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受付嬢と騎士(kk)





 宿屋の受付嬢(小柄で可愛らしい)が騎士(自称貴族)に迫られている場面に遭遇した。



 非常に困った様子の受付嬢はこちらの存在に気付いて目線を向ける。



「あ、あの……お客様が来られたので……その、や、やめてくださ……ーー」

「ーー客なんてどうでもいいんだよ!【貴族】で!名誉ある【騎士】のオレが!【ド平民】のお前を選んで【やってる】んだ、と言ってんだよ!返事は【はい】しかねぇだろぅが!」

「……で、ですから……何度もお断りしたはずです……もういい加減にーー」

「……ぁぁあん?最初は優しく言ってやりゃ調子に乗りやがってよぉ、貴族に逆らってただで済むと思ってーー」



『ーー貴族だろうがなんだろうが、しつこいのよ!!……断られてるんでしょ?だったらさっさと引きなさいよっ!……ほんっーーとにっ!!……



 気持ち悪いわねっっ!!

 この〈クソ貴族〉っ!ーー』



 受付嬢に詰め寄る騎士を全力で軽蔑する言葉を放ち、場をシーンッとさせるメリー。

 実際、……パっとしない40代前後くらいの、〈おっさん〉と言って差し支えない見た目の男が若い娘に迫って、断られて、怒鳴り散らす。



 それを〈気持ち悪い〉と思うのは至極当然。

 というか、いい大人が恥ずしい限りだ。







「ーーんだと、誰だゴラァ!!ーー」



 騎士(クソ貴族)はようやく振り向いて、すぐさま怒気の満ちた赤い顔でメリーに向かってきた。


 そして、その間に老体は割って入る。



「おっと!取り込んでおるところ悪いが、部屋を取りたいんじゃがのう」

「ーーなっ!!デカっ……」



 騎士(クソ貴族)は割って入った大き過ぎる体躯の老体に思わず怯む。人相も怖いので尚更だ。



「ーーじゃ……邪魔すんじゃねぇよ!引っ込んでろ!クソジジイッ!ーー」

「落ち着いてくれんかのぅ、【名誉ある騎士】なんじゃろ?〈騎士とは弱きを守る者〉であろうに何をやっとるんじゃ、まったく……」

「う、う、うるせぇっ!こ、こ、この女が!……おお、オレに気がある素振りを見せるくせに何回も断りやがるから!仕方なく〈チャンス〉をくれてやってるんだよっ!!」



 老体はチラッと受付嬢の方に目線を向けた。

 すると、受付嬢は


【あり得ない!生理的に無理!全部無理!】


 と言わんばかりの顔で素早く首を横に振った。どうやら、この騎士(クソ貴族)の激しい思い込みのようだ。



『はい、ただの勘違い……ほんっと気持ち悪いっ!』



 メリーが〈大きな声〉でボソッと呟く。



「ーーおい!てめぇガキ!さっきからゴチャゴチャとーー」



 完全に頭に血が上ってしまっている騎士(クソ貴族)はメリーに殴りかかる勢いだ。



(……こうなっては仕方がないのぅ)



「なら【決闘】じゃ」

「は?」



 思わず疑問符を吐く騎士(クソ貴族)。



「騎士や貴族に【決闘】という伝統があるのは知っておるじゃろう?ワシが勝ったらその娘は諦めてもらうぞ?よいな?」

「ーーなにを勝手に言っ……ーー」

「おや?〈貴族様〉よ……こんな【老いぼれ】との決闘から【逃げた】となれば……家名の【恥】、社交界に顔を出せたものではないぞ?」

「ーーなっ!舐めやがって!【やってやるよ】クソジジイ!!」

「良し良し」(【言った】、これで決闘は成立じゃ)



 〈体面〉……そこを突いたら面白いほど簡単に喰い付いた騎士(勘違いクソ貴族)は決闘をあっさり承諾。



「見届け人は……そこのお嬢さんで問題ないのう?、本人に見てもらってこそお互いに漢を証明できるというものじゃ、ええかのう?娘さんや」

「え、っえ!?あ!あっ……はい……」



 本人は急な展開に思考が追いつかないままに見届け人の承諾も確認。



 ただ宿を取るだけのつもりが【決闘】する羽目になった老体。隣のイズは思いも寄らない状況にオドオドし、隣のメリーは鬼のような形相で不機嫌を顕にしている……というか殺意ようなものが出ていて手に負えない雰囲気だ。





「さて、あとは決闘方法を決めるかのぅ……」



 




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