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顔に出る







「ーーンナァァァンッッ!!」



 得体の知れない〈葉っぱのローブ〉に視線を取られている間に【尖金熊バイロン】はワシから離れていく。まるで助けを求めるようにその〈葉っぱのローブ〉にしがみつく。



『おーよしよし……ちっちゃいクマちゃんねー』



 あやしている。



「………………」(一体何者だ……?)



 見た目はあれだが、人間味がある。声は女性のような……。

 


 ……やはり人なのか?



『よしよし、ちょっと待っててねー』

「ーーナァァァ……」

『ーーあのー、この子……私に任せくれませんか?』



 こちらを警戒してか、刺激を与えないためか距離を詰めずに声を上げてこちらに話しかけてくる。



「うーむ……ちょっと待ってくれるかのう……」



 得体の知れない者の方へ少し歩く。

 話しづらいので注意しながらも半分ほど距離を詰める。



「……すまんが、アンタは一体……何なんじゃ?」

「急にすいません、私はーー」



《ーードサッーー》



 得体の知れないソレはいきなり倒れた。



「わわわ!すいません、ちょっと待ってください…………【話すのに集中して身体の方がおろそかに……やっぱり難しいな、距離が遠すぎるとダメみたい……】」

「………………」(一体……何を言ってるんじゃ……?)



 目の前のそれはゆっくり身体を起こす。手を使って上体を起こす……といった人らしい所作があるが何処か違和感が否めない。よく見るとこちらを向いているようでほんの少し方向がズレている。

 ……なんだか、



【別の誰かが操っている……ような印象を受ける】。




「人間……ではないのかのう?」

「わ、私は…………【人間】です、少なくとも私はそのつもりです」

「……わかった」



 得体の知れないソレの言葉を〈何故か〉すんなり受け入れてしまった。


 【嘘ではない】と信じたい自分がいた。



「人間というなら、どうして止めようとしたんじゃ……?それはモンスターじゃ……」(しかも特級クラスの……)

「……とても、【嫌】そうに見えたんです……」

「…………な、なんのことじゃ……?」

「この子を手に掛けようとした時のおじいさんの顔……とっても【嫌】そうでした、苦しそうとまで思いました」

「………………ワシが……」(そんな顔をしていたのか……)



 覚悟していたつもりだった、決断したはずたった……。

 なのに顔に出ていたとは……もしかしてずっと昔からもそうだったんだろうか……?



「ワシはその子から親を奪ったんじゃ……」(実際には違うが……その子からしたら誰がやろうが同じ人間じゃ……」

「そうだったんですね……」

「その子が大きくなったら人を襲う……じゃからワシはーー」

「【優しいんですね……】」

「……や……優しい……?」

「ずっと先の【知らない誰か】を助けるために、おじいさんは【嫌】を取ったんですね」

「……そうか……【優しいのか】……ホッホッ……考えもせんかったのう……」

「だから私にこの子を任せてください」

「どうするつもりじゃ?」

「まだ何も考えてませんが、良い方向へ行くようにしていくつもりです」

「良い方向か……。それは良いのう……、ならお願いしても良いかの?」

「もちろんです」



 内心ホッとした。



 モンスターとはいえ子供……。殺らなくていいならそれに越したことはない。



「……ではそろそろ行きます。【距離的にちょっとツライので……】」

「……わかった」(何言っとるかわからんけど)



 得体の知れないソレは【尖金熊バイロン】と共に背を向けて去ってゆく。



「ーーァァァンナッ!ーー」

「はいはい、一緒に行こうねクマちゃん……」




 手に持ったままだった肉剥ぎ用の包丁をしまいながら去る背中を見送る。



『あ、そうだ!』



 得体の知れないソレは最初の15歩ほどの距離で立ち止まってこちらを振り返り声をあげる。



『私、少し前からしばらく見てたので【おじいさんがやってない】ってことちゃんと分かってますよー!』

「………………」(【少し前】……いつから……?

もしかしてスラッシュグリズリー(親)の死体を発見したときには既に見ておったのか……?)

『あとー!こんな得体の知れない私とお話してくれてありがとうございました!それではー!』



 葉っぱのローブの下に隠れた手を振るような動作をしてまた背を向けて行ってしまった。


 

「…………ふぅ…………本当になんだったんじゃ……アレは」(得体の知れない自覚があったんじゃのう……)



 



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