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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第七章

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253 過去に誰も成功してないって事で、察してくれ

 少し早目に昼食を食べようと思って食堂に行くと、狼耳のラスが一人で食事をしているのが目に入った。

 お互い一人なんて奇遇だなと思って見てみると、参考書のような物やノートを広げている。

 食べながら勉強してるみたいだが、お行儀が悪いな。


 俺は注文した味噌カツ定食をカウンターで受け取り、ラスの向かいに座った。


「食べながら勉強してるのか?」


「リョウヤか。寮の自室にこもってるより、こっちの方が勉強がはかどるんでな」


「だったら、素直に図書館に行きなよ。食堂で勉強って、料理の匂いや周囲の話し声とかで余計に気が散らないか?」


「俺は気にならないぞ。それよりも、図書館は基本的に飲食禁止なんで、そっちの方が俺は困る」


 まあ、価値観は人それぞれって言うしな……。


「それはそうと、今やってるのって、兵士採用試験の問題集か?」


「ああ。城務めの兵士と言っても公務員だから、それなりの試験対策が必要だって講師から言われてさ」


 そう言って、ラスは恥ずかしそうに頭をかいた。

 城でメイドとして働いているアストリーシャと仲良くなりたいという動機はともかく、ちゃんと将来の事を考えてるんだな……。

 俺が感心してると、ラスは何か企んでる表情になって、顔を寄せてきた。


「ところでさ、厨房にいるセイランさんって美人だよな。料理も上手いし、優しそうだし。彼女目当てで食堂に通う奴も増えたそうだぜ」


「……アストリーシャに告白したのに、もう浮気か?」


「バカ、そんなんじゃねえよ! 憧れの人っていうか、そもそもリョウヤにだけは浮気とか言われたくねえ!」


「なんだとう、失礼な!」


 俺達のバカな会話が聞こえてるのか、セイランさんが笑顔でこちらに小さく手を振ってくれている。

 俺も彼女に手を振り返す。


「お、お前! いつの間にセイランさんと親しくなってるんだよぉ!?」


「勘違いするなよ。前にクエストの途中で知り合っただけだよ」


 盗賊団に捕らえられていたのを助けたのは、口外しない決まりになっている。

 あの事件自体が機密扱いだから。

 それでも納得しないラスが文句を言ってくるのを無視してると、レイズとノノミリアがやってきた。



「リョウヤとラスが二人でいるなんて、珍しいな。どうしたんだ?」


「もしかして、禁断の密会とかー? あたしはそういうの気にしないから、好きなだけ密会しちゃって」


 ノノミリアさんよう。ラスと密会とか勘弁してください。


「なんだよ、お前ら。俺は勉強中なんだから邪魔すんなよな」


「え……勉強って、正気なのかよ……」


「ねえ、リョウヤ君。彼どうしちゃったの?」


 レイズ達が驚くのも仕方ない。

 ラスは冒険者を目指す脳筋グループに属してるので、学力テスト以外で勉強なんて普段は無縁の存在のはずだ。


「ラスは城の兵士採用試験を受けるらしいよ」


「だからか。他の連中が、最近ラスの付き合い悪いってボヤいてたぞ」


「へえ~試験対策ね。ちょっと問題集を見せて……うわ! 王国史とかガッツリあるじゃん! これ結構大変じゃない!?」


「お前ら、邪魔するんなら向こうで食ってくれよ。それとも俺に何か用でもあるのか?」


 二人が来て急に騒がしくなったので、ラスがイライラし始めてしまった。

 というか、食堂で勉強してる時点で間違ってると思うのだが。

 文句を言われて、レイズが頭をかく。



「悪い、悪い。今日はちょっと面白い話があってな。予備校内の学生向けの依頼があるじゃないか?」


「それで面白いのをあたし達、見つけちゃったのよねー」


 早い話がクエストの事ですな。

 リリナさんが言っていた件が、もう告示されてるのかな?


