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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第四章

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98 これが新たなプロトタイプだよ

 さて、テストも終わったので、呼ばれていた王立魔導機関に行ってみるとしますかね。


「先生、王立魔導機関に行くので入場許可証をください」


「お前、今テストが終わったばかりだぞ。せめて結果が出るまで待てよ……」


 ベルゲル先生が呆れ顔だ。

 俺はただ単に時間を有効的に使いたいだけなのですよ。


「結果なんて、早くても明日ですよね? それに向こうも早く来て欲しいって感じみたいじゃないですか」


「まあ、そりゃそうだが……」


 俺は先生から入場許可証を受け取ると、テストの答え合わせをしているロワりん達に声を掛けてから自室に戻った。


 自室がある特別棟に戻ると、丁度鏡子さんが廊下を歩いてきたのに遭遇する。

 その彼女は沢山の本を両手で抱えていた。


「本の片付けですか? 手伝いますよ?」


「いえ、ミサキさんに借りた本です。好きに読んでいいとおっしゃられましたので」


 よく見たら全部BL本だった。

 俺は呆れつつも、両手が塞がっている鏡子さんのために部屋のドアを開けてあげる。


「ありがとうございます」


「どういたしまして。ところで、俺はこれから出掛けるので、誰か来たら応対をお願いしますね」


「承りました。留守はお任せください」


 誰かが留守番をしてくれているというだけで、こんなにも心強いとは思わなかったな。

 同室のピアリだって、いつもいるとは限らないし。

 現に今日はロワりん達のテストの付き合いで、みんな部屋を空けている。


 手早く身支度を済ませ、鏡子さんに見送られて部屋を後にした。

 外出手続きを終えて門を出ると、いつもと空気が違うのを実感する。

 考えてみたら、一人で外出なんて久しぶりだ。

 なんだかんだで、いつもみんなと一緒だったなと、少しだけ心細くなったのは秘密である。


 せっかくなので、少し遠回りをして街の様子を見てみようと、飲食店等が立ち並ぶ通りをブラブラ歩く。

 ちょっと小洒落た感じで、宿屋を兼ねている食事処の店先を見ると、オープンテラスに何やら見覚えのある三人組の女性がいた。


 前に冒険者ギルドで、メルさまと一緒にいた時に話し掛けて来た人達だ。

 冒険者として背中を押してもらったのだけど、なんだか変な話をされたので正直あまり関わりたくないんだよな。

 そのまま顔を見られない様に早足で通り過ぎる。

 三人は口喧嘩でもしていたのか、俺には気づかなかったみたいだ。


 そうこうしているうちに、王立魔導機関の研究施設に到着。

 守衛さんに入場許可証を提示し、首から下げるパスを受け取る。


「迎えが来ますので、少々お待ちください」


 守衛さんにそう言われてその場で待機していると、異世界転移者でもあるユキヒロさんが迎えに来てくれた。


「やあ、せっかくの休みなのに悪いね」


 申し訳なさそうに頭をかく。


「いえ、休みは昨日でしたよ。研究者の人達って、カレンダー通りの休みじゃないんですよね?」


「そうなんだ。僕達はシフト制や自己申告制の休みだから、曜日感覚とか狂っちゃって……」


 苦笑するユキヒロさんを見て、不規則な休みの人は本当に大変だなと思った。

 でも平日休みなら、普段混んでいる場所とかに空いてる時に行けるのは、少し羨ましいかも知れない。


「それで、今日はどんな事をするんですかね?」


「それは歩きながら話そう」


 先行するユキヒロさんについて行く。

 そして、前に案内された工場施設が見えてきた。


「前回からデザイン等をほぼ見直して作り直したんだ。それのテスト走行を君にも手伝ってもうらおうと思ってね」


 施設の中に入ると、以前に来た時と同じ様に多くの研究者や技術者といった人々が忙しなく働いていた。

 中には、俺に気づいて挨拶してくれる人もチラホラと。

 また充電器扱いされるんじゃないかと、少し不安になるのですが。



「これが新たなプロトタイプだよ」


 そんな俺の不安を知る由もないユキヒロさんが指し示したのは、軽トラからデザインが随分と進化した乗り物だった。

 ミニバンというかワゴンというか。

 それでもって、細かい部分の意匠等はこちらの世界寄りなので、なんとも形容し難い。


 それでも運転席があって、後部に荷室があるのは変わらない。

 街中を走る時には、先代の軽トラよりは世界観に馴染むといった趣だ。

 側面には『試験運転中 王立魔導機関』と書いてある。

 これで王都の中を走ったりするのだろうか。


