表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
おまけ編 それぞれの新たな生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

732/782

731 貴様……覚悟はできているな?

 獣道をひたすら進む。

 四の部族の土地はちゃんとした道があったけど、この三の部族の土地はそうでもないらしい。

 文化レベルの差なのか、はたまた精霊樹が枯れてしまった事によって、道の整備どころじゃないのか。


「藪がひどいな……」


 三の部族出身のダズムがそう言ってるのだから、きっと後者なのだろう。

 ここは俺の出番である。最近は精霊樹や精霊頼みで、あんまりカッコいいところを見せられてないし、いっちょ活躍してみようじゃないか。


「みんな後ろに下がってくれ」


 ここで取り出すのは、衝撃波が発生する短剣である。

 こいつを振るうと、俗に言うエアカッターが飛び出すのだ。


「ふんむ!」


 どこぞの獅子顔のおっさんみたいな掛け声で短剣を振るうと、衝撃波が

発生した……したのだが……。




 大変な事になってしまった。

 俺の放った衝撃波の威力が凄まじくて、前方はるか先まで綺麗サッパリ消滅してしまったのである。


「…………」


 みなさんが無言である。

 取り敢えず誤魔化そう。


「あれ? 俺、何かやっちゃいましたか?」


 これ以上ない名ゼリフが決まった!

 パクリとか気にするな! 駄目だけど。


「セキこちゃん凄いよ!! いつの間にそんな能力を身に付けたのー!?」


 いち早く再起動したメグさんが抱きついてきた。

 今は女の子の姿だから、抱きつかれても問題はないぞ。

 遅れてイリーダさん達も抱きついてくる。なんかどさくさに紛れて揉んでくるのやめてください。


 それにしても、今の力は一体……。

 まさか、精霊樹の力なのか?


(ご名答! 私の力ですよー!)


 よんちゃん……恐るべし。


 それはそうと、衝撃波の先に集落があったらと考えると大惨事だ。

 うん、怖い事を考えるのはよそう。

 納得してない様子のダズムを気にしないで先へ進む。


 道が歩きやすくなったので、目的地手前の集落にサクっと到着した。

 衝撃波の被害も無さそうで良かったよ。


 しかし、別の意味で集落が大変な事になっていた。



「こ、これは……」


 集落に入った途端にダズムが固まってしまった。

 それもそのはず、活気というものが全く無かったのである。

 人の気配はするが、誰の姿も見えない。家の中に閉じこもっている様子。

 その家も、争いがあったかのように荒れ果てている。


 何が起こっているのかと周囲を見渡していたら、誰かがやってきた。


「お、おお……ダズムか……!!」


「長老!!」


 ダズムが慌てて駆け寄ったのは、犬獣人の老人であった。

 今にも倒れそうなぐらいにやせ細っている。


「一体何があったのですか!?」


「略奪じゃ……ならず者達が、食料や女達を奪い去ったのじゃ……」


「なんて事を……!」


「精霊樹様の加護も失われ、もうこの集落は駄目じゃ……」


 長老と呼ばれた老人は、そのまま気絶してしまったようだ。

 ダズムは老人を抱きかかえたまま、うずくまっている。



「ダズムさん……」


「すまない。ここは俺の生まれ故郷の集落なんだ」


 自分の生まれ故郷が、こんなにも荒れ果てていたらショックだろう。

 だけど、俺達は三の部族の中央の街へ行かないといけない。

 もしかしたら、ここの集落よりひどい事になっている可能性もあるのだ。


 気づいたら、俺達の周囲をボロボロの恰好をした人達が囲んでいた。

 この集落の住人だろう。老人と子供ばかりで皆やせ細っている。

 そして、明らかに暴行を受けた様子で怪我人も多い。



「ひどい……」


 ショックを受けたミンニエリさんの顔色が真っ青だ。

 メグさんやユズリさんも唇を噛みしめている。


 集落の惨状に言葉を失っていると、一人の小さな女の子がダズムのそばにやってきた。


「ダズムお兄ちゃん……」


「ケイアか、リンネはどうした?」


「連れて行かれちゃった……。お姉ちゃんだけじゃなくて、みんな無理矢理に……」


「……くそ!! なんて事だ!!」


 想像以上に三の部族の土地は大変な事になっているようだな。

 そして、ダズムは生まれ故郷の惨状を目の当たりにして、迷ってるみたいだ。

 このまま立ち去る事は出来ないのだろう。

 かと言って、中央の街の様子も確認しないといけない。



「セキこ、集落の人達に食料を与えられないかぴょん?」


「イリーダさん、流石に手持ちの食料では足りませんよ。それに、困ってるのはこの集落の人達だけじゃないと思いますよ」


「だけど、この現状を前にして何もしない訳にはいかないだろう!? ぴょん」


 シリアスな状況でも語尾を忘れないその意気や良し!

 って、上から目線で語っている場合じゃない。


「よんちゃん、お願いできる?」


(かしこまりました!)


