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9.

 (※ローマン視点)


 僕は、マリーと触れ合い、その幸せな時間を楽しんでいた。


 あぁ、僕はなんて運がいいんだ……。

 

 クリスタに、初めてマリーとの浮気がバレた時は、彼女に婚約破棄を言い渡された。

 あの時は、僕の人生が終わりかと思った。

 しかし、誠心誠意謝った結果、なんと彼女に許してもらえたのだ。


 そして、二度目の浮気がバレた時も、僕は自身が破滅することを悟った。

 しかし、クリスタを半ば脅す形で、何とか両親への報告を阻止することができた。

 そのおかげで、こうして僕は、マリーと共に過ごす時間を楽しむことができている。


 人生が終わるようなピンチが訪れても、何とかなっているのだから、僕ほどの運の持ち主も、なかなかいないだろう。

 僕は、自身の強運が手繰り寄せたこの幸せを、思う存分満喫するつもりだ。


「あぁ、やっぱり、あなたといる時間が、一番幸せだわ……」


 僕がベッドに横になっていると、マリーが立ち上がって、何かを棚から取り出した。

 それは、ポラロイドカメラだった。

 彼女はそれを僕の方へ向けると、シャッターを押した。

 服を着ていないときに写真を撮られたのは、赤ん坊の時以来だ。

 次に彼女はカメラを内側に向け、自分も写るように僕と並んでから、シャッターを押した。


「綺麗に撮れているでしょう?」


 彼女は笑いながら、その写真を僕に見せてくれた。

 そこには、ベッドで裸で並んでいる僕とマリーが写っている。


「よく撮れているけど、裸だから、少し恥ずかしいな」


「大丈夫よ、誰かに見せるわけでもないんだから。いい思い出になるでしょう? 私、自分で撮った写真を見返すのが好きなの」


 彼女はそう言いながら、撮った写真を金庫の中に入れた。

 ダイヤル式の鍵まで付いている、重そうな金庫だ。

 そんなに厳重に保管するなんて、よほど僕との思い出の写真が、大切なんだな。


 裸の写真を撮られた時は驚いたけれど、彼女も久しぶりに僕と触れ合えて、舞い上がっているのだろう。

 なかなか、可愛いところがあるじゃないか。

 そんな彼女を、愛おしく思えた。


 あぁ、彼女と偶然再会できて、本当によかった。

 もし彼女にまた出会わなければ、僕はずっとクリスタと一緒にいただろう。

 当時は何も思わなかったけれど、マリーと一緒にいる時間に比べると、クリスタと一緒にいる時間は、価値のないつまらないものだ。


 本当に、マリーと再会できてよかった。

 僕は今、本当に幸せだ。

 こんなに運がいい人間、なかなかいないだろう。

 普段は信じていない神にも、思わず感謝したいほどだ。


 しかしこのあと、僕の運がすでに尽きていることを、身をもって気付かされるのだった……。

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