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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
おまけ編 それぞれの新たな生活

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765 番外編 その後のお話5

季節ネタです。割と未来の話

 私はフィルエンネ。もう随分と長く人里離れた山奥で暮らしてます。

 学校を卒業してから本格的にテルアイラさんに師事し、冒険者の真似事とか色々な事をやってきたのです。

 それも一段落して、しばらくゆっくりしようと引きこもり、気づいたら数十年経ってました。


 もちろん、その間は全く家から出なかった訳じゃないです。

 たまーに街に出てみたら、馴染みのお店の店主さんに五年振りとか言われてショックを受けたり。

 生活物資は届けてもらったりしてたから、衣食住には困ってなかったんだよね……。


 そんな私ですが、子供の頃に女神様の加護を授かったせいなのか、成人してからほとんど年を取らなくなってしまったのです。

 その事をリョウちゃんに相談してみたら、『完全な不老不死ではないが、それに近い』と言われて、これまたショック……。


 なので、仲が良かった人達を見送ったりした後は、自然と人付き合いを避けるようになりました。

 やっぱり、みんな自分より先に旅立ってしまうのはつらいからね……。


 まあ、会おうと思えば、精神体になって『向こう』で会えるのだけど。



「……そういえば、今日はハロウィンだっけ」


 私は普段から黒を基調とした服装なので、いつの間にか『漆黒の魔女』の二つ名がついてました。

 ある日、そんな私服で街に出ると、すれ違う人達が生暖かい目で見てくるのですよ。


 私、そんなに変な服装なのかな?

