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特稀魔法





「ーーな!何、命令してんのよっ!」



 迫るソルリザードに焦りながらもイズを威圧するメリー。



「ーーええからもっかい打ってみいメリー!もうそこまで来とるぞい!」(何か策があって言っておるようじゃのう)

「ああ!もう!わかったわよっっ!!」



 見た目の怖さと年配というのもあってメリーは老体の言うことに割と逆らえない。すぐさま魔導杖を構え詠唱する。



「ーー氷結さざれ……ーー



 詠唱中、老体に抱えられたイズはメリーに向かって来るソルリザードに視線を向け、逸らさない。直後イズから魔力を感じる。



『【必中座標ブラックバンカー】』



 イズが唱えた、そのすぐ後に



「ーーコダン・クールッッ!!ーー」



 メリーが魔法を放ち、再度4つの氷塊をソルリザード達に向かって飛ばす。



 蛇のように独特の動きで勢いよく迫るソルリザード達は難なく氷塊を避けるように見えた……



 が、その氷塊は……





『ーーシャァァアアア!!ーーーーグッッ!!ギシャァァアアアア……ーー』



 ソルリザードの避けた先に見事に進路を変え、〈4体全てに命中する〉。突き刺さる氷塊はソルリザード達の傷口から身体中に霜を広げていき、即座に息の根を止め凍り漬けにする。



「ーーな!何っ!なんでっ!?ーー」



 結果としては申し分ないはずだが、状況に理解が追いつかず疑問を零すメリー。



「ーーおお、これは……なるほどのう」(イズくんは……特稀魔法エドマジックを使えるのか……やはり【ブリード】か……」



 考えを巡らす中、眼前のソルリザード2体が倒されてしまった他の4体に視線を取られるの老体は見逃さずに行動を起こす。イズを抱えて両手が塞がっているため、ソルリザード2体の内1体を素早く蹴り遠くへ飛ばす。



「ーーどっこい!ーーしょ!っと……」

「ーーえっ!?す、す……っご!……えっーー」



 およそジジイの動きとは思えぬ動きと蹴りの威力にイズは驚いて目と口をパクパクさせる。



 呆気に取られるソルリザードの残った方は一瞬止まる。その頭上にジジイの〈膝〉が迫っているとも知らずに。



『ーーシャァ……ーーーーガッッッッ!!ーーッ!!……ア…………ァ…………ッ……ーー』



 電光石火の速さで移動するジジイのニードロップはソルリザードの顔面を潰し、地面を鳴らす。



「おおーいっっ!メリーや!最後の1体頼んでもええかのうーー!?」



 顔面を潰されたソルリザードは完全に沈黙しているが蹴り飛ばされた方はまだ全然生きていて、態勢を立て直して攻撃をしかけようとまさに今迫ってきている。蹴られた恨みなのか、その矛先は老体に向かっている。



「もう!人使いが荒いんだから!」



 文句を言いながらも老体の近くに移動、カバーする形でソルリザードの前に出る。



「アタシだって……いいとこ……見せて……やるわっっ!!……



 ーーダンクール・デルタッッ!!ーー」



 目の前までソルリザードを引き付けてから魔法を唱え、メリーは魔導杖を地面に突き立てる。すると、突き立てた箇所から前方扇状に地面が凍り付いていく。



『ーーシャァァアア……シャァァアアッッ!!…………シャ…………ーー』



 素早く這う様に移動するソルリザードは凍り付く地面にしっかり張り付いてしまって身動きが取れない。虚しく鳴き声だけ響くが、次第に全身が凍り付いて絶命した。



「やるのうメリー!!状況に応じた正しい魔法の選択じゃ。それなら避けるのは難しいからのう」

「ーーッッハァーーーー!」



 見た目よりずっといっぱいいっぱいだったメリーは緊張の糸がほぐれて大きなため息が出る。そして、その場にヘタりと座り込む。



 まるで前衛がいる前提でしか戦闘経験がなかったようなメリーの動きに最初は不安を感じたが、それを差し引いても余りあるポテンシャルが彼女にはある。今回の経験が良い気付きになれば幸いだ。



 老体は抱えていたイズを降ろしてメリーに近づいて労う。



「お疲れさん、助かったわい。ありがとうのう」



 ポンポンとメリーの頭を撫でる。



「……っ!……ゃ……め……てよっ」



 歯切れの悪いメリーは撫でらた頭から老体の手をテイっと払う。……だが、嫌がっている割に口元が緩んでいる……ように見えた。



「立てるか?手を貸そうかの?」

「大丈夫よ。自分で立てるわ……ありがとう」





 ーードサッーー





 音がして振り向くとイズが倒れていた。


 


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