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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第十章

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460 たまにはアピールしておこうかなって

第十章開始です。

 マユカ達は一週間の王都滞在を終えて帰国の途についた。

 当初は王国との交流に異を唱えていたアヤメさんも、王国側と実務的な話もできたので収穫があったと大層喜んでいた。

 次は王国側の人間がイヅナ国へ訪問する事も決まったそうだ。

 将来、本格的な交流や物流の事を考えると街道の整備は必須となるので、そういった事等も話し合う予定らしい。


 マユカだが、サっちん達と王都のスイーツ店巡りを堪能していたみたいだ。

 呆れる事にマユカの世話係のカヤさんは、その役目をサっちんに押し付けて、自分は王都観光を満喫していた模様。

 ミユキさんはというと、相変わらず周囲の人達から情報(主に俺の個人情報)を聞き出して暗躍していたのであった。

 一体その情報を何に使うんですかねぇ。


 それはそうと、帰り際になってマユカとサっちんが帰りたくないと駄々をこねたのには、流石に俺も参ってしまった。

 二人とも、それぞれミユキさんとアヤメさんに叱られていたけど、気持ちは分からんでもない。


 最終的に俺とレイにゃんで二人をなだめ、マユカとサっちんは王都再訪を心に誓っていた。

 まあ、その気になれば転移の鏡経由ですぐに連れて来てあげらるんだけど、アヤメさんから甘やかさないでと釘を刺されてしまった。


 そんな彼女達を鏡経由でそれぞれ送り届け、ミっちゃんの実家に置きっぱなしだった魔導力車の事を思い出した。

 そろそろ回収しようとミっちゃんの実家に向かったところで、また一悶着起きてしまったのである。


 突然、『帝達だけずるい、自分達も王都観光がしたい!』と、留守番をしていた他の守護家の人達が都の転移門を使って、ミっちゃんの実家に押し掛けてきたのだ。

 無下に帰れと言える訳もなく、結局彼女達を魔導力車に乗せて王都に帰る羽目になってしまった。


 入れ違いでやってきた守護家の面々に王国側も大慌てだったが、『逆に利用してしまえ』と開き直り、彼女達には王都の観光や王国民達との交流を楽しんでもらったりした。

 どうやら、これにはイヅナ国との関係強化を内外にアピールする思惑もあったみたいであるが。


 そんな中、鍛冶職人の玉鋼タマハガネハヅキさんに武器職人のガンテツさんのお店を紹介し、染物師の玉紫タマユカリメグミさんには、服職人のナナミさんのお店を案内したりもした。

 二人とも『良い出会いだった』と大いに喜んでくれて一安心である。


 妙に懐かれてしまった玉闇タマヤミアカリちゃんと、玉蟲タマムシホノカちゃんの二人だが、俺のそばから離れようとしないので、危うくロリコン疑惑を持たれてしまうところであった。

 というか、『熟女キラーロリコン☆セッキー』って、酷すぎやしませんかね。ロワりんさんよう。

 それはそうと、フィルとミュリシャの機嫌がすこぶる悪くなったのは謎だ。


 意外だったのは、玉酒タマサカフウカさんが冒険者予備校の食堂に興味を持ったみたいで、調理担当のセイランさんと色々な料理談議に花を咲かせていた事だ。

 しかし、途中で調理用のお酒を見つけて飲んでしまい、これまた色々と大変な事になったのだが。


 困ったのが、不動産業を営む玉葵タマアオイユキネさんだ。

 個人的に王族を紹介してくれと無茶を言ってきて、なんとかコネを駆使して謁見の場を設けたら、いきなりサイラントさん達に不動産投資の営業を始めちゃうし。

 流石にあれは俺も肝が冷えたよ。

 ちなみに、王妃様達は不動産投資に興味津々であった。


 一番のくせ者である玉金タマカナキリエさんだが、こちらは予想外に平和に過ごしてくれていた。

 ロワりん達とあっさり馴染んでいたと思ったら、本人曰く『損得無しで付き合える関係は気が楽』だそうだ。

 よく分からんが、満足していてくれたみたいで良かった。


 そんなこんなで、王都観光を堪能した守護家の人達が帰ったのが、つい先日の事である。





  ◆◆◆





「あー、やだやだやだ! 面倒くさいーーーーー!!」


 夕食後、俺は自室で頭を抱えて転げまわる。

 そんな俺をピアリが冷めた目で見ていた。


「そんな事を言ったって、キミが言い出したのだから、責任を持たなくちゃダメだよ」


「ピアリ、正論ぶつけるのはやめて!」


 ルームメイトが呆れ顔で俺をたしなめてくる。

 なんでこんな事になっているのかというと、イヅナ国関係者が帰国して一段落したので、しばらくゆっくりしようと思っていたのよ。


 そしたら、メディア校長から呼び出しを受けた。

 またいつものダメ出しでもされるのかと思ったら、『闘技大会と交流会の企画はどうなったのだ?』と言われてしまったのである。


 ここ最近バタバタしてたので、それどころじゃないってのに!