 首をかしげていたら、屋台のおじさんに言われました。


「姉ちゃん、ハロウィンは昨日だぜ?」


 なんと、私の服装がハロウィン用の仮装だと思われていたみたい。

 急に恥ずかしくなって、そのまま逃げ帰りました。

 その件もあって、引きこもりが加速したのかもしれません。


 それはさておき。

 子供の頃、親友のミューちゃん達とお化けの仮装をして、王都の街を練り歩いたのを思い出しました。

 今でもお祭りは盛んなのかな。久々に王都に行ってみようかな。


 そこでふと思い直しました。

 風の噂で、南の新大陸に繋がるダンジョンが完成した話を耳にしたのを思い出したのです。

 私が暮らすこの大陸の遥か南に、リョウちゃんと同じ世界に住んでいた人達が移住した新大陸が存在します。

 そこは長い間、結界に覆われていましたが、今では飛行艇を使った空路や船旅で行けます。


 飛行艇は物凄くお金が掛かるし、船旅は時間も掛かる上、海の魔物の危険もあるので、気軽には行けなかったんだよね。

 まあ、キョウコさんの鏡という裏技もあるけど、今はリョウちゃんの許可無く自由には使えないので……。


 だけど、ダンジョンを使えば安全はともかく、早く安く新大陸に行けるのです。

 そして、その新大陸にはなんと、テルアイラさんの娘さんが暮らしているのでした。

 その子は、私の妹弟子でもあるのです。師匠はもちろん、テルアイラさん。


 久々にあの子の様子を見に行ってみようかな。

 そして、『トリックオアトリート』と言って、お菓子をせびろう。




  ◆◆◆




 やってきました噂のダンジョンへ。

 比較的気軽に新大陸に行けるという事で、商人の人達や護衛の冒険者達で賑わっています。

 驚く事無かれ。このダンジョンは、ダンジョン精霊のズンこさんと、リョウちゃんの長女の『ガーたん』の合作だそうな。

 ちなみに、ガーたんって子は生い立ちが色々と複雑なのだけど、その子が南の新大陸までダンジョンを掘り進めたとか。ちょっと頭おかしいよね。

 ズンこさんは、ダンジョンの仕上げ担当だとか。


 そんな訳で、私もいざダンジョンへ突入……と思ったけど、冒険者の男の人に呼び止められました。


「おい、そこの背の高い姉ちゃん! まさか一人で潜るつもりか!? ダンジョンをなめちゃいかんぞ!」


 てっきりナンパかと思ったけど、単に心配してくれる人でした。

 確かにこのダンジョンは初めてだけど、元魔王領ラーズガルド帝国の『絶望の深淵』と呼ばれる高難度のダンジョンも、単独踏破した経験があったりするのは密かな自慢。

 慣れてるから大丈夫と返そうとしたら、別の冒険者の人が私を見て驚いた顔をしています。


「お、おい、あの人って、『漆黒の魔女』じゃないか!?」


 どうやら私の事を知ってる人もいるみたいです。


「マジかよ!?」


「すげえ! 本物かよ!!」


「想像していたより若いな……」


「あ、あの、サインください!!」


 急に冒険者が集まってきました。私は女性の中で背も高い方なので、どうしても目立ってしまう。

 あんまり目立つ事は好きじゃないので、適当に手を振ってさっさと進もう。


「わ、私、あなたが書いた『にゃんにゃんキュートと学ぼう! 優しい魔法理論』が愛読書でした!!」


 ……ほほう。そうきましたか。

 思わず握手して、魔導力撮影機カメラでツーショットまで撮ってあげちゃいました。


「俺も『にゃんにゃんキュートと学ぼう! 優しい護身術』を読んで冒険者になりました!」

「自分は『にゃんにゃんキュートと学ぼう! 優しい催眠術』で占い師になりました!」

「僕は『にゃんにゃんキュートと学ぼう! 優しい蓄財術』で商人を目指してます!」


 あれよあれよと言う間に人垣が……。


 そんな事を続けていたら、日が暮れてしまいました。

 私のおバカ!


 結局、本格的にダンジョンに潜ったのは夜になってからでした。

 普通は夜にダンジョンに潜る人はいないので、逆に空いていて良かったかも。


 認識阻害のスキルで魔物もスルーしながら、ダンジョンの転移部屋に向かいます。

 ズンこさんの固有スキルらしいのだけど、ダンジョン内なら任意の転移部屋に転移する事が可能なのだとか。


「ここが転移部屋かあ……」


 ちょっとした小部屋です。

 数人ぐらいは入れるかな? 床に描かれた魔法陣の上に立つと体が宙に浮いた感じがして、次の瞬間には新大陸のダンジョンの転移部屋に到着。

 これって、キョウコさんの鏡並みの便利機能だよね。

 丁度、仮眠スペースもあるので日が昇るまで寝ていこう。

 防御結界を張り、寝袋に入って横になったらすぐに睡魔がやってきました。




 目覚ましで起きました。

 いつも思うけど、ダンジョン内だと昼夜が分かりにくいのが難点だよね。


 さて、確かあの子はセービルという街で魔道具屋を営んでいたはず。

 ダンジョンの出口も街の近くだった。流石はズンこさんとガーたん。

 さくっと街へ入る。

 この街に来たのも何年振りだろうか。

 以前来た時と、あまり変わってはいない気がするかな。


「……あれれ? 引っ越しのお知らせ?」


 目的の魔道具屋を訪ねると、ドアに貼り紙がしてあった。

 店自体は営業してるみたいだけど、住まいは別になったらしい。

 確かに手狭だった気もするしね。


 私は近くの店であの子の新居の場所を尋ね、街の市場で手土産を買って行く事にした。

 どうやら、新大陸でもハロウィンのお祭りは根付いてるみたいで、どこもかしこもハロウィン仕様。

 年甲斐もなく、ちょっとワクワクしちゃうな。


 大通りを歩いていると、偶然あの子を見つけた。

 向こうも私を見て、驚いたように大きく目を見開いている。



「……げえ!? 漆黒の魔女がどうしてここに!?」


 ひどいなあ。

 久々の再会なのに、物凄く嫌そうな顔をされてしまった。


「その名前で呼ばないでよう。私とエーシャちゃんって、そんな仲じゃないでしょ?」


「あ……はい……そう、でしたね……フィルエンネさん」


 彼女はテルアイラさんの娘のテルエーシャちゃん。

 父親はもちろん、あの人。

 それにしても、相変わらず綺麗な子だなあ。

 お人形みたいで、ちょっと羨ましい。


「と、ところで何故ここに……? まだ新刊は発表してませんけど……」


 おっと忘れてました。


「トリックオアトリート!」


「…………」


 ちょっと、なんで黙ってるの!?

 私がバカみたいじゃない!!


「……お聞きしたいのですが、まさかそれだけのために、わざわざ北の大陸からここへ?」


「そうだけど? 普通にダンジョンを潜ってきたよ?」


 私が答えたら、エーシャちゃんが頭を抱えてしまった。

 そんなに非常識な事なの? ショックを受けちゃうなあ。


「ところで、エーシャちゃん。引っ越したみたいだけど、新居にお邪魔していい?」


「え”」


 物凄い嫌そうな顔してるなあ。

 流石に私も無理矢理には乗り込まないよ?


