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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第六章

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240 番外編 ホワイトデー的な何か・後編

※旧版でホワイトデー時期に書いた季節ネタの加筆修正版です。

時系列や多少の設定の違い等は気にしないでくださいませ。

 メディア校長の私邸を訪ねると、丁度ベルゲル先生とアーヴィルさんが、それぞれルシェリーザさんと校長にホワイトデーのお返しをしていたみたいだ。

 俺も便乗して、二人にクッキーの包みを渡した。


「リョウヤ、お前がこれを私達に……!?」


 校長が面白いぐらいに驚いている。

 そこまでのサプライズじゃないでしょうよ。


「私にもいただけるのですか? ありがとうございます」


 ルシェリーザさんは普通に喜んでくれた。

 こんな事言ったら怒られそうだけど、先生にはもったいないぐらいの女性だよな。



「おい、そこの二人。リョウヤを見習え。いくら高級菓子でも、手作りに勝る物は無いぞ」


「ベルゲルさんも、普段からこんな風に気を使ってくれると嬉しいのですが……」


 女性二人からジト目を向けられたアーヴィルさんとベルゲル先生が、ばつが悪そうな顔をしている。



「あはは、面目ないね。忙しいのを言い訳にしていたツケが回ってみたいだよ」


「くそう、リョウヤの誘いに素直に乗っていれば良かった……」


 アーヴィルさんはともかく、先生は面倒だの一言で手作りクッキーの講習会に不参加だったからなぁ。

 まあ、次は頑張ってください。

 それはそうと、やっぱり妙齢の女性陣にも手作りは好評みたいで良かった。


 この場に長居する訳にはいかないので、さっさと失礼する。

 お次はテルノに渡そうと思って被服学科を訪ねると、今日はナナミさんの店のシフトらしい。

 教えてくれた子達にも、クッキーを手渡して外に向かう。



 冒険者予備校を出るなり、突然誰かに目隠しをされ、口もふさがれて路地裏に引きずりこまれてしまった。

 つい先日にも、こんな事がもあった気がするんだけど。

 そんな事を考えていると、目隠しを外される。

 目の前にはユーがニコニコしていた。


「突然で申し訳ありません。リョウヤさんがお返しをくれるとおっしゃられたので、居ても立ってもいられなく受け取りに来ちゃいました」


「それなら普通に取りに来てよ……」


 なんで、拉致同然で路地裏に引きずり込まれなきゃならんのだ。



「おい、リョウヤ! せっかく姫様が直々に出向いてくれたのだぞ! 感謝しろよ」


 相変わらず、エレノアは面倒くさい奴だなぁ。


「どうでもいいですけど、毎回巻き込まれる私の事も考えてくださいっス」


 アストリーシャが疲れた顔で溜息をこぼしている。

 こいつも全然ユーの事をうやまってないよな。


「はい、これお返し」


 呆れつつも、ユーにクッキーの入った包みを手渡す。


「わあ! ありがとうございます!!」


 包みを受け取るなり、ユーの顔がほころんだ。

 こうして見ると、普通の年相応の女の子なんだけどな……。


「姫様。毒物が混入していないか、一度鑑定させていただきます」


「エレノア! リョウヤさんに失礼ですよ!!」


「いや、構わないよ。俺も知り合いにもらったチョコで腹を壊したし──」


 言ってからマズいと思った。

 ユーの表情が急変したからだ。


「リョウヤさん、どなたからの贈り物でお腹を下したのですか? 私はその相手を絶対に許しません! 地の果てまで追い込んで差し上げます!!」


 ユーの顔が怖い、怖いよ!

 なんかちょっと病んでないか?

 その鬼気迫る表情に、エレノアもアストリーシャも震え上がってしまっている。


「い、いや、多分たまたまだよ。きっと使った材料との相性が悪かったんだよ。すぐに回復したし。それに悪意があるのなら、もっと強い毒でも入れていたに違いないから大丈夫だって……」


