787 番外編 家族の結束?
毎度の季節ネタです。
今日は一年の最後の日である。
大掃除やらでバタバタしていたのだが、急遽両親と姉ちゃん達が訪ねてきた。
どうも年末年始は、城にお呼ばれしてるそうなのだ。
そんでもって、時間つぶしに我が家にやってきたと。
そういう時に限って、変にみんなが気を使って出掛けちゃったりするんだよな。
家族水入らずなのだろうが、家族以外もいたりする。
懐かしのチャラい神様と、リクルートスーツの女神様だ。
「いやあ、僕達はもう神様じゃないから、そういうのはやめてくれないかな……」
「本物の神の存在を知ってしまうと、今まで神を名乗っていた事がおこがましいというか……」
二人とも恐縮しきりである。
俺としても、二人に急に同等に接しろと言われてもやりにくい。
今更であるが、二人の本名も初めて知った。
チャラ・オカとリク・スイだそうな。
……まんまやん。
取り敢えず、チャラさんとリクさん呼びになった。
その二人は、両親の部下として南の大陸での入植活動に邁進してるそうな。
いきなり何も無い場所に放り出されて、さぞかし大変なのだろう。
サンルームでお茶をしつつ、二人に現地の事を尋ねてみた。
「やっぱり、森を切り開いたりして街や畑を作ったりしてるんですか?」
「僕達が今やってるのは、リゾート地の開発だね」
「冬になれば雪も降るので、スキー場の開発も急がないといけません」
想像の斜め上の回答である。そして、凄く羨ましいんだけど。
俺もリゾート地に行きたい。
「残念だけど、リョウヤ君は駄目だよ」
チャラさんがひどい事をおっしゃります。
「俺への嫌がらせですかね!? 『守り人』と戦って、みんなの生活がめちゃくちゃになったのは分かってるけど、いくらなんでもひどくないですか!?」
俺が訴えると、リクさんが困ったような顔をする。
「そうじゃありませんよ。セキさんが南の大陸に来られると、どんな歪みが発生するのか分かりませんから。そのための女神の結界でしょう?」
マジかよ。それも立派な嫌がらせだぞ。
地味にショックを受けてると、すぐ近くでお茶をしていた両親と姉ちゃんが驚愕の表情を浮かべている。
「そうだったのか!? 父さんもセキなのだが!!」
「母さんもセキよ!?」
「私もセキなんだけど!!」
うちの家族って、こんなノリだったっけ?
「皆さんではなく、リョウヤさんの話です!!」
「はっはっは。知ってて言っただけだよ」
「うふふ。ちょっとしたお茶目さんよ」
「リクさんって、いじり甲斐があるよねー」
うちの家族も大概だよな。リクさんが涙目である。
そんな事をやってると、妹のルインが国王の隠し子……じゃなくてサデリーナちゃんを連れてやってきた。
「お父さんとお母さんにお姉ちゃん、久しぶりー!」
「おお、少し見ないうちに、また大きくなったなあ!」
「元気でやっていたかしら?」
「うわあ……また私より背が伸びてるんだけど……」
少し前までは、姉ちゃんとルインは瓜二つの双子みたいだったのだが、最近はルインの方が成長してしまい、姉ちゃんの方が妹に間違われる。
再会の挨拶もそこそこに、ルインはサデリーナちゃんを連れて庭の方へ行ってしまった。
チャラさんとリクさんも、ルイン達のお守りで庭に行ったようだ。
ミニ精霊樹の根本では、既に幼女のよんちゃん達が待ち構えているので、サデリーナちゃんが早速追いかけっこを始めている。
その様子を両親が興味深そうに見つめながら俺に尋ねてきた。
「なあ、ルインの連れていた子って、何処の子だ? 近所の子供ではないだろう?」
「どこか気品のある子ね」
中々鋭いな。前の世界で伊達に技術者のトップだった訳ではないようだ。
「あの子は、国王のサイラントさんの母親なんだよ」
色々あって、若返り過ぎてしまったらしい。
「……そうか。あんな幼女を母と慕うとは、彼も相当疲れているのだろう」
「流石に国王ともあろう方が、表立って小さな子に甘えるなんてできないものね。リョウヤもサイラントさんに気を使ってあげるのよ?」
なんか知らないけど、両親の中でサイラントさんが幼女にバブみを感じているキャラになってしまった。
訂正するのも面倒なので、そのままにしておこう。
それはそうと、姉ちゃんが椅子に座ったまま不満そうに足をパタパタしている。
その仕草が可愛いと思った俺は、ちょっとヤバいかもしれない。
「姉ちゃん、ルイン達と遊びたいんだったら、遠慮しないで庭に行ってきなよ」
「……リョウヤ、私の事を馬鹿にしてるの?」
ジト目で睨んでくる姉ちゃんも可愛いぞ。
「冗談だっての。それで、どうしたんだ?」
「なんか、ズルいなーって思ったのよ」
「何がズルいんだ?」
「ルインの事よ。あの子はこれからどんどん成長するのに、私はこの姿のまま……」
「そうなのか? 単に成長が遅いとかじゃなくて?」
確かに姉ちゃんは幼い姿だ。
俺に甘えていた可愛い頃のルインと瓜二つである。
「それは、父さん達も申し訳ないと思っている」
「ルイはこのまま、ほとんど成長しない可能性が高いの」
なんだって?