「フィルエンネさんが……どうしても……と言う……なら……」


 なんでそんなに怯えた顔で言うのかなあ。


「なんかお邪魔みたいだから、適当にその辺でご飯食べてから帰るね」


「い、いえ! ぜ、是非に寄って行ってください!」


「本当にいいの? 都合が悪いんじゃないの?」


「だ、大丈夫です! ただ、シェアハウスみたいになってるので、同居人がいるというか……」


「それなら余計に悪いよ」


「駄目です! 私が断ったと母に告げ口する気なのでしょう!? それだけはやめてください!! 変に勘繰られて母が直接乗り込んできます!!」


 私、彼女にどんな風に思われてるのだろう。

 結構ショックを受けた。



 エーシャちゃんの案内で彼女が暮らす家へ向かう。

 その家は街の外にあって、結構な広さらしい。


「ところで、フィルエンネさん」


「昔みたいに、フィルお姉ちゃんと呼んでよ」


「いえ、それは勘弁してください……」


「まあいいや。ところで、何か言い掛けてたよね?」


「はい。今回の訪問は、まさか『新にゃんにゃん☆キュート』の駄目だしですか?」


 エーシャちゃんは、ユウキさんから権利を引き継いで、にゃんにゃん☆キュート関連の本やグッズを展開している。

 前に彼女が描いた『マンガ』を見たのだけど、キュート戦士が悪として描かれていたので、思わず注意した事があったんだよね。

 表現の自由とは言うけど、小さな子にとっての正義の味方が悪だなんて絶対に駄目な気がするのです。それは裏切り行為に等しいし、悲しかったよ。


 そんな事を小一時間、真顔で問い詰めた記憶があるような。

 あの時のエーシャちゃんは、本気で怯えて泣いてたような。

 ちょっと悪い事しちゃった記憶。


「違うよ。今回は本当にハロウィン関係で来ただけだよ」


「……そうでしたか。実は、今日うちでもハロウィンパーティーをやる事になってまして。せっかくですから、フィルエンネさんも参加してください」


「いいの!? わあい!!」


 年甲斐もなく浮かれて喜んでしまった。

 ここ何年もこういう事をしてなかったので、本当に嬉しい。


 どこかホッとした表情のエーシャちゃんが指差した先に家が建っていた。

 あそこが彼女の住まいらしい。

 どんな人達と暮らしてるのかな。姉弟子としてチェックしないとね。





 ……お客様として居間に通されたのだけど、なんなのこの家。


 お茶を出してくれたリスの獣人の小さな女の子は可愛らしくて、思わず撫でてしまった。

 続いて現れたのは猫耳獣人の子と……孤狼族!?

 なんで孤狼族が普通に他人と暮らしてるの!?

 しかも、この二人は相当な手練れみたいなので、ちょっと手合わせしてみたいかな。


 にゃあんと鳴いて挨拶してきたのは、キジトラ猫。

 ……この子、絶対に猫じゃないよね。感じからすると異世界の存在?


 そして、エリカお姉ちゃんを彷彿とさせる妙に色っぽい感じの女性。

 うん。彼女、人間の振りしてるけど絶対に魔族だよね。

 もう一人の女の子は……普通の人間だ!!

 なんか普通の人間に会えて嬉しい!!


 極めつけは女神だった。

 私に加護を授けてくれた女神とは違うけど、あの子は絶対に女神だよ……。

 向こうも、私が持ってる加護に気づいて複雑な顔してるし。


 一体なんなのこの家!!

 リョウちゃんの周囲も大概だったけど、こっちもとんでもないよ!!

 エーシャちゃんに説明を求めようとすると、彼女の目が泳いでいる。

 まだ誰かいるらしい。


「ええっとですね……実は姉さんも同居してまして……」


 二女の彼女からすると、姉は長女のガーたんだ。

 まさか、あの子まで一緒だったとは。流石の私も驚きを隠せない。

 その時、玄関先に誰か帰ってきた気配が。



「ただいまー。……あれ? 誰か来てるのか?」


 なんと男の人だった。しかも、大人の男性。

 あのエーシャちゃんが、男の人と同居してるの!?

 これは是非とも詳しく話を聞かねばなるまい。


「エーシャちゃん? ちょっと家の外でお話しましょうか? 私、色々な事を聞きたいなー」


「ああ……はい……」


 私は満面の笑顔で、青ざめた顔の可愛い妹弟子を伴って外に出るのであった。

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フェルもリョウヤとくっついて子供残してそう()
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