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【本編完結】神様のうっかりで転生時のチートスキルと装備をもらい損ねたけど、魔力だけは無駄にあるので無理せずにやっていきたいです【修正版】  作者: きちのん
第二章

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18 それは流石に過保護過ぎですよ

〜ピアリ視点〜


 朝日が窓から差し込むと自然に目が覚める。

 いつもと違う、見慣れない広い部屋だ。

 ここはどこだっけ?


 ……そうか、もうあの狭い物置き部屋ではないのだっけ。


 ベッドから起き上がると、体のあちこちが痛む。

 無限図書館での件で、少し無理をしたせいだろうか。

 でもそうでもしなかったら、彼を救えなかったから仕方がない。


 ボクはまだはっきりとしない意識を切り替えるため、部屋に備え付けられている洗面台で顔を洗って手短に朝の身支度を済ました。


 それにしても、広い部屋は色々余裕があっていいな。

 今度新しい家具でも買って、部屋に置かせてもらおうかな。

 そんな事を考えながら、まだ夢の中の彼を起こす事にした。


「ほら起きなよ、リョウヤ君。今日は入校式でしょ。式に遅れたら洒落にならないよ?」


 こうやって、誰かを起こすのも新鮮で楽しいな。

 しかし、彼は一向に起きる気配がない。


 揺すっても全然起きない。普段からこんなに寝起きが悪かったっけ?。

 顔をペチペチ叩いたり、鼻を摘まんだりしてみたけど、気持ちよさそうに寝息を立てている。

 ちょっとムキになって全身をくすぐってやろうとしたところで、リリナさんが部屋にやって来た。


「ちょっとピアリ君! リョウ君を起こすのは私の役目だから、仕事を取らないで!」


「リリナさん、それは流石に過保護過ぎですよ。リョウヤ君を駄目人間にしたいんですか?」


「私はお姉ちゃんだから、過保護でいいの!」


 この人も随分と変わったなぁ。

 これもいい変化と言うべきなのかな?


 でもそれは、ボクも同じかも知れない。

 彼に出会ってから、少しは変われたのだと思う。


「じゃあ、ボクは朝ご飯を食べに行くので、リョウヤ君の事は任せますね」


「はい。任されました」


 リリナさんに後をお願いして、ボクは一人で朝食に向かった。


 ……二人きりにして大丈夫かな?