 なんとかユーをなだめたが、こんなんじゃ先が思いやられるぞ。

 サイラントさんは、ユーのこんな一面を知っているのだろうか……。



「はい。二人にもお返し」


 気を取り直して、エレノアとアストリーシャにも包みを渡す。


「え? 私にもくれるのか? 義理だったのに、なんか悪いな……」


「リョウヤ君、ありがとうっス!!」


「二人にも色々世話になるだろうからね」


「その、なんだ。有り難くいただいておくぞ」


「流石、モテる男は違うっスね」


 二人も喜んでくれたみたいだ。

 笑顔の三人と別れて街へ向かう。


 そういえば、妹と母親にも送ってやらないといけないな。

 それは鏡子さんにお願いするとして、アンこ先輩の母親のファルさんにもお返ししなきゃ。

 メルさまの師匠のミスティラさんにも、渡した方がいいのだろうか。

 まあ、そっちはメルさまにお願いしておくか。


 道中そんな事を考えながら、ナナミさんの店を訪ねる。

 フィルの登校用の服を作ってくれた彼女に感謝を伝え、クッキーを手渡すと逆に感謝されてしまった。


「へえ、キミって男の子の割に気が利くね! 遠慮なく食べさせてもらうね」


 そのナナミさんの背後から、テルノがなんとも言えない視線を向けてくる。


「えっと、セキこの姿じゃなくて悪いけど……これ」


「わあ! ありがとうございます! こういうのは初めてなので嬉しいです!」


 男の姿でも喜んでくれてるのだから、セキことして渡していたら、どんな反応されてたのだろう。

 想像すると、ちょっと怖い。


 アイシャさんや、他の店員の子達にも包みを手渡した。


「女の子からはよくもらうのだけど、男子からは初めてもらったよ。ありがとね」


 アイシャさんは女子にモテるタイプだからなー。

 他の店員の子達も喜んでくれてるみたいだ。

 やっぱり、こういうちょっとした事でも、人間関係の潤滑油として大事なのである。


 さて、残る場所はあそこだ。

 気を引き締めて例の店を目指した。





「よく来たな、少年!!」


 店の前で、何故か仁王立ちしているテルアイラさんが俺を出迎えてくれた。


「さあ、私に愛情の詰まった贈り物を渡してくれ!」


 思わず面食らっていると、店から出てきたレンファが、お盆でテルアイラさんの頭を叩いた。


「何を偉そうな事を言ってるんですか!!」


 結構いい音がしてるけど、相変わらず容赦無いなぁ。


「いきなり何をするんだ!? そんなバンバン叩いたら、私の頭が馬鹿になるだろう!!」


 テルアイラさんが喚いていると、メグさんが店から出てきた。


「今更それを言うの? テルアイラは最初からバカだよね」


 意外とメグさんも辛辣である。

 続いて、ユズリさんと店員のミラも顔を出した。


「毎日叩いてたら、逆に利口になるかもしれませんよ?」


「むしろ、再起不能になるまで叩かれればいいのに」


 ここまで言われると、テルアイラさんが不憫ふびんになってくるレベルだな。

 それはそうと、ちょうど良かった。

 みんなにもお返しを渡そうと思ってたので、手間が省けた。


「ふふん、お前らはお返しをもらえないからって、私をねたんでるのだな! もらえない奴らはみじめだなぁ!!」


 テルアイラさんがふんぞり返っている横で、レンファ達にお返しを渡す。


「はい、みんなにもこれ」


「え!? 私もいただいていいのですか?」


 普段は看板娘として、大人顔負けの働きぶりのレンファが、年相応の表情で喜んでいる。


「わー、ありがとー! 嬉しいなー!」


 メグさんも喜んでくれて何よりだ。


「肩凝り治療器具の件もですが、ありがとうございます」


 あれからユズリさんは、ベルゲル先生が開発した治療器具をすっかり気に入って、今では愛用者との事である。


「あ、ありがとうございます……」


 ミラはこういう事に慣れていないのか、どうしたらいいのか分からないって顔をしてる。

 だけど、不快に感じてる訳ではなさそうで良かった。



「なあ、少年よ。私の分は?」


 俺が一仕事終えて満足していると、テルアイラさんが不安そうに尋ねてきた。

 そんな彼女の事を見ていると、少しだけイタズラ心が湧いてきた。


「あ、ごめんなさい。今のでちょうど終わっちゃったんですよ」


「え……ウソだよな? なぁ、ウソだって言ってくれよ!!」


 テルアイラさんがこの世の終わりみたいな顔をして、俺の肩を掴んで揺さぶってくる。


「普段の行いからしたら、仕方ないですよね」


「たまには、いい薬なんじゃない?」


「そうですよ。いい大人なんですから、素直に諦めてください」


「いい気味です」


 誰も同情しないのが、逆に凄いというか。



「ねえ、本当に私の分は無いの……?」


 泣きそうな顔で見つめてくる彼女から顔を逸らす。


「うっ……ひどい! ひどいよ!! うわーーーーん!!」


 ええー!?

 いきなりマジ泣きかよ!!

 みんなドン引きしてるし。

 ちょっと、やりすぎたかな……。


「ウソですよ、ウソですってば。ちゃんとテルアイラさんの分もありますから!!」


 途端に、ぱあっと彼女の表情が明るくなった。


「わあ! ありがとう少年!! お姉さん嬉しくてハグしちゃうぞ!!」


 そう言いながら、俺の事を抱きしめて頬ずりしてくる。

 黙ってれば美人なお姉さんだし、こうされるのも悪くはないかな。


「ああ、そうそう。この前に少年にあげたチョコレートだけどな、愛情の隠し味と間違えて下剤効果のある材料を入れちまったんだ。ゴメンな!!」


 前言撤回だ! こんちくしょう!

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