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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
おまけ編 それぞれの新たな生活

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677 ならず者達に、あんな事やこんな事をされてしまうのですか!?

 取り敢えずは重要な事を知る事ができた。

 妖精王さんがちゃんとパンツを穿いているという事だ。

 もしかしたら、レオタードみたいなので誤魔化している可能性も無きにしもあらず。


 それはさておき、妖精王さんはベルガに能力を託すと言って掴み上げた。

 そのまま『インストール』作業に入る間、ずっと成り行きを見守っていた王子とナギさんに詰め寄られてしまう。

 その勢いは、ベルガの時の比ではない。


「おい、貴様! これは一体どういう状況だ!?」


「妖精王に魔竜って、おとぎ話の世界よ!?」


 言われてみれば、遠い昔話に出てくるような存在がこうして目の前にいるのだから混乱するよな。

 ついでに言うと、我が家には元魔人もいるぞ。


「ベルガとは、機械人達との戦いで偶然出会っただけだよ。色々な偶然が重なって、あんな感じになってるけど」


 ベルガに目を向けると、妖精王さんに握りしめられて白目を剥いて痙攣してる。

 あれ、大丈夫なのかなあ……。


「妖精王さんに関しては、俺は全く無関係だと宣言しておこう」


 二人は納得してない感じだけど、俺だってどうしようもない。


 そんな訳で、倉庫から引っ張り出してきた反物を転移の鏡の中にどんどん押し込んでいく。

 価格は王国小金貨五枚を請求された。安くするとは言われたけど、中々素敵な値段である。

 流石にナギさんは、俺の足元を見る真似はしないと思いたいけど。


 手持ちの現金が最近凄い勢いで消えていくので、そろそろ本格的に働かねば。

 領地経営も大事だけど、手っ取り早いのは国王のサイラントさんから依頼された仕事をこなす事だろう。

 直近では、北の大森林へ赴いて獣人達の同行を探る命を受けている。

 どのくらい褒美をもらえるのだろうかと皮算用を始めていたら、妖精王さんがこちらにやってきた。

 彼女の手のひらの上には、グロッキーなベルガの姿があった。


「無事に妖精王の引継ぎが完了しました」


 念話ではなく、普通に口頭での会話だ。

 こうやって直接声を聞くと、また印象が違う気がするな。


「じゃあ、俺も用が済んだので帰りますね」


 ナギさんと王子に挨拶しつつ、妖精王さんからベルガを引き取って店を出ようとすると、後ろから服の裾を掴まれた。


「……あのう、なんで俺の服を掴むんですかね?」


 妖精王さんが無言で服の裾を掴んでいるのだ。


「……?」


 俺の質問に意味が分からないという感じで、彼女は首をかしげている。


「なんですか? 俺は帰りたいんですけど……」


「私一人を置いて行くのですか?」


 何故か俺を責めるような言い方である。

 意味が分からん。


「えっと、妖精界でしたっけ? そこへ帰ればいいじゃないですか?」


「私は随分と長い間、妖精界にいましたので、今の人の街を見て回りたいのです」


「はあ……」


 そういえば、ベルガも人の街を見て回りたいって言ってたな。


「ですので、力を失って自力で帰れないから、世話になろうとか思ってないですよ」


 ん?

 今、何かとんでもない事を言わなかったか?


「……少年、こやつは妖精王としての力を全て我に受け渡してしまったのだ。なので、今は多少強力な魔力を持っているだけの妖精だぞ」


 ようやく復活したベルガが、恐ろしい事を言った。


「もしかしてだけど、俺にずっと彼女の面倒を見ろと?」


「そこまでは言っていない。後で我が亜空間ゲートを開いて帰らせる。それまでは面倒を見てやってくれ」


 俺の意思は無視なのですかね。

 こんな目立つ人を連れて歩きたくないのだけど。

 ただ立ってるだけで、トラブルに巻き込まれそうだ。


「さあ、訳の分からない気配を醸し出す、少年のような怪しげな存在よ。私を導きなさい」


 うわあ、俺に観光案内させる気満々だよ。

 早く王都に帰って、購入した布をナナミさんのところに持って行きたいんだけど。


「まさか、私を放置するのですか? そんな事をすれば、ならず者の男達に捕まって、あんな事やこんな事をされてしまうではないですか!」


 あんな事やこんな事が何を指しているのかは分からないけど、なんだか興奮していらっしゃる様子。


「ああ、なんて汚らわしいケダモノ達なのでしょう! きっと私は欲望のまま汚され、売られてしまうのですね! そして、妖精マニアの脂ぎった男に色々な実験と称したアレやコレを……!!」


