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全部雑魚!





「おや?どうしてそう思う?」



 至って冷静に問いを問いで返すが、内心はかなり驚いていた。

 こんな筋肉質でデカい図体の白ヒゲのジジイをスラッシュグリズリー(モンスター)と間違えることはあっても【魔術師】だと思う者はまず居ない。だからこそ、この子は根拠があってそう言っている。



「どうして?って、魔力の流れ方が一般のそれとは全然違うわ」

「ワシに【内在する魔力】のことを言っておるのか?」

「あっったりまえじゃないっ」



 ……あっったりまえ、ではない。

 放出された魔力ならまだしも、他者に【内在する魔力】なんざ大抵の術師はほとんど何も感じ取ることも出来ずに一生を終える。



 この子は間違いなく異常てんさいだ。



「……お嬢さん、お名前を聞いてもよいか?」

「メリー……【メリー・ザルクレア】よ」

「はじめましてメリー。



 ワシは、【キュベレー・シュタイナー】



 先輩であり旧友である【ザビティ・グレン】から弟子を頼むと手紙を貰った…………何があったのか聞かせてくれるか?」



「師匠の……友達?」

「そうじゃ」

「…………いきなり襲われたのよ。あーーもーー!思い出したらまたムカついてきた!」



 少し遅れた自己紹介の流れで【魔導卿】の名を出した直後、メリーの目からは驚くほど警戒心が消えた。

 そして、ここに至るまでの経緯を眉間にシワを寄せて語ってくれた。



 上級魔導師(白の3本線)とはいえ、まだ一応学生であるメリーは魔導院アカデミー教育課程カリキュラムをこなす一方で軍務を言い渡されることもあるそうだ。

 そして城下町外周に1級モンスターが出たと報告があり、上級魔導師であるメリーに召集がかかった。他の魔導師と騎士を連れてくるから先に行って足止めしといてくれ。と伝令の者に言われて「アタシ1人で全部片づけてやるわ!」と意気揚々と単身現場に向かうと、待ち伏せしていた怪しい連中に囲まれて襲われた……ということらしい。



「ちなみに何人くらいおったんじゃ?」

「5人か6人くらいよ」

「格好は?」

「みんな灰色のローブをして顔は目だけ出してほとんど隠れていたわ」

「他に気付いたことは?」

「ちょっと!質問攻めにしないでよっ…………あ!アイツら魔法の対策をちゃんとしてたわ。そーでもなければ、あんな連中相手にアタシがゲート使って逃げたりしないわ!……で、逃げた先も知らない場所だし!!肉屋だし!!なんなのよ!もうっ!!!!」

「落ち着けお嬢さん」

「お嬢さんはやめて!メリーよ!」 

「す……すまんのぅ」



 ……先輩、アンタの弟子……めっちゃ怖いんじゃが。今の子みんなこうなんかのぅ……。気ぃ強いしぃ、ちょっと嫌いじゃ。



「メリーや、お前さんの師匠から貰った手紙に転送石ゲートトープが入っとった。ここに意図せず飛んで来たのはそのせいじゃろう。おそらく、対になるもう一つを師匠から貰って身につけてたりするんじゃないかの?」

「………………あっ」

「身に覚えがあるようじゃの」



 メリーは左の髪を耳にかけてイヤリングを触る仕草をする。加工されて分かりづらいが良く見ると転送石ゲートトープだ。



「これ師匠の魔力が籠もってるから気にいってたのに……魔力がほとんど無くなってる」



 しょんぼりするメリー。



「消耗したんじゃろ。師匠からの贈り物には変わりないんじゃから大切にな」

「うん、……そうよね」



 怒ったり、落ち込んだり、忙しい子じゃのう。



「ところでメリーは……貴族か?」

「違うわ!貴族なんかと一緒にしないで!」

魔導院アカデミーに上級魔導師は何人おるかの?」

「いないわ!アタシだけよ!他は全部雑魚よ!」

「…………」

「なによ!」

「……いんや」



 なんじゃこの子……。


 まあいい。なんとなくじゃが襲撃者の見当がついたかも知れん。



「メリー、たぶんなんじゃがーーーー」





 《ーーガチャンーー》




 メリーに考えを伝えようとした瞬間、店の入口の方から音がした。締め忘れて客でも入って来たのか……確認するために億劫な重い腰を上げた。



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