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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第一章

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3 どのようなご用向きですか?

 ベルゲルさんの紹介で冒険者予備校に入校するため、村を出て乗り合い馬車を乗り継ぎながら、王都のレトアデールまで一週間かけて到着した。


 俺は昼前で混雑する王都の入場ゲートに並び、まだ若そうな門番の兵士に予備校入校の旨を伝え、村長経由で発行してもらった住民カードを見せた。


「坊主、王都は初めてだろ? でもその割には結構落ち着いてるな。普通は王都の大きさに圧倒されて騒ぐもんだぜ」


「あ、いえ、驚きすぎて声も出なかったんですよ……」


 前世の世界では普段からファンタジー物の作品で王都の町とかを見ていたので、あまり驚きもなかった……とは言えないな。

 でも、周囲を見渡すとエルフやドワーフといった亜人種や獣耳の獣人の姿が目に映る。

 一気にファンタジー感が増してきて、テンションが上がって来たな。

 残念ながら、地元の村では人間以外の人種は見かけなかったのだ。


 無事に王都に入ることができた俺は、門番の兵士に冒険者予備校への道を聞き、適当な店で軽く食事を済ませる。

 一息ついたところで、ベルゲルさんの紹介状を持って予備校へ向かった。


 段々と見えてくる建物は、かなり大きい物だった。

 俺みたいに遠方から入校する生徒のための寮も併設しているみたいで、冒険者養成というよりも、職業訓練校というのが実情だそうだ。


 まずは、門を入ってすぐにある管理事務所の受付けで話せばいいのかな。

 入校希望者と思われる人達の受付け待ちの列に並び、自分の番が回ってくると数ヶ所ある窓口の中で空いた窓口に進んだ。



「どのようなご用向きですか?」


 窓口の職員は二十代前半ぐらいの一見優しそうだけど、どこか影のある感じの綺麗な女性だった。


「はい、入校希望で紹介状もあるのですが……」


 ベルゲルさんの紹介状を取り出し、受付の女性に手渡した。

 紹介状、という単語で周囲の何人かが俺に視線を向けて来た気がする。



「確認致しました。これからご案内致しますので少々お待ち下さい。……ベルゲル先生からの紹介状は簡単にはもらえないと聞きますよ。頑張って下さいね」


 後半、小声でそんな事を言って職員さんが微笑んでくれた。

 先程の事務的な印象から一気に柔らかな印象に変わった。前世でも、職場にこういう人が一人でもいれば癒されたんだろうなぁ。


 管理事務所から綺麗な職員さんに案内される途中、何ごとかと注目を浴びるのは、なんだか気恥ずかしかしい。

 改めて俺を案内してくれる職員さんを見ると、薄い桜色の髪の素敵なお姉さんである。


 ……正直タイプなので、お近付きになりたいけど、どこか他人を拒絶する雰囲気を纏っていた。


 建物の中は春休み中との事だったので、意外に人が少ない。

 少々拍子抜けだったが、ふと廊下の掲示板に目を向けると新入生勧誘のポスターがいくつも貼りだされているのが目に入った。


 無限図書館の攻略メンバー募集、校庭地下ダンジョン内の攻略メンバー募集、アウトドア料理研究メンバー募集、一日中猫を愛でるメンバー募集、畳の目を数えるメンバー募集、遺跡に眠る古代魔法王国のお姫様を探索メンバー募集……。


 なんだか妙なのも混じってるけど、色々自由な校風なのかな。


 そんな事を考えていると、校長室兼応接室と思われる部屋の前に到着し、職員さんがドアをノックする。



「どうぞ」


 中から女性の声で返事が返って来た。

 職員さんは部屋の外で待機するみたいで、俺だけが入室を促された。

 なんだか急に就職の面接を思い出した。胃が痛くなってきたんですけど……。


「し、失礼します……」


 恐る恐る入ると、部屋の中にはベルゲルさんの他に、幾多の修羅場を経験して来たかの様な凄味のある、四十代前半ぐらいのピシッとした印象の女性が椅子に座っていた。

 表情は怖いが、顔の作りは美人である。



「久しぶりだなリョウヤ君。君が入校するのを楽しみにしていたよ」


 ベルゲルさんが軽く片手を上げて声を掛けてくれた。

 ここでの彼の立場は講師なので、先生と呼ぶべきなのかな。


「君がリョウヤ君か。私はこの冒険者予備校校長のメディア・カートライトだ。まずは座ってくれ」


 用意された椅子に座る。

 俺の目の前に校長のメディアさん、左方にベルゲル先生という感じだ。


 ……やっぱり入校に関して面接とか試験があるのかなぁ。何も考えないで準備してこなかったよ。



「さて、君はそこにいるベルゲルの紹介と言うことで、この予備校に入校してもらう事になるのだが、まずは君の能力を測定させてくれ。この水晶板に手を置いてくれればいい」


 メディア校長が水晶板のような物体を差し出してくる。


「こ、こうですか?」


 タブレット端末みたいな水晶板に手を置くと、水晶板が光った。


「ふむ……中々いい魔力量の数値だなって——ん!? 一気に基準値を超えたぞ……こんな歳の少年で見た事があるか? ベルゲル」


「いえ、流石に俺もこんな数値は初めて見ましたよ。水晶板が壊れてるのでは無かったら、とんでもない事になりますよ……」


 メディア校長とベルゲル先生が驚きの表情を隠さない。

 これはもしかして、入校デビューから大活躍を期待していいのかな?


 ……しかし、甘い話には裏があると言うもの。


 魔力量の数値は基準値を軽く超えていたのだが、魔力の出力量が少なかったのだ。

 分かりやすく説明すると、車の燃料は有り余ってるのに、肝心なエンジンが非力過ぎるような事みたいだ。


 なので、効率が悪くて強力な魔法が使えないらしい。

 火をおこしたりする簡単な魔法は使えるみたいだが……。


 メディア校長とベルゲル先生は、ちょっとガッカリしていた。

 期待のルーキーが大した事が無かったので、仕方が無い。


「でも、まあ魔力値は規格外なんだから、そう気を落としてくれるな」


「そうだぞ。これから俺の研究次第で化けるかも知れんぞ。……多分」


 フォローしてくれてるのだろうけど、魔法で活躍する予定の予備校生活が初日で消えたショックで傷心のまま退室し、先程の職員さんに校内を案内される事になった。

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