 突然、集落の中心に大きな樹木が生えて、みるみるうちに大きな果実が実った。


(みなさん、これは特殊配合の栄養満点の果実ですよ。人為的に作り上げた物なので、種はありません。一世代限りの物なのです)


 よんちゃんが語り掛けてくれてるのだが、飢えた集落の人達の耳には届いていない。

 とにかく一心不乱で果実に噛り付いている。

 あくまでも急場しのぎであるが、食糧はどうにかなったみたいだ。

 だが、困っている集落はここだけじゃないだろう。


(さんちゃんが復活したら、なんとかなると思いますよ。まずは、情報収集じゃないですか?)


 よんちゃんの言う通りである。

 とにかく、中央の街へ行ってみないと何も分からない。


「ダズムさん、中央の街へ急ぎましょう」


「あ、ああ……」


 後ろ髪を引かれる思いだろうが、ここは先へ急ぐべきである。


 そこからは全員無言で走り続けた。

 中央の街が無事であって欲しいという願いを全員が持っていただろう。

 だが、現実は残酷であったのだ。



「な、なんて事だ……」


 ダズムが全身の力が抜けたように、地面に膝を突いてしまった。

 中央の街は、あちらこちらから火の手が上がり、暴動が起きている。


「ヒャッハー! 上玉がやってきたぜ!!」


「まさに飛んで火にいる夏の虫ってか!!」


「ボスに献上する前に俺達で楽しもうぜ!!」


 これまたお約束な奴らが現れたのである。

 それにしても、こういうのは人間も獣人も変わらないんだな。



「セキこちゃん、これからどうするの?」


 指示を出す前に男達を叩きのめしてしまうメグさん達が怖い。

 ダズムが別の意味で唖然としてるぞ。


「取り敢えず、長の屋敷に行ってみますか」


「りょーかい!」


 俺達はそのまま街の中心へと向かう。

 周囲は男達同士が争っていたり、女の人が襲われていたりするが、メグさんやイリーダさん達が瞬時に片づけてしまう。

 俺達の歩いた後には、狼藉者達がボコボコにされて倒れているだけだ。

 まさに死屍累々。


 そんな光景をダズムが呆然として見ている。

 いい加減に慣れてね。





  ◆◆◆

  ◆◆◆





 長の屋敷の中を慌てて走る男の姿があった。

 男はそのままノックも無しに長の部屋のドアを乱暴に開け放つ。


「ボス! 大変ですぜ!!」


「ああん、なんだ? これからお楽しみだってのに邪魔するなよ!」


 ボスと呼ばれた犬獣人の男は、無理矢理に連れてきたアールットに覆い被さろうとしていたところを邪魔され、イラついていた。

 襲われていたアールットは両手を縛られ、口も塞がれているので藻掻く事しかできない。

 その様子を見て、自分もおこぼれに預かりたいと思った部下の男だが、用件を思い出して直立不動になる。


「なんかとんでもない奴らが現れて、真っすぐこっちへ向かって────ぎゃあぁぁ!!」


 部下の男がいきなり吹っ飛んだ。

 男を吹っ飛ばしたのはダズムである。襲われていたアールットを一瞥し、襲おうとしていた男を睨みつけた。その目は激しい怒りに燃えている。


「貴様……覚悟はできているな?」


「誰かと思えば『知識層』のダズムじゃねえか。文字なんて読めても腹の足しにもならねえんだよ。この世は力こそ全て!! それを分からせてやる!!」


 二人の拳が激しくぶつかり合った。





  ◆◆◆

  ◆◆◆





「ダズム、大丈夫かなあ……」


「セキこちゃんは心配性だよ」


「そうですよ。ダズムさんが自分に任せてくれって言ったのですから、見守ってあげましょうよ」


 メグさんとユズリさんはこう言うが、相手はならず者達のボスだ。

 流石に一人では心配になるよ。


「セキこ、他人の心配より自分の心配をしたらどうだぴょん?」


 イリーダさんの言う事も、もっともである。

 なんかよく分からないけど、街の外から別口の武装集団が大勢攻め込んできているのだ。


「西門、大方制圧しましたにゃん」


「北門も大体殲滅しましたよ」


 ギリミアさんとミンニエリさんが報告してくれるけど、あの人数を二人で片づけるとか、やっぱりおかしいよな。


「一番おかしいのはセキこさんだって、自覚してくださいね。じゃあ、私は東門を見てきますから」


 そう言って、ユズリさんが行ってしまった。


「セキこちゃん、残るは南門だよ」


「ここは私達が死守しよう。心残りなく活躍してくるが良いぴょん」


 死守もなにも、二人の足元には襲ってきた男達が倒れている。

 その数は二桁では収まらない。


「はいはい、分かりましたよ。南門を見てきますね」


 言われるがままに南門へ向かうと、身長三メートルはあろうかと言う熊獣人の男とその部下数十人が待ち構えていた。


「出迎えは小娘が一人か。俺もなめられたものだな」


 なめてませんよ。

 ただ面倒なだけです。

未来世界の温泉回の話が思いの外、長くなったので更新が遅くなりました。

これからもう少し頻繁に更新したいです(希望的観測

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