「ほら、私達って以前は特殊な力を持っていたでしょ? その副作用なんだってさー」
確かに姉ちゃんは、時空間を渡るような凄い力を持っていた。
その力も、『守り人』が去った後に消滅したらしい。
「強すぎる力を持っていたからな。その分、副作用も大きかったのだろう」
「それに、母さん達でルイの体を色々調整していたから……」
「え? 何それ!? 私、初耳なんだけど!!」
姉ちゃんが驚愕の表情を浮かべているが、俺も初耳である。
もっとも、俺自身も既に人間をやめているような体なのだが。
「あーあ。このままじゃ、私はまともな彼氏もできないんだろうなあー」
姉ちゃんが冗談めかして言うが、親父と母さんが黙り込んでしまった。
きっと、色々と責任を感じているのだろう。
せっかく家族が集まったのに、こんな重い空気は良くない。
ここは俺が一肌脱いで、道化になりましょうかね。
「そんじゃ、俺が姉ちゃんの彼氏の代わりになろうかなー」
「えー? 本当にー? もし結婚できなかったら、リョウヤが一生面倒見てくれるー?」
姉ちゃんも空気を読んで、冗談っぽく返して抱きついてきた。
これで少しは重い空気も晴れてくれるといいのだが。
……しかし。
「リョウヤ、それは本気なのか?」
「リョウヤがその気なら、何も問題は無いわね」
……はい? 一体うちの両親は何を言い出すのでしょうか?
「実はな、今のリョウヤとルイには血縁関係がほとんど無いのだよ」
「ルイの肉体は、私達の遺伝子を元にして色々と手を加えていたし、今だから言えるけど試験管ベビーみたいなものなのよね」
いきなりのカミングアウトで、俺達は絶句してしまった。
うちの親の倫理観は大丈夫なのだろうか。
「だから、今のリョウヤがルイと恋人になっても大丈夫だぞ」
「戸籍の問題もチョチョイと手を加えれば、結婚も可能よ」
どうすんだよ、この空気。
姉ちゃんは俺に抱きついたままだし。
「……姉ちゃん?」
「あのさ、本当にリョウヤが私の彼氏になってくれるの?」
おいおいおい。
そんな上目遣いで見つめられたら、色々といけない気分になってしまうんだけど。
ぶっちゃけ、姉ちゃんとは子供時代でしか一緒に暮らしてなかったので、他人と言えば他人である。
思わず姉ちゃんの頭を撫でてしまった。
なんだ、この言い知れぬ背徳感は……。
「えへへへ……なんか嬉しいなー」
その反応は大変に卑怯だぞ。
「母さんや、これで肩の荷が一つ下りたな」
「ええ、ルイの事もリョウヤに任せれば安心ね」
一気に外堀を埋めてくる両親が悪魔みたいだ。
恐れおののいていると、遊び疲れたサデリーナちゃんを連れてルイン達が戻ってきた。
「あれー? お姉ちゃんがお兄ちゃんに抱きついてるなんて珍しいね。まさか、お兄ちゃんが強要してるんじゃないよね?」
俺の妹は、兄の事をなんだと思ってるんですかね。
チャラさんとリクさんが、不潔な物を見る目で見てくるんですけど。
「ルイン、違うよー。リョウヤは私の彼氏になってくれたのー」
姉ちゃん!?
いきなりの爆弾発言はやめてくれませんかねえ!?
「またまたー。お兄ちゃんのいかがわしい罰ゲームか何かなんだよねー?」
まあ、普通は取り合わないよな。
というか、いかがわしいってなんだよ。
結局、みんなが帰ってきた後に姉ちゃんが改めて俺の彼女宣言をしてしまい、年越し前に大波乱となったのであった。
まさかの実姉ルート……
本年もご愛読ありがとうございました。
皆様も良いお年を。




