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第64話「凄く古いコンピューターゲーム」

 ともあれ、大まかな配置を考えた俺は箱の中身を取り出すと、その脳内でのイメージ図……は作れないのでそれを言語化したものを頼りにして、それらの電子機器を食堂のテーブルの上へと配置していく。その途中、思ったよりもゲーム機本体が場所を取ったり、コード類の長さの関係で多少その予定からは修正があったものの、直に概ね満足のいく配置が出来上がる。


 尤も、この配置をその様に評価する人間は、そもそもこの場所が食堂であるという事も踏まえるとこの世界でもかなりの少数派であろうが、別に他の誰に見せる予定がある訳でもなし、俺自身の利便性に沿ったものであればそれで良いだろう。


 という訳で、思ったよりも順調に荷解きが進んでいく事に気を良くした俺は、早速次の荷物へと移行しようとするが、そこで未だ今回の作業が終わっていない事に気付く。というのも、例のオンラインゲームに使用する機体は常用する為に配置したのだが、その箱の中には未だいくつかの、その殆どが古い物であるゲーム機やそれ用のソフトが残されており、先ずはその処遇を決めねばならなかった。


 まあ、別にテーブルの上やその付近、則ち窓枠の前にある俺にとっては謎のスペースには未だ配置する余裕が無い訳ではないのだが、既にプレイする頻度も極めて少なくなっているそれらを此処に置いて結局は埃を被らせる位なら、帰郷を機に少しの間はお休みして貰うというのも悪くない選択だと思えた。


 と、概ねその様な思考により箱に残されていたそれらのゲームの類の処遇を、再度為された同様の思考に基づいて決定すると、俺はその歴戦の勇士達が入った箱を持って和室へと向かう。そして、押入れの襖を開き下部に空いていたスペースを見付けると、慰労の意と共にその箱をその場所に安置する。


 もしかしたら、もう二度とそれらのゲームをプレイをする機会も無いという可能性もあるのだが、だからといって処分するという考えを欠片も持たないという程度には、俺はそれらに対する強い思い入れを持っていた。


 所謂デジタルネイティブ世代……よりは少々前の時代の人間ではあるのだが、俺という存在はそれらのゲームと共に育って来たと言っても過言ではなく、特にその中でもスーパーな機体のソフトの数々に対しては、今でも歴代でも最高のゲームであったという評価を抱いている程である。


 いや、それなら封印するのは違うのではという話ではあるのだが、どれだけの名作小説でもそう何度も読もうとは思わない……とは言わずとも、やはり一度でも読了した作品は先が分かってしまい最初の時と同じ様には楽しめない様に、名作のゲームであっても精々二、三度もプレイすれば満足してしまうというのは仕方が無い事だろう。基本的にロールプレイングゲームを好む俺であれば尚更である。


 尤も、中にはそれでも定期的にプレイしたくなる様な物も含まれているのだが、それについては今回の措置に到ったのにはまた別の理由があった。則ち、流石にこれ以上そのゲームに時間を費やすのは人としてどうだろう、という思いを実を言えば前々から持っていたという事もあり、良い機会という事でこうして他のゲーム共々押入れに仕舞い込んだ、という訳である。


 ともあれ、斯くして一つ目の荷物を完全に片付け終えた俺は、今度こそ次の荷物もそうする為に玄関へと向かうが、今度は珍しくわざわざリビングを経由する事は無かった。いや、どう考えてもその方が正常な動きではあるのだが、それが俺としては珍しい行動である事は確かだった。


 それが俺にしては珍しい行動である理由、則ち俺が普段は和室と玄関を直接行き来はしない理由は自身でも良く分からないのだが、その珍しい行動を今回は取った理由は既に判然としていた。則ち、此処までの荷解きが思ったよりも順調に進んでいる事により、格好付けて効率を追求しようなどと思った結果、俺は普段とは異なる行動を取ったのであった。


 尤も、どちらのルートを通ろうと精々数秒の差しか出ない上に、そもそも普段の行動の方が非効率であるというだけなので全くもって欠片も格好付けられてはいないのだが、もしこれを機に今後は此処を通る事への抵抗が無くなれば、まあこの行動にも意味を見出す事は出来るだろう。


 ともあれ、玄関へと辿り着いた……という程の距離を移動した訳ではないが、兎に角玄関に来た俺は次の荷物を適当に選ぶと、今度はこの場でその上部を閉じているクラフトテープを素手で破り、その段ボール箱を開封する。というのも、先程運んだ荷物は重さからその中身が分かっていたのだが、残る荷物のそれにはそう大した差がある訳ではない為に、実際に確かめるまではその中に何が入っているのかは分からなかった。


 そういった理由によりこの場でその段ボールを開封した訳だが、その中身は何というか、先程のそれとは異なり何の感動も無いというか、特に面白みの無い物……則ちただの衣類であった。いや、引っ越しの荷物の開封に面白みを求める方が間違っているのは無論分かっているのだが、その衣類自体も何の面白みも無い無地で地味な色の物ばかりな事もあり、先程の思い出に満ちた荷物との落差には俺も落胆を隠す事は出来なかった。

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