びじゃ……このポーション飲んでくれんか」
「いやジイさんのせいじゃねぇし、そこまでボコボコにされてねぇよ」
「まあまあ、騙されたと思って飲んでみぃ……なんと魔力も回復するんじゃ」
「そんなポーションがあるのか?」
疑わしい目を向けるダンキュリー。
「そんなポーションあるわけないじゃない!」
否定する声と共に話に割って入るメリー。慣れたように聞き流しながらポーションを取り出し、ダンキュリーに渡す。
「なんだ、この色。ポーションってこんな色だったか?紫じゃねぇか……」
「普通は薄いピンク色じゃがのう……ほれ、飲んでみぃて」
「………………ぇ……おう……」
グイグイくるジジイに困るダンキュリー。その手にあるポーションを疑わしい目で値踏みするようににじり寄るメリー。
そこでダンキュリーはメリーに目をつける。
「おい、メリー」
「な?なによ!」
「お前は魔力残ってんのか?」
「え?まだあるけど、半分以上は減っ……!!んぐぐっ!!ーー……」
にじり寄って来たメリーを素早く捕まえ、ポーション【紫】を強引に飲ませるダンキュリー。
「……んくっ……!……まっっっっず!!」
「ハッハッハッ!どうだ?」
「ーーアンタ!!いきなり何すん…………っっ!!……」
一瞬、怒り出すかと思いきや黙るメリー。直後、これでもかと目を見開き、驚きを隠せない様子。
「……ヤバい……なんなのこれ……本当に魔力が回復してる……体の疲れと痛い所だって全然ない……」
信じられないという顔で老体に視線を向ける。
「ホッホッホ……凄いじゃろ?ワシもビックリしたんじゃ」
「こんなのまるで【賢者の雫】じゃない!こんな凄いもの一体どこで……ーー」
『ーーぅああああっっ!!街までモンスターがぁっっ!!ーー』
『ーーキャァァアアアアッッ!!ーー』
『ーー逃げろ!逃げろーー!!』
『ーー騎士はなにやってんだ!?うわぁああーー』
突如、街の人の声が響きメリーの声を掻き消す。同時に沿岸のある方向から逃げ走る人々が続々と押し寄せる。一瞬にして中央市場はパニック状態に。
『ーー進めぇええっっ!!』
少し遠目に王都騎士が編隊を組んで沿岸に向かうのが見える。
「騒がしくなってきたのう……むぅ、あれは……」
沿岸に向かう騎士達を掻い潜って数匹のモンスターが中央市場に侵入したのが遠目に見える。
「アクアリザードか……まあ問題ないじゃろ、騎士の連中で充分に対応出来るわい」
「……アクアリザード……?」
イズがボソッとモンスターの名前を復唱する。すかさず老体が反応する。
「イズや、荒野でワシらが倒したモンスターを覚えとるか?」
「……は、はい。ヘビみたいなやつ……ですよね?」
「そうじゃ。そのモンスターの別種で……いわば水陸両用型みたいなもんじゃ……ソルリザードより一回り大きくて水掻きがあるのが特徴じゃのう」
「……なるほど、……覚えました!」
「偉いのうイズ」
「えへへ」
微笑ましく、孫を褒めるおじいちゃんをしているが……依然、中央市場はそこそこパニック状態。モンスターの種類を見て余裕をかましていると……。
『ーーーークソッッ!!なんだ?こいつら強いぞっっ!!ーー』
『ーーただのアクアリザードじゃねぇのかよっ!!ーー』
騎士達がたじろく声が響く。
「なんじゃ……手こずっておるのか……」




