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特注大型サイズ





 美少年は老体の胸に顔をうずめてガタガタと震えだす。



「全く……今日は閉店後の来客が多いのう」



 ワシの声に反応して短剣の男は振り向く。



「おいジジイ何だここは?ってオイオイ!いるじゃねぇかイズゥゥゥ……」


 

 【イズ】というのはこの子の名前か……。

 ねちっこい声で美少年の名を呼ぶその目には苛立ちと殺意が籠もっている。



「ーーなんなのよ!アンタ!」



 魔導杖を短剣の男に向けて威嚇するメリー。



「あ?なんだテメェ…………お前、クソ貴族の依頼の方の…………なんでこんな所に居んだよ」

「灰色ローブが次から次へとなんなのよ!今日は!」

「あーー、まあいいわ……イズが逃げ出したりしてなきゃオレもそっち行ってたしなぁ、ジジイは関係ねぇけど…………【全部殺すか】」



 空気がヒリつく……。



「ーーこ!この人達は!かっ……関係……ないっ!」



 ワシの影に隠れるような姿勢から短剣の男の前に飛び出して声を上げる美少年。



「あぁん?テメェの意見なんざ求めてねぇんだよイズ……オレが全部殺すって言ったら全部殺すんだよ」

「お……お願いします、おね……お願い……します……」 



 ガタガタと震える身体でこれ以上ないくらいに小さい姿勢で懇願する美少年。



「………………っ」(こんな子供に……なんてことさせとるんじゃ)



 憤りを感じつつもデカい身体を起こして立ち上がる。



「なんだ?ジジイ、文句があるのか?」



 馬鹿にしたようなヘラヘラした態度でこちらを牽制する短剣の男。



「………………」



 ワシは何も言い返さずにバックヤードに向かった。



「ちょっ!!アンタ!何逃げてんのよ!……ちょっと!!」

「ハッハッハッ!イズぅ!見ろよ!お前が庇おうとしたジジイはお前を見捨てて逃げて行ったぜ!?傑作だなぁ?オイ!!……まあ、オレの姿を見た以上殺すことには変わりねぇねどなぁ」



 メリーの声と短剣の男がワシを侮辱する声を聞きながらバックヤードにある〈肉叩き〉(特注大型サイズ)を手に握った。



「……じゃあさっさと終わらせるか、とりあえず死んどけ【ブリード】ごときが!」

「アタシがそんなことさせると思う?」

「魔法使いの小娘がしゃしゃり出てくるなよ?イズに後にすぐ殺してやるからそこで待っーー





 《ーーゴッッッッシャアッッ!!ーー》



「ーーーーッッッッ!!!!ーーァーーーー」



 短剣の男の声にならない断末魔と……骨を砕いて肉を潰す音、血の飛沫が飛ぶ音が店内に広がる。



「ーーーーはっ?」



 疑問符を吐くメリー。その視線は短剣の男の居たところの背後に突っ立っているワシに向けられた。


 

 

 何が起こった?という顔をしたメリーの視線は床に横たわる短剣の男とワシを往復する。



 何も難しいことはしていない。

 ワシはバックヤードに〈肉叩き〉(特注大型サイズ)を取りに行ってそれで背後から短剣の男の【後頭部を叩き潰した】だけだ。





 小さく身体の折りたたむように頭を垂れてたイズは異様な雰囲気と血の匂いを感じて頭を上げる。



「……ぁ、あ…………っ……」



 状況が理解出来ずに静かに動揺する。

 血の滴る肉が微量に付いた肉叩きを持ったムダに図体のデカい強面のジジイが目の前にいるのだ。普通に怖いだろう。



「アンタ……一瞬で…………どうやって……」

「どうって、こう……(肉)叩きを水平に振りかぶってじゃな、思いっきりーー

「ーーそーじゃないっっ!!アンタはそこに!……いきなり!出てきた!いなかった……のに……」



 メリーの妙にカタコトな言葉は動揺の表れなのだろうか……まあ言いたいことは大方分かった。



「……魔法じゃよ、最初にお前さんの言った通りワシは魔術師というても差し支えないくらいには魔法を扱える」

「それは!……師匠の友達だったら……そうなんでしょうけど、でも……【おかしいのよ】」

「……その言い方じゃと、【何の】魔法を使ったかの見当はついとるようじゃの」

「ア、アンタの魔力は最初に接触したときに勝手に見たわ、だから分かる。アンタの魔力量で使えるわけないのよ…………魔力消費量の膨大な移動魔法【ゲート】を」



 正解。

 さすが先輩の弟子じゃの、この空間に漂う魔力の残滓を読み取って魔法を特定したか。





 では、少しだけ魔法学の講義といこうかの。










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