「それって、図書館の無限回廊の調査ってやつか?」


「いや違うぞ。俺達が見つけたのは、校庭の地下ダンジョン攻略だ」


 思いっきり違うじゃん。リリナさんに騙されたぜ。


「ほら、前にあたし達三人で地下ダンジョンに行った時、色々あったじゃない? 今度はちゃんと攻略したいなって。だから、どうかなーって誘おうと思ったんだけど」


「それでさ、ラス。お前も行ってみないか? ある程度結果を残せば、冒険者ランクも上がるかもしれないぞ」


 レイズに話を振られると、ラスは解いていた問題集から顔を上げて、少し考え込んでから答えた。


「悪い。今回はパスさせてもらう。それに、城勤めの兵士は冒険者ランクは関係ないと聞くからな」


「そっか……。勉強、頑張れよ」


「邪魔してごめんね」



 それから俺達は、ラスの勉強の邪魔にならないように席を移動してクエストの話を続けた。


「そんで、今回の目的は前人未到の最下層の調査ねえ……」


 前回は地下三層までしか進めてないので、最下層まで何層あるのか想像もつかない。


「今まで沢山の人が挑戦したらしいが、全て失敗に終わったそうだ」


「その最下層には、お宝が眠っているんだって!!」


 ノノミリアのテンションが急に上がってきたな。

 しかし、前人未踏なのに最下層にお宝があるって、なんで分かるんだろうな。

 既にそこから信憑性が怪しい。


「それで、そのお宝ってのは、なんなの? 伝説の武器とか?」


「誰も最下層まで到達してないんだから、分かる訳ないだろ」


 そんな当たり前の事を言われましてもねぇ……。


「あたしが聞いた噂によると、お宝は『ユグドラシルの雫』という霊薬なんだって」


 ……まさかね。

 神様は身近な場所の地下にアイテムがあるとか言ってたな。

 そんでもって、女神様は友達の誘いを断るなと言っていた。

 これは、完璧に神様達が仕組んでいる案件としか思えなくなってきたぞ。


 しかし、待てよ。

 ユグドラシルの雫と言えば、どんな病も呪いも消えてしまうとか前に聞いた気がする。

 その薬があれば、メルさまの師匠のミスティラさんの体調も良くなるのでは……。

 神様達の手の平で踊らされている気もしなくもないが、試してみる価値はあるよな。


「分かった。俺も参加させてもらうよ。それで、今回はケフィン達も参加するのか?」


「いや、先輩達は忙しそうだったので誘えてないんだよな」


「ほら、ケフィン先輩って、お家の事情も色々あるじゃない?」


 どんな事情かは知らないが、彼も貴族である。

 俺達とは違う生活を送っているのだろう。


「そうか。それじゃ仕方ないよな」


 ケフィンはここを卒業した後、王国軍の士官学校に入ったりと準備する事は多そうだし、無理には誘えない。


「それはそうとさ、地下ダンジョンの難易度って、実際どうなんだ? 俺達の戦力でどうにかなるのか?」


 俺が尋ねると、レイズが真顔になる。


「過去に誰も成功してないって事で、察してくれ」


 確かに前人未踏とは言っていたけどさ。

 急に不安になってきたよ。


「ほら、参加する事に意義があるって言うじゃない? リョウヤ君も記念で行ってみようよ。ね?」


 なんか急に目標が下がってきたな。

 参加だけで満足したら、『ユグドラシルの雫』が手に入らないじゃないか。


 今回の探索に、ミっちゃん達に加わってもらえれば、戦力面でなんとかなる気もしなくない。

 それに、強力な魔法を操るシーラや探知魔法が使えるアンこ先輩もいる。

 メルさまの回復薬のバックアップだってあるぞ。

 これは案外なんとかなりそうかも……?


