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第92話「期待と不安は紙一重なのか、それとも本当は同じものなのか」

 ともあれ、斯くしてオリコンならぬ俺コンのベスト3には入る楽曲を歌い出したのは良いのだが、百歩譲ってそれだけならまだしも、併せてこの様な下らない思考をも随時行っていては、本来の目的であるゲームのプレイの精度がそれに集中している時よりも大幅に下がる事は当然だった。


 というよりも、ゲーム内のキャラクターが何もせずに突っ立っている時間が頻発している等、最早ゲームをプレイしていると言って良いのかという様な状況だったが、現在こなしている作業がゲーム内での義務に近い事から仕事と表現してはいるものの、当然ながら実際に俺がそれを生業にしている訳ではない為、無論その事が何か問題になる訳ではなかった。


 尤も、このゲームは仮にもオンラインゲームであり、NPC、つまりゲーム内に元から用意されているキャラクターを除けば、他のキャラクターそれぞれに対して実際にプレイしている人間がいる為、無論そのプレイヤー達に迷惑が掛かる様な場合にはその限りではないのだが、現在行っている作業に関してはそれには当てはまらないので、たとえ結果的に電力その他がどれだけ無駄になっていようとも、やはりそこには何の問題も生じてはいなかった。


 まあ、無駄な事が分かっているならば並行するのを止めて、ゲームか歌うかどちらかに絞れば良い、と言われればその通りとしか返せないのだが、現状に到った経緯を考えればそうする訳にはいかなかった。このゲーム内の作業を単体で続ける事が困難になったからこそ、それを打破する為に俺はこうして歌を歌い始めたのだ。


 それはさておき、先述の通り作業が進まない原因を既に理解していた俺は、それを解決する為にその原因を取り除く事にする。則ち、少なくとも自分史上ベスト3に入る様な楽曲であれば、それ程意識を割かずとも自然に歌う事が出来る為、俺は余計な思考を止めて自らの意識をゲーム側に集中させるのであった。


 その甲斐もあり、途中でまた再生し始めた楽曲を何度か飛ばすという事を挟みながらも、やがて俺はこの一連の週課を終わらせる事に成功する。いや、それは厳密にはいくつかある週課の内の一つに過ぎないのだが、何はともあれ溜まっていた作業の一つを片付けた事は確かであり、俺は音楽の再生を止めてイヤホンを外すと、半ば無意識に満足の溜め息を一つ吐いていた。


 なお、そんな直ぐに飛ばしてしまう様な楽曲であるならば、最初から機器に入れる必要は無いだろうという話であり、それは至極尤もな話ではあるのだが、無論そうせずにいる事、則ち飛ばしてしまう様な曲もわざわざ機器に登録している事には確かな理由が存在していた。


 尤も、実際にそこには確かな理由がありはするのだが、ではそれが妥当な理由かと問われれば、その考えは人によると答えざるを得なかった。則ち、再生時に飛ばしてしまう様な曲であっても機器に登録してあるのは、俺がこれまでに購入したCDや音楽データの全てを分け隔てなく登録した為なのだが、その行為の是非についての判断は人によって異なって然るべきだろう。


 なお、一応は登録しておくのは兎も角としても、この音楽プレイヤーにはプレイリストという便利な機能があり、毎回の様に飛ばしてしまう様な楽曲とそうでない物は分ける手段は存在しているので、それをしていない事に関しては俺の怠惰以外の何物でもなかった。まあ、仮にそうやって分けた所で、結局は気分によって曲を飛ばすという行為が無くなる訳ではないのだが。


 ともあれ、斯くして一つの作業を終えた俺は次にする事を考え始めようとするが、そこでふと思い付いてそれを中断すると、現在の時刻を確かめる為に時計に目を遣……ろうとしたが角度的に此処からはリビングのそれは見えず、パソコンも付けていなかったので仕方が無くスマートフォンのそれを確かめる。尤も、その互いの仕様の差から、寧ろ正確さでいえばスマートフォンの時計の方が余程優れているのだが、画面に表示されたその正確な筈の時刻に、俺は一瞬だけだが我が目を疑う。


 十四時三十分。いや、冷静に考えれば妥当な時刻ではあるのだが、個人的には未だもう少し早い時間であると思っていたものの、どうやら先の作業の効率が思っていた以上に悪かった様である。まあ、先程は歌を歌いながらゲームをプレイしていた、というよりも、ゲームを起動したまま歌を歌っていた、といった方が正確な程だったので、言われてみれば仕方が無いと納得するしかないのだが。


 ともあれ、現在の時刻を知った俺はそれも加味した上で次の自身の行動を考え始めるが、ゲーム自体は起動しているとはいえ既にコントローラーは置いており、音楽の再生とそれに伴う歌唱をしている訳でもない、則ちその思考に意識を集中しているもかかわらず、その行動は中々に難航していた。


 とはいえ、実際にはその理由を俺は既に何となく察しているのだが、それを素直に認めるという事は、俺にとってはこの難航している思考よりも余程難しい事だった。しかし、その脳内での無駄な抵抗を嘲笑うかの様に、俺はこの胸の辺りにその仮説を証明する様な感覚を覚えていた。

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