見る
「あの魔法ってのは【ヴォルグ】のことか?」
「そ、そう!アレを実戦レベルで使える魔導師なんて見たことないわ!とんでもない魔力量と複雑な座標計算と精密な構築回路が……それに遠隔で収束させるイメージが大変で……あと、それと…………」
まるで水を得た魚のように魔法の講釈を垂れ流すメリー。
「ゴチャゴチャ何言ってるか知らねぇけどな、【何か】出来ちまったんだから詳しいことはわかんねぇよ」
「ななな【何か】出来ちまったって……」
ワナワナと身体を強張らせるメリー。
同年代の誰よりも魔法の才に恵まれ、教鞭をとる大人達でさえメリーに及ばない……そんな環境にいたメリーが師であるザビティ・グレン以外で初めて劣等感を感じるほどの【才】を目の当たりにした。
……まあ、簡単に言うと〈悔しがっている〉ようだ。
「とても良い機会じゃ、ダンキュリーさんにお願いして魔力を【見させて】もらったらどうじゃ?メリー」
「え?どゆこと?」
すぐその意図を察せずに聞き返すメリー。
「ダンキュリーさんの魔力の性質は【爆砕魔法】と完全一致していると言ってもいい……つまり……
「ーーつまり、アタシがそれを見て覚えたら同じことか出来るってわけねっっ!!ーー」
急にドヤ顔と大きな声量で人の言葉を遮るメリー。
「う、うむ……まあ大方そうゆうことじゃ」
メリーは機械的な速さでグリンッと顔をダンキュリーの方向へ向ける。
無言のままダンキュリーに近づいていく。
「な、な、な、なんだよっ」
「…………」
メリーの目があまりにキマっているせいでダンキュリーはたじろぐ。
超至近距離まで来たところで、ちょっと恥ずかしそうにするメリー。
「さ、……触っても……いいでふか?」
「ーーいや、言い方!!ーー」(しかも噛んだのう)
すかさずツッコミを入れる老体。
また何か失礼をするかも知れないと目を見張っていたが……案の定だった。
困惑した顔で助けを求めるように老体に目線を送るダンキュリー。
少し不憫だ。
「ダンキュリーさん、この子は魔法の勉強中でのうアンタの珍しい魔力を見させてやって欲しんじゃが、ええかのぅ」
「魔力を……【見る】?」
流石に【見る】という言葉に疑問を持つダンキュリー。それこそ魔法の才覚の最たるもの、だからだ。
「まあ、いいけどよ……」
「あ、ありがとう!」
【見る】に半信半疑だが了承するダンキュリーに笑顔を見せるメリー。
「…………で何すりゃいい?」
「さ……触ります……」
「お、おう」
異性との関わりに疎いメリーは少し照れる。
メリーはダンキュリーの腹部に手を当てる。
「………………」
「………………」
直ぐに照れはなくなり、真剣な顔をするが瞬く間に怪訝な表情に変わる。
「…………?」
様子がおかしいので、老体も近くまで行って見る。
「あー、なるほどのぅ……」
「なんだ?問題あるのか?」
「ダンキュリーさん、この服は……アレかの?」
「対炎魔法の効果が施されてる、自分の魔法で火傷しねぇようにな」
「ということじゃメリー」
「あ、そうゆう……。……なんか変だと思った……」
怪訝な顔から安堵して気を取り直すメリーの側で
服を捲ってバキバキに割れた肉厚な腹筋を露わにするダンキュリー。
「キャッ!!ちょっ!」
恥じらう乙女。
「なんだよ服の上からじゃ無理なんだろ?だったらこうするしかねぇだろ、嫌ならもう見せねぇぞ?」
「あ!いや!見ます!」
機会を失いそうになったので必死にとりなすメリーは改めてダンキュリーの腹部に触れる。
「………………」
メリーの目が一瞬驚いて思案するように落ち着いていく。
「す、すご……とんでもない魔力量に……【赤黒い色】の魔力流…………」
ブツブツ言いながら夢中になって両手の平をダンキュリーの腹に沿わせるように撫でる。
「………………ちょっ」
ダンキュリーが再びたじろぐのも気付かずに何処にも焦点の合ってない目で行為を続ける。
「あ、待って!赤黒の中に【ドロドロ】した【金色】の筋が無数に広がってる……」
「……お、おい。まだ続くのか……」
行為はエスカレートする。ダンキュリーに抱きつくような形で後ろに手を回して服の中に手を入れて背中を撫で回す。当然、本人にその自覚はない。
「金色の筋が生き物みたいに脈打ってる……」
「ちょ!おいジイさん!なんとかしてくれ!」
「おお!すまんすまん!こっちも思うところがあって止める考えに至らんかったわ、ホッホッホッ!」
ダンキュリーに言われて直ぐにメリーを引き離した。
「あ!ちょっ!!!……っと」
「困らせちゃいかんぞぅメリー」
「……………………」
メリーは夢から醒めたようにボーっとして、ふわふわとした面持ちをしている。頭の中で情報を整理しているようだ。