 この人、何を言ってるんだろう。

 もう少し神秘的な存在でいて欲しかったよ。

 ナギさんと王子も呆れて無表情になってるぞ。


「なあ、ベルガ。本当に彼女を妖精界に帰してくれるんだよな?」


「それは約束しよう」


「分かった。案内するのは少しだけですよ?」


「それは本当ですか!? 訳の分からない気配を醸し出す、少年のような怪しげな存在は意外と気が利きますね!」


 途端にぱあっと笑顔を見せる妖精王さん。

 急に俗っぽくなったように感じる。


「それはそうと、俺の名前はリョウヤですから。変な呼び方をしないでくださいね、妖精王さん」


「そうでしたか。それは失礼しましたね。では、私も既に妖精王ではないので、気軽にリンデルと呼んでください」


「分かりました、リンデルさん」


「そうと決まれば、街へ繰り出しましょう!」


「ちょっと待ってください! その姿は目立ちますって!!」


 慌てて呼び止めると、リンデルさんは、またもや意味が分からないという感じで首をかしげる。

 妖精の羽が生えてる上に、気品溢れる服もコスプレみたいで悪目立ちし過ぎだ。


「目立ったらいけないのですか?」


「目立つと狙われますよ」


「まあ! ならず者達に、あんな事やこんな事をされてしまうのですか!?」


 実は襲われたいんですかね?

 俺がパンツ見たいと考えてたら不機嫌になったくせに。


「取り敢えず、その羽を隠せます? それと普通っぽい服装ですけど、ナギさん。何か服を貸してもらえませんか?」


「分かったわ。何着か見繕ってくるね」


 ナギさんが住居スペースに戻ろうとするのをリンデルさんが呼び止めた。


「それには及びません。私はその服が良いです」


 リンデルさんは羽を隠すと、俺を指差した。

 正確に言うと、俺のジャージを指差している。

 マジですか……。


「リンデルフィーアよ。お主、正気か? このようなダサい服がいいと申すのか?」


 ベルガさんよう。ダサいとか言い切るなよ。

 これは見た目以上に高機能なんだぞ。

 ちなみにだが、外出用として気持ち程度にお洒落なデザインとなっている。

 ほんの気持ち程度に。



「ねえ、リョウヤ君。彼女はああ言ってるけど、どうするの? ちゃんとした服を用意できるけど……」


「元妖精王と言えど、妖精の頂点に立っていた存在だぞ。貴様のその妙な服を着せるのはどうかと思うぞ」


 ナギさんと王子が心配してるけど、本人が良いって言ってるんだから、俺に止める権利は無い。

 アイテム鞄から予備のジャージを取り出し、リンデルさんに手渡す。


「ほほう、これは良いものですね! 早速着替えましょう」


 リンデルさんがナギさんに連れられて、奥の住居スペースに行ってしまった。

 ここで堂々と着替えてくれるのをちょっと期待してたのは秘密だ。

 妖精でも常識はちゃんとあるんだね。


 何故かベルガも行ってしまったので、俺と王子の二人だけになった。

 妙な空気になって互いに緊張する。

 取り敢えず、なんか会話しないと息が詰まるな。



「……あのさ。ナギさんとは上手くやってるのか?」


「……ああ。至って関係は良好だぞ」


「それは良かった」


「ああ」


 いきなり会話が終了してしまう。

 まさか、こうも会話が続かないなんて……。

 案外、王子と話すネタって無いもんだなと思ってたら、王子から話を振ってきてくれた。


「おい、リョウヤ」


「なんだ?」


「本当に姉上達の事を狙ってるのか?」


 思わずむせた。

 いきなり何を言いやがるんだ!?


「ね、狙うって、どういう事だよ!? そもそも、誰がそんな事を!」


「言葉通りだ。そして、この話は俺の父上からだ。先日の家族会議で議題に上ったぞ」


 どんな家族会議をしてるんだよ。


「イリーダ姉さんとセルフィルナ姉さんに妹のミヨリカ。あの三人を狙うなんて、正気じゃないな……」


 すみません。それ、初耳なんですけど。


「色々あったが、俺はお前の事を認めている。だが、悪い事は言わない。ユユフィアナだけにしておけ。あの三人は人の皮を被った猛獣だぞ」


「ええっと、俺にはまったくその気は無いのだけど……」


「そうなのか? 特にイリーダ姉さんは浮かれていたぞ」


 マジですか。

 そういえば、イリーダさんに自分と婚約しろと言われたけど、あれは本気だったのだろうか。

 これから一緒に北の大森林に行く予定なのだが、急に不安になってきた。


「身内の俺が言うのもなんだけど、イリーダ姉さん達は外見だけは良いからな。あれに騙される男達がどれ程いた事か。もっとも、俺はユユフィアナが一番可愛いと思ってるぞ。ちなみにナギ嬢は別格だ」


「そんな事を言われても、俺にどうしろと……」


「まあ、せいぜい覚悟して臨むんだな。健闘を祈らせてもらおう」


 なんと無責任な!

