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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
おまけ編 竜姫誕生

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779 わたくしのお仕事を手伝っていただけませんか?

 北の鉱山都市に、ベルガを復活させる為の器の材料があるかもしれない。

 だが、とんでもなく遠い場所である。

 飛行艇での行き来は、まだ年に一回程度の復旧率だそうだ。

 それだって、いつの予定かは全然分からない。


 最悪の場合、陸路で行くしかないだろう。

 北の大森林を抜けなくてはいけないが、個人的には大森林の獣人達とも交流を持てているので、危険は大方排除できる。しかし、こちらもどのくらい時間が掛かるのだろうか……。


 やらなくてはいけない事は色々あるのだ。

 竜牙の里の温泉宿開発や、王女姉妹のお手伝いが残っている。

 イリーダさんのは終わったが、まだセルフィルナさんとミヨリカさんの外交の付き添いだ。

 今すぐどうこうという話では無かったが、そろそろ動けみたいなプレッシャーは感じている。


 なので、長期間王都を留守にはできないんだよなあ。

 取り敢えずは、王室経由で鉱山都市に訪問云々の事を魔導通信で打診してもらおう。


 そう思っていたら……。



「話は聞かせてもらいましたの」


 いつの間にかテーブルの横で仁王立ちしているメルさま。

 まさか、鉱山都市へ連れていけと言うのか!?


「あ、ズルい!! 私もセッキーと行くんだから☆」


 珍しく二番手で現れたロワりんに続き、サヤイリスもやってきた。


「鉱山都市へ竜ミスリルを探しに行くのですよね? ならば、私が同行いたします!!」


 ドラゴンを崇拝する彼女なので、ドラゴンに関するレア物は欲しくて堪らないのだろう。

 そんでもって、ミっちゃんとサっちんもやってきた。


「旅行か。だったら、私も同行しようかな」


「わたくしもご一緒するのですわ」


 いや、旅行じゃないんだけどね……。

 呆れていると、アンこ先輩が泣きそうな顔で俺を見つめている。


「セッキー君……私、学府の出席日数の兼ね合いがありまして。こうなったら最後の手段で休学して付いて行っていいですか?」


 先輩、ちゃんと卒業しましょうね。

 というか、みんな集まり過ぎでしょうが。このままではシーラやピアリまで来るぞ。

 って、既に来ていた。


「リョウヤ、ズルいのだ。わらわも連れていけ!」


「ボクはリョウヤ君といつも一緒だよね」


 そして、当たり前のように同行を主張してくる。

 仕事でこの場にはいないリリナさんも、聞いたら行きたがるかもしれない。

 精霊組も、興味無いふりして聞き耳を立ててるのはバレバレだ。


「うふふ。リョウヤは人気者ですね」


 リンデルさん、他人事のように笑わないでくださいな。

 こっちは色々大変なんだから。



「ちょっとみんな落ち着いてくれ。まだ行けるとも決まってないし、そもそもが、竜ミスリルとやらが現地にあるのかも分からないんだから。まったく、メルさまが一番乗りで名乗り出たから、みんな集まってきてしまったじゃないかよう」


「あら、それは心外ですの。わたくし、一言も鉱山都市へ行きたいと申してませんのに」


 メルさまが不満げに頬を膨らませている。

 その頬を突っつこうとしたら、ペシンと手を叩かれた。おのれ。


「セッキーさんは、お子様ですか」


「はーいバブウ! お子様です!」



「…………………」



 場の空気がとんでもない事になった。みんなが恐ろしい物を見るような目で俺を見ている。

 毎回滑るの分かってて、何故かやめられないんだよなあ。



「……こほん。それはさておいて」


 さておかれてしまった。


「わたくしが申したいのは、先程お話に出ていた他の素材の事ですの」


「なんですと?」


「ほほう。メルエルザは素材に心当たりがあると、おっしゃるのですか?」


 リンデルさんの目に興味の色が浮かぶ。


「セッキーさん。これから、わたくしのお仕事を手伝っていただけませんか?」


 話の流れがまったく分からん。何故、俺がメルさまの仕事を手伝う話になるんだ?

