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第63話「人間だけがそれを出来る!」

 それはさておき、状況の字面だけを見れば俺は二連続で予定よりも早く目が覚めた、もとい目を覚ませられたという事になる訳だが、その二回の睡眠時間を合計すれば、まあ一日分のそれとしては十分だとも言えなくもない程度にはなるという事もあり、少なくとも現状では心身共に意外と健康というか、特に大した問題は感じられなかった。


 尤も、ぎりぎりで一日分程度の睡眠時間は賄えたとはいえ、その前の仮眠を含めても慢性的な……どころか昨日分のそれの不足すら補えてはいない為、それはあくまでもそれ程大きな問題は無いというだけで、言葉では説明し辛い何となくの不調が一切無いという訳ではないのだが。というよりも、悲しい事にその様な不調がすっかりと消えた事など、少なくとも此処数年では殆ど覚えが無いので、もうそれがデフォルトになってしまっているのかもしれない。


 とはいえ、それが当然という状態を何年も続けていれば、無論人はそれにも慣れて来るというものであり、実際に俺も最早その事をあまり気にしてはいなかった。いや、たった今それと矛盾していた様な気もするのだが、あくまで「あまり」気にしていないというだけで、少なくとも今回の睡眠不足の様にそうするに値する理由がある際には、寧ろ全く気にしない方が不自然というものだろう。


 ともあれ、こうして予定外の早さで午前の内に目を覚ましてしまった訳だが、流石にもう一度寝直す気にはならず、また仮にそれを望んでもどうせ似た様な事になる、どころかそもそも眠りに就けるかも怪しい所である為、俺は漸く身体を起こしてこの浮いた時間をどの様に活用するかを考え始める。


 だが、その直後には判明した事は、こうしてわざわざ考える程その選択肢は多くはないという事だった。というのも、先ず大前提として春菜の訪問までが俺に与えられた自由時間なのだが、本日が平日である事と一般的な高校の終業時間を考えればある程度の予測は可能とはいえ、それが何時になるかは正確には分からなかった。要するに、ある程度の時間以降は、直ぐに中断出来る事にしか時間を費やせないのである。


 そして、その頃までに最低でもしなければならない事として、まあ人として当然の事ではあるのだが、昼食を取らなければならないという事もある。則ち、これから春菜が訪れるまでの間、あまり長い時間を要する事をするのは難しいという事になるので、その選択肢は最初からかなり狭まっているのだった。


 しかし、ではそうでなければ、則ち仮に今日が丸一日全て自由時間であったとするならば、俺の行動には数多の選択肢があったのかといえば、それを自信を持って肯定する事は出来なかった。いや、実際にはこうして田舎に、つまり自然に溢れた環境に帰郷した事で増加した選択肢はそれこそ数多に存在しているのだが、少なくとも転居直後の現在に於いては、結局はそういった選択肢を排除していたであろう事は想像に難くなかった。


 何はともあれ、俺はその狭い、則ちゲームをするか家事をするという程度しかない選択肢の中から、先ずは自らの生活の環境を整えていく事を選ぶ。それはものぐさを自称する俺としては我ながら珍しい選択ではあるが、やはり故郷への帰還が精神に良い影響を与えたのか、或いは久し振りに美しい女性との交流を果たし、しかも今後にもそれが続くという事に浮かれているだけなのかは分からないが、それを選ぶ事には特に何かしらの逡巡すらもありはしなかった。


 という訳で、俺は今後の為にも生活の環境を整える事にした訳だが、先ずは荷解きから始めようというのは良いものの、そこは流石は俺とでも言おうか、その中でも一番にそうする事を選んだ荷物はさもありなんという物だった。


 則ち、俺は和室から例によってわざわざリビングを経由して玄関へと移動すると、真っ先にゲーム機類が入った箱を持ってリビングへと戻る。そして、そのまま食堂の方まで移動すると、そこで下ろした荷物を開封して中身の配置をどうするかを考える。なお、一般的にはゲーム機類を食堂に配置する事は無いだろうが、ゲームをプレイする時には大抵同時に動画の視聴等を行う事を既に述べて来た俺としては、最早それ以外の配置は考えられなかった。


 尤も、パソコンとゲーム機を近くに配置する事は兎も角、それを食堂にするという合理性はあるのかという話ではあるのだが、最早食事をする際にも何らかの娯楽に触れていなければならなくなって来ているという事を措いておくとしても、一定の高さを持つテーブル類が他に無いのだからそもそも他に選択肢は存在しなかった。


 いや、別に炬燵の類でも、則ちリビングでも同じ事が出来るだろうし、テレビを配置する事も考えればその方がスペース的にも無理が無い事も確かなのだが、仕事場も兼任するという事になると、何となく椅子に腰掛ける形の方がそれっぽい気がするだろう。尤も、俺が椅子に座る際には胡坐を掻いたりする事も多い為、結局はその機能というか、椅子とテーブルの利点をそれ程活かしているという事も無いのだが。

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