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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第三章

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74 なんで、今ここでそんな事を言うんだよ!!

 ミっちゃん達が部屋を片付けているのを待っている間、シーラとアンこ先輩にノノミリアの三人は談笑していた。

 仲良くなるのが早いなあ。

 先輩とノノミリアが気を使ってくれているのだろうけど。


 そんでもって、レイズの方はと言えば……。


「とうとう女子の部屋に入れるんだな! 俺、ワクワクするぞ!」


 性懲りもなく興奮しているが、そんなにいいものじゃないと思うのですよ。

 呆れていると、部屋のドアが少し開いて中からミっちゃんが顔を覗かせた。


「……待たせたな。入ってくれ」


 何故かミっちゃん達三人はボロボロになっていたが、部屋の中は綺麗に片付いている。


「おお……これが女子の部屋か!!」


 レイズが深呼吸しながら感動に打ち震えている。

 流石にそれは俺も引くぞ。

 ふと見ると、ロワりんが床にテープを張って線を引いている。


「君はそこの線から進入禁止ね」


 ロワりんが床に引かれた線を指してレイズに言い放った。

 中々の辛辣(しんらつ)ぶりである。


「ぐぬぬぬ……」


 非情な言葉にレイズが涙目で呻く。

 可哀想になってきたけど、現実を受け止めてくれ。

 そんなレイズをスルーして、ノノミリアが疑問の声を上げた。


「レイズの扱いはそれでいいのだけど、メルさん達って寮じゃなくて、普段ここで寝泊まりしてるんだよね? 許可とかどうしてるの?」


 その質問にメルさま達が固まっている。

 もちろん許可なんて取っていないので、答えられる訳がない。


「い、いえ、わたくしたちは、ちゃんと寮で寝泊まりしていますの」


 メルさま、今更その言い訳は苦しいのではないでしょうかね。


「そ、そうだよ。ここはメンバールームで、決して私達の私室じゃないからね!」


 ロワりんさん、あなた思いっきり私室だって言ってますよ。


「え……だって普通にベッドとかあるし、生活感が半端ないよ?」


 二人の言い訳にノノミリアは納得していない様子だ。

 俺も納得してないけどね。

 そこへ何やら物騒な雰囲気をまとうミっちゃんが現れる。


「ノノミリア。君は知らない方がいい事もあるのだよ……」


 ミっちゃんが手に刀を持ち、鞘から少し抜いて刀身を見せ付ける。

 とうとう開き直ったか。


「う、うん! 分かったよ、ミサキさん! もう聞かないから!」


 ノノミリアがようやく空気を読んで黙った。

 しかし、そんな微妙な空気を読まない人物が一人いたのである。

 アンこ先輩がニコニコしながら言い放った。


「いつも皆さんは楽しそうに寝泊まりしていますよね。また私もお泊りさせてくださいね」


 結局、先輩の発言で全てをぶち壊してしまい、ミっちゃん達が愕然とした表情になる。

 最初から素直に認めてれば良かったものを。

 そんな彼女達を見てレイズが遠い目をしている。


「なんだか女子も色々と大変そうだな……」


 そんなもんですよ、レイズ。

 女子に幻想を持たずに早目に現実を知っておくのも良い経験だと思うのです。



 それから話し合いとは名ばかりで、お茶を飲んだり、お菓子や買ってきた軽食を食べてグダグダしていただけの集まりになってしまった。

 それでもシーラは、お菓子に感動したり、みんなの話を興味深そうに聞いていたりして満足してくれたみたいだ。


 先輩にはダンジョンで起きた事や、パーティー活動の危機等を説明をした。

 パーティー活動の停止の可能性については、『皆さんがご無事で良かったです』と言ってくれたものの、申し訳ない気持ちで一杯である。

 シーラの境遇の話になった途端、先輩が大泣きしてしまって逆にシーラが困った表情で先輩を慰める一幕もあった。


 そろそろ日も暮れてきたので、今晩シーラが泊まる部屋を決めようとしたのだが、俺と同じ部屋を希望するシーラを全員で押し留めた。

 そうは言っても、メンバールームのベッドに空きはない。


 雑魚寝させるのも可哀想なので、リリナさんの部屋で寝てもらう事を提案した。

 リリナさんの部屋は一人部屋にしては広さに余裕があるし、予備のベッドもあるとの事で丁度良さそうだ。

 後は帰ってきたリリナさんに事情を説明して、シーラの事をお願いするだけである。


 話もまとまり、ノノミリアとレイズが帰るのを見送るついでに俺達はピアリの様子を見に行く事にした。


 部屋のベッドで、ピアリはまだ眠っている。

 やはりシーラの言う通りに魔力が枯渇しているのだろうか……。