 だけど、もう少し保険が欲しい。


「そのクエストってさ、学生以外の参加は認められてるのか?」


「自己負担なら、冒険者を雇ってもいいそうだ」


「でも、あの冒険者ギルドにいる人達なんて雇っても、お金の無駄よね」


 ノノミリアさんよう。身も蓋も無い事をおっしゃりますな。

 一応、冒険者の心当たりが無いわけでもない。



「取り敢えず、みんなにも声を掛けてみるよ」


「ああ、頼む」


「いい返事を待ってるからね!」


 神様の言う通りに動くのは気に食わないけど、やってみるとしますか。





  ◆◆◆





「──という訳なんだけどさ。それで校庭の地下ダンジョンの攻略を手伝ってもらえないかなって」


 その日の夕方、帰ってきたみんなをメンバールームに集め、レイズ達に聞いた話をした。


「ふーん。地下ダンジョンって、あまり好きじゃないけど、セッキーが行くなら私も参加するよ☆」


「私もロワりんと同意見だ。最近、体がなまり気味なので少し本気を出したい」


「ミっちゃんは妖狐の力を使っちゃいけないんでしょ? まあ、リョウヤ君の誘いならボクは拒否しないよ」


 まずは、ロワりん、ミっちゃん、ピアリの三人が参加表明をしてくれた。


「バックアップ担当のわたくしとしては、参加せざるを得ませんね。それに、ユグドラシルの雫が本当にあるのなら是非見てみたいですの」


「私も探知魔法で、お手伝いしますからね!」


 メルさまとアンこ先輩も参加となると、自動的にシーラも参加だろう。


「ふふん。わらわ──」


「シーラも参加と」


「ひどい! 最後までセリフを言わせるのだ!!」


 そうすると、後はリリナさんか。


「えっと、今回はごめんね。学生向けのクエストって、基本的に予備校の職員や、それに順ずる立場の者は参加できない決まりがあって……」


「いいんですよ。リリナさんは無理しないでください」


「リリナはどうせ足手まといになるんだから、ここで大人しくしてなよ☆」


「なんですって! ロワリンダのくせに!!」


「くせにって、なんだよ!!」


 言い争いを始めてしまったリリナさんとロワりんは置いておいて、我関せずの鏡子さんとエリカにも声を掛ける。


「え? 私達もですか?」


「でもアタシ達って、鏡から遠く離れられないよ?」


「そこはアイテム倉庫の管理人として、役立ってもらいたいんだ。ダンジョンの深さも分からないし、食料等の荷物を大量に持って行くのも大変だからね」


「そのような事でしたら、お任せください」


「アタシも頑張るよー!」


 ある程度の大きさの鏡を持って行けば、途中で必要になったアイテムを出してもらえるし、緊急事態の時は外部に助けを呼んでもらえるだろう。



「そして、後は本職の冒険者を雇いたい」


 俺の言葉にみんなが首をかしげている。

 まさに『何を言ってるんだこいつ』状態だ。


「冒険者って、誰を雇うんだよ。自分で言うのもなんだけど、この街の冒険者ギルドにいる冒険者で、私より強い奴はいないと思うぞ」


「おやおや、ミっちゃんの最強宣言が出ましたー☆」


 リリナさんと言い争っていたはずのロワりんが、すかさず茶化す。


「確かにミサキさんぐらいの強さなら、その辺の冒険者では相手にならないわよね」


「リリナさんに言われると、なんだか照れてしまうな……」


 ミっちゃんは褒められるのに弱そうだな。

 よし、今度褒め倒してみるか。



「待て! ミサキより、わらわの方が強いからな! 本当だぞ!!」


「うんそうだねー」


「多分、大方、恐らくそうだと思いますの」


 ピアリとメルさまが大人げないシーラに対して、やる気のない相づちを打つ。

 シーラが顔を真っ赤にして悔しさをにじませているが、話がややこしくなるから大人しくしてくれ。


「はいはい。シーぽんは強いですよね」


「アンまで、わらわを馬鹿にするのか!?」


「ええ!? 本当の事を言ったのに、怒られましたよう」


 ほらそこ、話が進まないから騒がないでくれ。

 まあ、それはさておいて。



「保険の意味も兼ねて、テルアイラさん達に協力をお願いしたいと思う」


 今度こそ俺の言葉で、みんなが唖然となった。

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