 真面目にそう答えたら、怒られるのは火を見るよりも明らかだ。

 だからこうして大人しく帰って、企画書の作成をしようという訳だ。


 そんでもって、机に向かったのだが、すぐに面倒になって転げまわっている次第。



「結局キミは何がやりたいの? 国王陛下達に言ったのは、適当な出まかせだったの?」


「……いや、それは絶対ないぞ」


 いくらなんでも、俺はそこまで無責任では無いと思っている。……多分。


 考えてみれば、俺がやりたかったのって、みんなが笑顔になるイベントのはずだ。

 それに、冒険者予備校を外部の人達に紹介する機会を作ろうと思っていた。

 となると、やっぱりここはお約束の『学祭』だよな。


 戦いの技術を磨く生徒達は、分かりやすく闘技大会で実力を見せればいい。

 反面、生産職系の生徒達にも日頃の成果を発表する場を作ってあげたい。

 そうなると、例えばちょっとした即売会とかもいいかもしれないぞ。


 生徒達が作った武具等をお手頃価格で販売したり、薬品等は薬師の資格を持つ講師の許可を得た物のみを販売するとか。

 作物を育てる研究をしている学科では、野菜や果物の販売もお願いしよう。

 被服学科の子達には、ファッションショーの舞台を用意してあげたいな。

 他にも料理の屋台の出店なんかもあると、益々学祭っぽくなっていいよな!


 そうやって考えてみると、意外にアイデアが浮かんでくるものだ。



「なんだか急にやる気が出て来たみたいだね?」


 ピアリがそう言いながら、俺の背後から抱きしめてきた。

 密着してるので、背中に柔らかな感触がする。

 くそう! そ、そんな事で、お、俺が動揺すると思うなよ……!?


「め、珍しいな。いきなりどうしたんだ?」


「ボクも、たまにはアピールしておこうかなって」


「アピールって、親友なんだから気にする事ではないだろうよ」


「それだと結局ただの友達じゃないか。それに、この前のイヅナ国の人達を見て危機感を覚えたんだよ」


「危機感とは随分と大袈裟だなぁ」


「大袈裟じゃないよ。キミって、イヅナ国の人達に随分と気に入られて喜んでたよね。ボク達の事をすっかり忘れてしまったのかと、不安になったんだからね?」


「べ、別に喜んでないぞ! それにみんなの事を忘れる訳がないじゃないか!?」


「キミを一人占めする事なんて無理って理解してるけどさ、やっぱり相手にされなくなるのは悲しいよ」


 ピアリのこんな悲しそうな表情を見たのは、いつ以来だろう。

 流石にここは茶化していい場面ではない。



「……ごめん。これからは気をつける」


「ううん。こちらこそごめんね。ボクもワガママ言い過ぎたかもしれない。でも本当に寂しかったんだよ」


 ピアリがこんな事を言うなんて、相当なのかも。

 確かに、ここ最近イヅナ国の人達に付きっきりだったのは、紛れもない事実だ。

 これは後で、みんなにもフォローしておかないといけないな。


「なんだか、こうして話をしたら安心して眠くなってきちゃったな……」


「だったら、久々に一緒に寝るか?」


「それは魅力的なお誘いだけど……今日は遠慮しておくよ。企画書の作成、頑張ってね」


 ピアリは、俺に手をひらひらと振りながらベッドに潜り込んでしまった。

 そして、相変わらず寝つくのが超早い。


「そろそろ俺も寝るかな……」


 だらだらやっても仕方ないので、部屋の明かりを消してベッドに潜り込むと、あっという間に睡魔が訪れたのであった。





 気づくと周囲が白い空間にいた。これは久々の神様空間か!?

 そういえば、チャラい神様とリクルートスーツの女神様とも随分と会ってないな。

 あのお二方は元気してるだろうか。


 彼らの事を考えている俺の前に現れたのは……実家にいるはずの妹だった。


「お兄ちゃん、元気してる?」


「お、お前……ルインなのか?」


 なんで妹がこんな場所にいるんだ? 疑問しか浮かばない。


「凄いよねー。ノスダイオとかいう特級の歪みを取り除いたどころか、レイデンシア王国とイヅナ国を結びつけるなんて大活躍だねー。これでまた世界の歪みが無くなるよ!」


 目の前の妹は、俺の質問をスルーして喋り出した。

 こいつは妹と似てるだけで赤の他人、はたまた俺に対しての神様の嫌がらせなのだろうか。

 まったく、訳が分からない。


「お前は何者なんだ? ルインなのか? それに、あの神様達はどうしたんだ?」


「お前呼ばわりとはひどいね、お兄ちゃん? そうそう。あの二人は、お兄ちゃんの担当から外れたよ。穏健派と急進派の陣営もお兄ちゃんの活躍を無視できなくなってきたみたいだね。」


「それはどういう事だ!?」


「この世界でお兄ちゃんは大活躍をしたから、そろそろお兄ちゃんの役割も終わりって事だよ」


「お前は何を言ってるんだ!? 俺の役割が終わりって、どういう事だよ!? 質問に答えろよ!!」


 妹の顔をした奴は、俺の問いに答えずにただ微笑んでいるだけだ。

 こいつから聞きたい事は山ほどあるのに、段々と意識が薄れてきてしまった。


 そして、気づいたらいつもの朝だった。

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