 俺はピアリのふわふわした栗毛色の髪を撫でながら魔力を流し込んでみる。

 途端にピアリの目が見開き、飛び起きた。



「リョウヤ君、無事だったんだ!! 良かった……」


 ピアリが俺の姿を認めると安堵の息を吐いた。

 いきなり飛び起きないでくれませんかね、驚くのですけど。

 一方、先輩は不思議そうな表情を浮かべている。


「セッキー君、ピアっち君に何をしたのですか? 私はずっとそばにいましたが、全然目を覚ます気配なんてありませんでしたよ?」


「いや、試しに少し魔力を供給してみたんですよ」


 なんとなくシーラに指摘されたから、やってみたとは言えなかった。

 当のピアリも複雑な表情をしていたので、やや強引に話題を逸らす。


「気分が悪いって聞いたんだけど、大丈夫か?」


「あ……うん。少し寝たから大丈夫だよ」


 絶対に大丈夫って顔色ではない。


「今日はこのまま休んでいた方がいいな。食欲はあるか? 後で何か夕飯を持ってくるぞ」


「ありがとう。今は食欲が無いから、このまま休ませてもらうね……」


 そう言って、ピアリはまた横になる。

 ……本当に大丈夫なのだろうか。


 そんな不安を感じていると、隠れる様にみんなの背後にいたシーラがピアリの前に出てきた。


「ところで、先程からずっと気になっていたのだが、お主はその身体でよく生きていられるな?」


 突然の事で部屋の全員が息を飲んだ。

 当のピアリは、目を見開いてシーラを凝視している。


「おい、シーラ。初対面でいきなり何を言い出すんだよ?」


 流石に馬鹿げた話だと思って、シーラを注意しようとした。

 でも、正直心の奥底ではどこか嫌な予感がしていたのだ。

 思い返すと、ピアリには不審な点が多い。

 だけど俺は無意識にそれから目を逸らしていたのかもしれない。


「リョウヤ、お主には関係ない。わらわはこの者に言っておるのだ。……それでどうなのだ? その身体はもう限界なのだろう?」


 シーラが俺の言葉を遮って、有無を言わせない口調でピアリに再度問い掛けた。

 その場にいる全員の視線がピアリに注がれる。


「い、いきなり何を言ってるのかな? そもそも、キミは誰なんだい? 訳の分からない事を言わないでよ!」


 ピアリが珍しく苛つき、明らかに動揺している様子だ。

 こうなると説明のできない嫌な予感が現実味を帯びてくる。


「白々しい。お主は既ににわらわの正体を見抜いておるのだろう? ヒトではない、妖精の『まがい物』よ」


 シーラから鋭く射るような視線を向けられたピアリは息を飲んだ。


 『まがい物』……何度か耳にした気がする言葉だった。

 それが何を意味しているのかは分からないが、少なくともピアリの事を指している事は事実みたいだ。


「別にわらわは、お主の正体など興味はない。ただリョウヤがお主の事を気に掛けているので、指摘しているだけだ。もはやその身体では、生命を維持することも難しいのだろう? このままでは、死ぬか消滅するかは時間の問題だぞ」


 シーラの口から発せられた言葉にその場の全員が愕然とした。


「ちょっと待って、ピアっちが死ぬってどういう事なの!?」


 ロワりんがシーラに詰め寄る。


「そうだ。いきなりそんな事を言われても、訳が分からないぞ!」


「そうですの。説明をお願いします!」


 ミっちゃんとメルさまもロワりんに続いた。

 アンこ先輩やレイズとノノミリアも突然の事で、どうしたらいいのか困惑している様子だ。


 だけど俺は不思議と冷静だった。

 いつだったか、ピアリが妙に儚(はかな)げだった事を思い出す。

 やはり心のどこかでは、この事を予感していたのだろうか。


「……なんで……なんで、今ここでそんな事を言うんだよ!!」


 黙って俯いていたピアリが顔上げ、涙ながらに叫んだ。

 俺は感情を隠さないピアリを見て言葉を失う。

 そのピアリの剣幕にロワりん達も押し黙ってしまった。


「……わらわは事実を言ったまでだ。それにお主はリョウヤが大切に思っている存在みたいだしな。そのまま死なれでもして、リョウヤが悲しむのをわらわも見たくない」


 その言葉に今度はピアリが押し黙った。

 俺はピアリがいなくなってしまったら絶対に悲しむと思う。


「その身体に限界が来る前にリョウヤと契約を結べ。幸いな事にリョウヤの魔力は潤沢みたいだしな。お主が助かる方法はそれしかない」


 シーラが諭すように話しかけた。


「……そんな事、できる訳がないじゃないか!!」


 ピアリが大粒の涙をこぼしてそう叫ぶと、部屋から飛び出して行った。


「ピアリ待ってくれ!!」


「お願いだから来ないで!!」


 すぐに追い掛けようとしたのだが、ピアリに悲痛な声で拒絶されてしまい、追いかけられなくなってしまったのだった。

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