 俺が新たな乗り物をまじまじと見ていると、開発部長のトクリフさんがやってきた。


「よく来てくれたね。今日はテスト走行をお願いするよ」


「こんにちは。この乗り物は製品化が近いんですか?」


 もし製品化したら絶対に欲しい。まあ、買えない値段なんだろうけど。


「うーん、まだ採算度外視の段階なんだよね。連続走行距離も王都内を走るだけなら問題が無い程度にはなったが、まだまだ課題は多いんだ」


 トクリフさんは腕を組んで難しい顔で答えた。

 馬車が当たり前の世界に、魔力で動かす乗り物はまだ時代が早すぎるのだろうか。

 普及への道のりは、まだまだ遠そうだ。


 ユキヒロさんが俺の肩にポンと手を置く。


「なので、今日は君の魔力頼みでひたすら走らせてみようって事なんだ」


 準備はできたので、乗り込もうって事らしい。


「今日は君から運転してみるかい?」


「はい。お言葉に甘えさせていただきます」


 運転席に座ると、座席の高さも一般的な馬車の御者台と変わらない感じになっている。

 走り出してみると、振動や乗り心地等は前回と雲泥の差だ。

 高級馬車レベルになっている。


 ユキヒロさんが言うには、『足回りの設計も随分見直した』そうだ。

 しばらく敷地内のコースをぐるぐると周ってみる。

 俺の隣ではユキヒロさんが端末で何かの数値を確認してノートにメモしている。


「大分慣れてきたみたいだね。……それじゃ、外を走ってみようか」


 なんだか教習所みたいなノリで敷地の外へ出る事になった。

 結構緊張するな。これで事故でも起こしたら洒落にならんぞ。


 その後は、馬車専用道路を馬車に交じって王都内を周回したり、高台にある山の手の高級住宅街まで走らせたりと色々な所を走った。

 途中で蓄魔(ちくま)石の魔力が切れるも、すぐに俺が充填して走行を再開する。


 そうして王都内をひたすら走り続けた。正直、このレベルなら普通に実用できそうだ。

 蓄魔石の問題も、俺なら大丈夫だし。



「いやあ、今日は助かったよ。こんなにも走行データが取れるなんて大助かりだよー」


 ユキヒロさんはノートにびっしりと数値を書き込んでいた。

 同乗中によく書けたな。俺なら余裕で酔うのだが。


「二人とも、お疲れさん。リョウヤ君、これは今日のお礼だ」


 トクリフさんが封筒を手渡してくれる。

 中身は……相場よりかなり高額なバイト代だ。


「こんなにもらっていいんですか?」


 俺はちょっと心配になった。

 いいのかな。今日はただ運転していただけなのに。


「ああ、構わないよ。これは君にしかできない仕事だからね」


 なんだかそう言われるとむず痒いな。

 ついでに今日思った事をトクリフさんに聞いてみた。


「ところで、これに乗合馬車みたいな客車を引かせる事は可能ですか?」


 大人数が乗れる客車を引かせれば、みんなで移動できる乗り物になるよな。

 ぜひとも作ってもらいたい。

 

「……可能だとは思うが、上からの許可が無いと勝手に作れないんだよね。こういうのが王立の厳しい所だな」


 そう言って、トクリフさんが溜息を吐いた。

 同様にユキヒロさんまで溜息を吐いている。


「そうですね。限られた予算内かつ、許可された範囲でしか研究できないのは本当に辛い。アイデアは沢山あるのに……」


 なんだかどこの世界でもこんな事はあるんだな。

 この世界には、こういう研究に投資をしてくれる人はいないのだろうか。

 って、こんな技術がポンポンと簡単に広まったら、世界が混乱してしまうかもしれないな。


 俺はその後、前回と同じく研究所の職員に充電器扱いされてしまい、ヘロヘロになりながら帰途についたのだった。




  ◆◆◆




 自室のある特別棟に戻ると、またもや鏡子さんと廊下で出会った。

 そして、また大量の本を抱えている。


「お帰りなさい。他のみなさんは、まだお帰りでは無いですよ」


「ただいま。その本って……」


「はい。ミサキさんの私物です」


 ミっちゃん、どんだけ集めてるんだよ!?

 というか、今までどこに隠し持ってたんだ!?


 飽きれつつも、両手が塞がっている鏡子さんのために部屋のドアを開けてあげる。

 なんだか、立場が逆になっている気がしてきた。


「ありがとうございます。思いの外、読書が捗りまして満喫させていただいてますよ。それはそうと、お風呂の清掃を忘れてしまいましたので、後はお願いしますね」


 それだけ言って、鏡子さんはすぐに鏡の中に入って行ってしまった。


 こんちくしょう! 当たり前の様に仕事を押し付けてんじゃねえか!!

 俺は結局、普通に掃除をする羽目になったのだった。

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