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第18話「良くある精神病のチェックリストを目にする度に大体中途半端に半分くらいが当てはまる時の気持ちを表現する術を僕たちは未だ知らない」

 ともあれ、斯くして早くも個人的に理想的な暇潰しの形態……則ち動画を視聴しながらのゲームのプレイが不可能になった事により、俺は残る時間を潰す方法を考える必要に迫られる。いや、そのまま動画でも見ていれば良いという話ではあるのだが、先述の通り、その様な受動的な時間に長く耐える事は、俺には最早身体のレベルで難しくなってしまっていた。


 無論、それならば大人しく車にまで荷物を取りに行けば良いという話になるのだが、そちらもまた別の理由により俺には選ぶ事が出来なかった。というのも、結局車に荷物を取りに行く事になれば、それは先程の自身の風呂に関する一連の行動の全てが無駄になってしまうという事を意味しているのだが、それがどれ程に些細な事であれ、俺は可能な限り自らの手で過去の己を否定する様な事はしたくはなかった。


 となれば、当然ながら次はもう大人しく仕事を始めれば良いという話になるだろうが、やはりそれも概ね先の話と同様の理由により難しいと言わざるを得なかった。無論、今日は休日にするという既に決めた事を覆したくないという事もそうなのだが、そもそも幼少期から夏休みの絵日記を最終日付近になって漸く書き出していたタイプである俺には、時間に余裕がある段階で仕事をするなどという事が出来る筈も無かった。


 とまあ、面倒な事をしない理由を探す事に関しては世界レベルを自負している所を惜しげもなく見せたところで、喧しいそもそも最初から全部手前の都合じゃねえか、となるだけだろうが、まったくもって微塵も否定する余地は無い。だが、それがどれ程愚かな事だと分かっていたとしても、そういった自身の性質とは付き合っていくしかないのが人生というものだろう。


 などと綺麗に纏めてみた訳だが、当然ながら結局の所問題の一切は解決されておらず、俺は再度暇潰しの方法を考える必要に迫られる。だが、流石に同じ思考をもう一度辿る程には未だ俺の認知能力も衰えてはおらず、程無くしてその一つの手段を思い付くと……いや、厳密にはいくつか思い付いていた手段から一つを選択したのだが、兎に角それを早速実行せんと、先ずはパソコンの画面上で開かれていたインターネットブラウザを閉じる。


 そして再度それを開いた後、ブックマークの中から或る一つのサイトを選択すると、やがて画面上には美少女の姿といくつかの、自身の段位や行動の選択肢を表す文字列が映し出される。則ち、俺は久し振りにインターネット麻雀をプレイする事を暇潰しの方法として選んだのであり、パソコンのスペックの問題か、他のサイト等を開いているとその処理が非常に重くなってしまう為に、一度それを閉じて開き直したのであった。


 無論、それでは結局ゲームのプレイのみをする事になり、先程から散々述べている一つの事では満足に暇潰しを出来ないという事に矛盾するのだが、麻雀は数少ないその例外の一つなのである。というのも、これも先述の通りなのだが、ゲームに於いて集中を要する場合には動画等は必要ではない、というよりも寧ろそれが散ってしまう為に邪魔でしかなく、当然ながら数理的な思考を要する麻雀はその集中を多分に要する物に含まれる。


 更に、俺はかつてあまり勉強をせずともクラスでも上位の成績を収めていたタイプだったのだが、中学の割と初期の時点で数学だけはその限りではなくなった程度には能力が文系に偏った頭脳をしている上に、格好付けて一切の理牌(麻雀の牌を種別や順番毎に整理する事)をせずに打っているのだから、尚更他の事に意識を割く余裕などある筈も無いのである。


 尤も、それも例によって手前の都合でしかないのだが、ともあれそんな事を考えている場合ではない事は確かであり、やがて俺の意識は画面上の牌のやり取りのみへと集中していく。良く麻雀は所詮運ゲーだと言われ、そしてそれは真実でもあるのだが、だからと言っていい加減に打っていいものという訳ではない。あくまでも最終的には運が状況を左右するというだけであり、それを掴み取る為にも最善の選択をしていく必要があるのだ。


「はいクソゲー。牌操作もいい加減にしろよマジで。何で三面張で立直を掛けてシャボ、しかも片方を俺が頭にしてもう片方も一枚使ってる奴の追っかけに一発で振ってんだよ。言っておくが往年の俺なら既に画面を叩き割ってるからな」


 とか何とか格好良い事を述べておいて、そうして麻雀を打っていた俺はやがてマウスを叩き付けた後、

叫ばない程度の大声で誰に向けての物かも不明な暴言を吐き散らす。尤も、その発言の内容自体は正直に言えば至極真っ当な主張ではあると思うのだが、それが四十手前の大の大人の取るべき行動ではないという事は、世の万人にとっての共通認識だろう。無論、この俺も含めて。


 という訳で、その理不尽に対する未だ冷めやらぬ怒りを抱えながらも、俺は頭を冷やす為にテーブルに置かれたお茶をコップに注ぐと、それを一息で一気に飲み干す。それが奏功してやや冷静さを取り戻した意識の中、俺は或る一つの事を思い出していた。何故、その麻雀のプレイが久し振りであったのかという事を。

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