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魔巧具





「………………」

(うーむ、そんなに似とるんかのう?自分ではわからん……)



 必要な物だけ用意して立ち上がる。



「よし、ちょっと行ってくる」

「あの!て、手伝います」



 イズが申し出る。



「いやいや、本当ちょっと見てくるだけじゃから。ここで待ってておくれ」

「……わ、わかりました」



 少ししょぼくれるイズ。だが食後でちょっぴり眠たそうだったので、嬉しい申し出だったが断った。



「……ちょっと!もう結構暗いけど帰って来れるの?」

「おお!そうじゃそうじゃ!良う言うてくれたメリー」

「??」



 メリーに呼び止められて、自分の荷物パンパンリュックのサイドフックから小さなカンテラを取り外した。



「ほれ、メリー!これに魔力込めてくれんか?少しでええからのう」



 カンテラをメリーの前に差し出す。



「……?」



 不思議な顔をしながらも魔力を注ぐメリー。



 ……が、カンテラにはなんの変化もない。



「え、光りもしないし、なんにも起こらないんだけど?」

「これでええんじゃ。メリーや、自分の指に魔力を纏って親指と人差し指の先をくっつけて輪を作ってくれるかの?」



 矢継ぎ早の指示に困惑しながらも従うメリー。



「え?……えーと…………こう?」

「そうそう。ではその輪を通してこのカンテラを見てくれるかの?」



 メリーは輪を作った指以外をピンと立てて、輪に視線をくぐらせるように〈眼〉の前にそれを当てる。自ずと反対側の目を瞑ってカンテラに視線をやる。



「おおおお…………光ってる!」



 純粋に感動してはしゃぐ様を見せるメリー。



「これ、さっき言ってた【魔巧具アーティファクト】ってやつなの?」

「そうじゃ。魔巧技師の祖母が作ってくれて、それに魔巧師の祖父が細工を施したものじゃ」

「凄いけど……これ……何の意味があるの?」

「ホッホッホ!それはのう……」



 疑問の投げかけるメリーに此処ぞと得意げにカンテラの真価を語り出す。



「このカンテラの光は物質を【透過】するんじゃ。しかも、光の届く範囲はかなり広くてのう。魔力を注ぐ量にも影響するが、光が目立つ暗がりであれば王都の端と端に居ても充分に認識出来るほどじゃ」

「端から端って……馬車がなければ半日近くかかる距離じゃない!」

「ホッホッホ!」

「凄いおばあ様とおじい様だったのね……本当に凄いわ」

「…………」


 メリーが人を褒めることを珍しく思いながらも純粋に裏も表もなく祖父と祖母という職人を讃える言葉がとても嬉しかった。



 ワシは祖父と祖母が大好きだ。


 当時、数々の魔巧具アーティファクトを作り国に貢献したシュタイナー家はその功績を経て【子爵】を賜った。

 だが、その爵位にあぐらをかいて職人の腕を磨かず貴族達のご機嫌取りばかりに精を出す父と母はあまり好きではなかった。だから子供の頃は祖父と祖母にベッタリでずっと2人の工房を遊び場にしていた。

 祖父と祖母が亡くなった後……まともな魔巧具アーティファクトを作れないシュタイナー家は爵位を剥奪されてもおかしくないところ、祖父の古くからの友人である公爵の温情で〈降格〉、【男爵】にとどまった。





「……メリー」

「ん?何?」

「【ありがとう】」

「……?…………??」



 思わぬタイミングでの言葉に困惑するメリー。



「このランタンの光があれば、この場所に迷わず帰ってこれるという理由じゃ、メリーが注いでくれた魔力なら光もかなりの時間保つじゃろ」

「あー……そゆことね」



 少し微妙な顔で納得したメリーの傍らにソワソワしたイズが寄ってくる。



「………………」



 ランタンを真剣に見つめるイズ。それに気付いたメリーは魔力を纏った指で作った輪をイズの〈眼〉を前に当ててあげる。



「ほら、これで見えるでしょ?」

「っっ!!ぅわぁああ………………本当に光ってます!す、凄いです!綺麗です!」

「ホッホッホ!」(ええリアクションするのう)



 すると、メリーがギョッ!とする。

 感動するイズの後ろにダンキュリーがいたからだ。



 なんだか……ソワソワしている。



「いや、アンタは自分の魔力で出来るでしょ!?」



 思わず突っ込む。



「あー……言っただろ!?オレは……爆砕魔法(ヴォルグしか出来ねぇんだよっ!だから……あれだよ……〈指に魔力を纏う〉とか……良くわかんねぇんだよ……」



 ちょっとだけキレながら照れてボソボソと話すダンキュリーをメリーは一瞬鼻で笑う。



「ハンッ!……もー、しょうがないわねぇー……」

「おう、頼むわ」



 ダンキュリーはメリーに促がされるまま近くに寄る。



「ちょ!立ってないでしゃがみなさいよ!大っきいんだから届かないでしょ!?」

「お?おう!」



 イズにしてあげたようにダンキュリーにもしあげるメリー。



「うおっ!!うははスゲー!どーなってんだこりゃあ……そうだイズ!こっちに来て立ってくれ!」

「あ!え?はい!」



 無邪気にはしゃぐダンキュリーに困惑しながらイズがランタンとダンキュリーの間に立つ。



「うお!ホントだ!透過してやがるっ!!これスゲーぞ!じいさん!」

「え!?透過してるとこ私も見たい!」

「あっ!ぼ、僕も見たいです!」

「ホッホッホ!楽しそうでなりよりじゃ……ホッホッホ……」







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