 不安ばかりが大きくなってきたところで、リンデルさん達が戻ってきた。



「リョウヤよ、どうですか? 似合いますか?」


 ご機嫌なリンデルさんだけど、そのジャージ姿は違和感しかない。

 着替えを手伝っていたナギさんも困惑している。


「あははは! だっさいのう! 元妖精王の名が聞いて呆れるな!」


 ベルガは腹を抱えて大笑いだ。

 そのベルガをリンデルさんが掴んで握りしめる。


「ぐほぁ!! ギブ! ギブ! 悪かった! 我が悪かった!! だから頼む!! 中身が出てしまう!!」


「今の発言を取り消しますか?」


 無駄に美しい笑顔が怖い。


「と、取り消す! 取り消すから、許してくれ……!!」


「なら許しましょう」


 解放されたベルガがすっ飛んできて、俺の胸元に潜り込んできた。


「少年、リンデルフィーアが怖い!」


 本当にこれが魔竜だった存在なのだろうか。

 ポンコツ度が増している気がする。



「じゃあ、気を取り直して街中観光へ出発しますかね」


「頑張ってね、リョウヤ君」


「無事に帰れるといいな」


「あれ? 二人は付き合ってくれないのか?」


 ナギさんと王子は俺達に同行する様子が無い。

 二人とも薄情だなあ。


「お店の事もあるし、私はちょっと……」


「俺もナギ嬢を残してはいけないからな。それに、俺は妖精を信用していない」


 王子の発言を聞いたリンデルさんが、僅かに顔をしかめる。

 ここで争いとかやめてくれよ。


「……そこの妙に偉そうで、女性に養ってもらっているだけの穀潰しの男よ。何故妖精を信用しないのですか?」


「誰が養ってもらっている穀潰しだ!? ちゃんと働いてるぞ!!」


 リンデルさんも随分と辛辣ですな。


「こういうところも含めて妖精は嫌いだ。……魔王討伐の時にな、道案内をかって出た妖精がいたんだよ。そいつに道案内を頼んだら、事もあろうか魔王軍幹部の陣営のど真ん中に行きやがって、『間違えちゃった! てへぺろ☆』とかほざいたんだぞ! おかげでとんでもない目に遭ったわ!」


 それはひどい。俺なら泣くわ。


「でも、そのおかげで魔王の幹部を討伐できたのでしょう? 結果良しではないですか」


 物は言いようだな。王子も呆れている。


「……という訳で、俺は妖精が信用できない。リョウヤ、後は任せたぞ」


 勝手に締めくくられた!


 結局、俺がリンデルさんの案内をする事になってしまった。




「ええっと、取り敢えず何をしましょうか?」


 店を後にして、雑多な街中をぶらぶらと歩く。

 お揃いのジャージ姿だけど、リンデルさんが着ると高級感が増すな。


「そうですね、私は食べ歩きというのをしてみたいです」


「食べ歩きですか?」


 意外だな。

 俺はてっきり、文化財みたいな歴史を感じさせる物を見て回りたいと言うと思っていたのだが。


「ええ。妖精の子達がよく聞かせてくれたのです。屋台の店主の目を盗んで食べる料理は格別だと」


 それ普通に犯罪ですやん。

 まあ、妖精が盗み食いする量なんて、たかが知れてるだろうけど。


「その姿で盗み食いをしたら捕まりますよ。ご馳走しますから、ちゃんとお金を払って食べましょう?」


「捕まってしまう!? 屈強な男達に無理矢理に手足を押さえつけられて、あんな事やこんな事を……!!」


 やっぱり、襲われたいのだろうか。


「なあ少年。我も空腹だ。早く何か食わせてくれ」


 こっちはこっちでマイペースだし。


「はいはい、分かりましたよ。今日は屋台グルメ食べ歩きにしましょうね」


「おお! それは期待で胸が高まるな!!」


「私も楽しみです!」


 そんなこんなで、屋台料理を食わせまくった。

 ミっちゃんお気に入りの串肉やら、揚げ芋に蒸し饅頭とか沢山。

 元妖精王に食べさせて良い物だったのだろうかと一抹の不安を感じるが、本人が満足してたので良しとしよう。



「じゃあ、そろそろいい時間になったし、この辺でお開きという事で。ベルガ頼む」


 ベルガに亜空間ゲートとやらを開いてもらおうとしたのだが、リンデルさんが笑顔で俺の服の袖を握りしめている。


「ええっと、まだ足りないとか……?」


「そうですね。リョウヤの家に行ってみたくなりました」


「はい?」


「私、人間の家というのを知らないのですよ。是非とも拝見したいと思いましてね」


「……さっき、ナギさんの家にいましたよね?」


「私、人間の家というのを知らないのですよ」


 にこやかで、それでいて凶悪な圧を掛けてくる。

 とてもじゃないけど、このままでは耐えられないレベルだ。

 この人は本当に妖精王の力を失ってるのだろうか。


「わ、分かりました……」


「まあ、リョウヤは優しいのですね!」


 リンデルさんを連れて帰ったら、どうなるんだろうな。

 無事に済む未来がどうしても見えない。


「諦めるのだ。本来、妖精というのは傍若無人な存在なのだ」


 ベルガさんよう、それをあなたが言いますかねえ。

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