 なんて一瞬思ったけど、流石に間違いは起こさないはずだよね。


 そう思いたい。ちょっと不安になってきたけど、二人の良識に委ねよう。



  ◆◆◆



 食堂に着くと、以前から仲良くしてくれてる友人達がボクを見付けて手を振ってくれる。

 そのままカウンターで朝食を受け取り、彼女達の席に向かった。

 春休み明けの再会なので、みんなとも会うのは久しぶりなので自然と足取りも軽くなる。


「おはようさん。ピアっち」


 控え目に挨拶してくれたのは、キツネ耳の獣人で予備校指定の妙にダサいジャージを何故か愛用しているミサキさん。通称ミっちゃんだ。

 いつも眼鏡をしているけど、素顔はかなりの美人だ。

 そんな彼女は、極東の国の武器の刀を使いこなす手練れでもある。

 ちなみに男の子同士が仲良くする物語が大好きらしいが、ボクにはよく分からない世界だ。



「ピアっち、おっはよう☆」


 朝からテンション高いのはエルフのロワリンダさん。通称ロワりん。

 彼女は白や黒にピンクが基調のフリルが可愛らしい服を愛用していて、ツインテールの髪型が特徴的。

 スカートも短めで、なんでも『絶対領域は正義』といってはばからない。

 以前、年齢を聞いたらかなり怒っていたので、年齢に関する話はNGっぽい。

 そんな可愛らしい彼女は、二刀流の使い手だ。

 風の精霊の力を借り、舞いながら魔獣を切り裂く姿は惚れ惚れしてしまう。



「おはようございます。ピアっちさん」


 上品なのは、貴族の令嬢のメルエルザさん。通称メルさま。

 今日もゆるく巻いた髪と落ち着いたワンピースがお似合いです。

 彼女は辺境貴族の四女との事で、親が進める結婚が嫌だからと冒険者を目指す変わり者。

 外見からは想像つかない身のこなしで、アサシンナイフを愛用する戦闘スタイルだ。

 その上、薬物にも精通していて中々掴みどころの無い女の子である。


 ちなみにボクの武器は、魔力の矢を使う魔力弓だ。

 彼女達が前衛スタイルなので、後方でサポートするのがパーティー時のボクの役割となる。


 そんな同期の三人には、随分と助けられた。

 寮で同室の男子に襲われて逃げて来たボクを匿ってくれたり、個室を使える様にメディア校長に直談判までしてくれたのだ。


 彼女達は決して認めないけど、ボクを襲った男子を退校に追い込んだのも彼女達だ。

 どんなに感謝してもしきれないよ。



「おはよう。久々にみんなと会えるのが楽しみだったんだよ。三人とも休みの間はどうしていたの?」


 なんでもない会話が楽しくて、朝からついついお喋りが盛り上がってしまった。





「なあ、ピアっちって少し変わったか?」


 ミっちゃんが不思議そうにボクの顔を見ている。


「そうだね。なんだか、前より雰囲気が明るくなった感じがする!」


 ロワりんがそれに同意して頷く。


「わたくしの情報ですと、気の置けない殿方と同室になったとか……」


 メルさま、そんな情報を何処から仕入れてるのさ。



「お、男と同室だとぅ!?」


 ミっちゃん、いきなり大声出さないでよ。周囲の迷惑になるよ。


「ねえ、ピアっち。大丈夫なの?」


「そうですの。以前、大変な目に遭った事がありましたよね?」


 ロワりんとメルさまが心配してくれて嬉しい。

 彼女達が友達で良かったと心から思うよ。


「みんな心配しないで。ボクは大丈夫。むしろ、凄く気が合う男の子なんだ」


 こんな事を言ったばかりに、三人が獲物を見つけた顔つきになる。


「ほほう。ピアっちがそこまで気に入るとはな……」


 ミっちゃんが中指で眼鏡をクイっと上げる仕草をする。

 なんだか悪役みたいに見えるのは、気のせいかな。


「変な事されてない? むしろピアっちが変な事をしてない?」


 どうしてボクが変な事をしてると思うのかな、ロワりん。

 ……初対面でイタズラしたけどさ。


「その殿方とは、トイレも一緒に行く仲なのですか?」


 メルさま、貴族のご令嬢がそういうデリケートな事を真顔で聞いちゃうのは大丈夫なの?


 三人が物凄く食い気味にリョウヤ君の事を聞いてきた。

 グイグイ迫る彼女達に押され気味になっていると、丁度リョウヤ君が食堂に来たのが見えたので手を振ってみる。



「……なるほど。あれがピアっちのルームメイトか」


「結構かわいい男の子だね☆」


「これは、わたくし達で彼をいじり……見極めないといけませんの」


 途端に彼女達が盛り上がり始めた。

 面白がっている様に見えても、一応はボクの事を心配してくれているんだよね?



「なあ、つまらない男だったらどうする?」


「もちろん、ボコボコだね☆」


「わたくしの薬の実験台になってほしいですの」


 微妙に物騒な発言が聞こえるけど、きっと彼女達もリョウヤ君の事を気に入ってくれるはずだと思うよ。


 ……多分。

ピアリ「三人とも休みの間はどうしていたの? ボクは新入生の子に色々と校内の事を教えたりしてたよ」


ロワりん「私は里に帰ったよ。久々にお父さんとお母さんが旅から戻って来たんだ☆」


メルさま「わたくしも実家に帰りました。まったく、あのお父様とお母様ときたら、変な壺なんて買わされて……」


ミっちゃん「私は寮の部屋にずっと引きこもっていたぞ」


三人「……え!?」

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