 メルさまはニッコリと笑うだけで、他のみんなも首をかしげるのであった。




 それから四日後、俺はメルさまと一緒に王国南東部へ向かう魔導力車の車中だった。


「セッキーさんがいてくれて、本当に助かりましたの。特に今回は納品の量が多くてどうしようかと思いましたの」


「ちゃんとバイト代はくれるんだろうな?」


「わたくしの体で支払いますの」


 いくら二人きりだからって、その冗談はどうかと思うぞ。

 道中の宿だって、そういう事はしなかったし。

 仕事とプライベートの線引きは大事なのです。


「金銭でお願いするよ」


「ついにセッキーさんは、男色に目覚めたのですね。わたくしの体なんて、これっぽっちも興味が無いのですね。しくしく……」


 ウソ泣きはやめなさい。

 何度か同衾どうきんしてるでしょうが。


「男色に目覚めてないっての。というか最近寒くなってきたし、抱きつかれるとメルさまの体温が低くてヒヤッとするんだよ」


「失礼な方ですの! えいっ!」


「うひゃああ!! いきなり抱きつくな!! 運転中だぞ!!」


「周囲に誰もいないから、多少は大丈夫ですの」


「そういう問題じゃねえ!! 首が冷たいって!!」


 危うく道から外れるところだった。

 メルさまも二人きりになると、割とイタズラ好きなんだよなあ。

 普段の落ち着いた感じからのギャップが良いのだけど。


 こんな道中だが四日前、突然仕事を手伝えと言われた時は面食らってしまった。




  ◆◆◆




「これから、わたくしのお仕事を手伝っていただけませんか?」


「はい?」


 突然メルさまから、仕事を手伝えと言われた。

 これはどう答えるべきなのだろうか。

 そもそもが、ベルガの器の素材の話がなんで仕事を手伝えって事になるんだ?


「わたくし、これからマリルガルという地方の街へ、薬や日用品の類を納品しなくてはなりませんの」


「はあ……」


「ですので、セッキーさんの魔導力車で運んでくださりませんか?」


「ええと、俺は運搬係?」


「そうですの」


 そんなニッコリ微笑まなくても。

 相変わらず話が見えてこないが、俺だけ仕事を手伝わされるのは納得いかない。

 他にも道連れを増やしてやる。


「あ、私やる事があったんだ! 残念だけど頑張ってね、セッキー☆」


 そう言って、ロワりんが逃げると、理由を付けて我も我もといつの間にかみんないなくなってしまった。

 素晴らしき手の平返し。

 残るは、俺の対面で優雅にお茶を飲むリンデルさんだけだ。


「さて、私も少々長居し過ぎましたね。ではリョウヤ、吉報をお待ちしていますよ」


 リンデルさんも亜空間へと消えた。

 そういえば、あの人ってベルガの亜空間移動じゃないと、妖精界から行き来できない設定じゃなかったか? 細かい事を気にしちゃいけないのか?


 そして、誰もいなくなったサンルームでメルさまと二人きりになった。


「久々に二人きりになれましたの」


 そうは言うが、庭先では精霊樹の幼女達が遊んでるし、精霊樹の木陰から何人かがこちらを窺ってるぞ。


「そんで、ただの配達の仕事じゃないよね? そもそも、メルさま自ら納品に赴くって聞いた事がないし」


 普段は薬を買い付けた者が、自分で持ち帰るなり発送しているはずだ。


「うふふ、セッキーさんは中々鋭いですの。誉めて差し上げますの」


「褒められても何も出ないっての。それで、納品先のマリルガルって場所に何かあるのか?」


「ええ。そこであるイベントが開かれるらしいのですが、そのイベントの賞品が桜水晶だと言えば……?」


「それはまことか!?」


「セッキーさん、口調がおかしくなってますの。わたくしも、店頭で薬を受注した際に耳に挟んだ程度ですが」


 そりゃ口調もおかしくなるわ。

 リンデルさんも所在については、お手上げだった貴重な素材だからな。


 実際のところ、桜水晶は綺麗な宝飾品という扱いだそうで、産地も不明で市場には滅多に出てこないものらしい。

 ちなみに、金銭的価値はそうでもないとの事。もっぱら好事家ぐらいしか見向きもしないそうだ。

 そんな物がイベントの賞品となると、鉱石関連のイベントでもやるのかな。


 こうしてはいられない。

 直近の仕事を一気に片づけ、旅支度をする。

 本当は、メグさんの弟のユンファオ君の面倒とかも色々みてあげたかったが、それは帰ってきてからだ。

 学校生活については、フィル達が面倒を見てくれるだろう。

 ついでにマリアンヌさんのご機嫌も伺っておきたかったが、それも後回し。

 むにょーん騒動から復活した際に呪いも解呪したので、すこぶる元気になったらしい。

 なんでも、まるで人が変わったようだと聞いたが……。



 そんなこんなで、魔導力車の後部席を折り畳んで荷物を積載して出発。

 まさか、荷物配送に駆り出されるとか思わなかったが、こうして俺はマリルガルの街へ向かう事になったのである。





  ◆◆◆




「セッキーさん、あれがマリルガルの街ですの」


 助手席からメルさまが指差す先に、小さな街が見えてきた。

 こう言ってはなんだが、結構な田舎だ。俺の実家よりはマシだけど。


「ゆっくり走って三日の距離か。まあまあ王都から離れてるな」


 荷物が貴重品ではなかったら、休憩無しで飛ばして一日だろうか。

 馬車でなら、ちょっとした旅になりそうだ。


 既に辺りは夕暮れ時になっている。今夜はこのまま宿に宿泊だな。

 実は、あちこちの宿に泊まるのが楽しみだったりするのだ。

 現地の名物料理や色々な人達との交流とか。

 そして、宿屋の食堂で綺麗な給仕さんに一晩誘われたりして。


「……えい」


「うひゃあ! 首が冷たい!! 何するんだよ!!」


「セッキーさんが卑猥な事を考えている顔をしていたもので、つい」


 何故分かった!?

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便利なアッシーくんがいたもんだ
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